![[お茶の話と、私たち]文化と夏のお茶の楽しみ方](/files/cache/23678c8ae62ca7e8270895a1cbc5f67d_f783.jpg)
食の偏愛コラム
[お茶の話と、私たち]文化と夏のお茶の楽しみ方
食や料理への「偏愛」を語ってもらうHolicClip。日本茶インストラクターで、株式会社 茶淹の代表取締役でもある伊藤尚哉さんによる新連載[お茶の話と、私たち]です。
世界の喫茶文化
ようやく梅雨も明け、暑い夏がやってきます。暑さの厳しい季節は、冷たいお茶で喉の渇きを潤したくなりますね。
日本では、夏に冷たいお茶を飲むのが一般的ですが、日本よりさらに暑さが厳しいお茶大国のモロッコでは、暑さ対策の飲み物として、生のミントとたっぷりの砂糖を煮出して作る清涼感のある「ミントティー」が人気です。またインドでは、代謝を上げ免疫力を高める効果をもつカルダモンやクローブが入った熱々の「チャイ」を1日に何杯も飲むのだそうです。
お茶の楽しみ方や喫茶文化は、その国々によって大きく異なります。この連載では、ただ美味しいお茶の淹れ方をご紹介するだけでなく、お茶を通じて得られる文化的な学びや、日々の暮らしの中で実践できるお茶の楽しみ方をご提案していきます。
今回は、夏のシーンに合わせた日本茶の楽しみ方をいくつかご紹介します!
淹れ方によって変化する日本茶の楽しみ方
日本茶は、淹れる温度によって同じ茶葉とは思えないほど味や香りが変化します。その違いを楽しむことができるのが、日本茶の大きな特徴でもあります。
昔から暑さの厳しい季節には、冷水で淹れる水出し煎茶が多くの家庭で親しまれてきました。低温で淹れると、甘み・旨味成分の「アミノ酸」は抽出されますが、「カテキン」や「カフェイン」といった苦味・渋み成分の抽出が抑えられるため、渋みが少なく、すっきりとした甘みが楽しめるお茶になります。水出し煎茶は、小さじ山盛り3杯(8〜10g)の茶葉をボトルに入れて、冷水500mlを注いで約2時間待つだけで簡単に作れるのでぜひお試しください。
多様化する日本茶の楽しみ方
お米やイチゴのように、お茶にも様々な”品種”があります。スーパーなどで一般に売られているお茶のほとんどが、いくつかの茶園の茶葉や品種、それぞれの良さを集めた「ブレンド」のお茶です。しかし、近年「シングルオリジン」という単一品種・単一農園のお茶を販売するお店やブランドも増えてきて、日本茶もコーヒーやワインのように、産地や品種の個性を楽しむことができる文化的な嗜好品になりつつあると感じています!
日本で収穫されるお茶の約75%が「やぶきた」という品種で、そのほどんどが「やぶきた主体のブレンド」のため、産地や製法によっての味や香りの違いはあっても、品種ごとの個性を体験している方は少ないと思います。
例えば「香駿(こうしゅん)」という品種は、蘭のような華やかな香りが特徴的な品種で、まるでハーブティーを飲んでいるかのような感覚になります。香駿は、水出しにしてもその個性がぐっと引き出されるので、暑い夏に涼を楽しむお茶として大変おすすめです。
また「やまかい」という品種は、低温で淹れるとメロンのような濃厚な旨味が楽しめるかなり個性的なお茶です。茶葉と一緒にカットしたメロンをそのままボトルに入れ、冷水で2時間抽出してみると、茶葉の旨味と夏が旬のメロンの甘みが調和し、ちょっと贅沢な夏にぴったりのドリンクに仕上がります。
自宅でも手軽にできる
日本茶で涼を楽しむアレンジレシピ
これまでお茶の品種の個性や、フルーツを使った楽しみ方をご紹介してきましたが、まだまだシングルオリジンのお茶が楽しめる場所は少なく、なかなか気軽にチャレンジできない、という方も多いだろうと思います。そこで、自宅でも手軽にできる夏におすすめの日本茶アレンジレシピをご紹介します!
【1分でできる!「煎茶トニック」の作り方】
用意するのは、”水出し専用”の煎茶ティーバッグとトニックウォーターの2つだけ。
- 水出しの煎茶ティーバッグをボトルに入れて、水100mlを注ぐ。
- 蓋を閉めて、30秒ほどボトルを振る。(水出し用の煎茶は茶葉が粉のように細かい形状なので、みるみるうちに成分が抽出されます)
- 鮮やかな緑色になったら氷の入ったグラスに注ぎ、さらに上からトニックウォーター100mlを注いで完成!(お好みでレモンやミントをあしらうと見た目も爽やかに仕上がります)
また、ここにジン15〜20mlを加えると「煎茶ジントニック」になります。お酒が好きな方は、ぜひお試しください!(とっても爽やかで飲みやすいので飲み過ぎに注意です)
急須で淹れるお茶もとても美味しいのですが、それだけが日本茶の味わい方ではないなと感じています。いろいろな楽しみ方を見つけるたびに、まだまだ未知の可能性を秘めている日本茶の奥深さに驚かされます。
今後も文化的な学びを交えつつ、日々の暮らしに取り入れられる日本茶の魅力をお伝えしていきます。次回以降もぜひお楽しみに!
著者情報

- 伊藤尚哉
- 株式会社 茶淹 代表取締役
1991年愛知県出身。24歳のときに日本茶のおいしさに魅了され、2016年から名古屋の日本茶専門店・茶問屋に勤務。
2018年日本茶インストラクターの資格を取得(認定番号19-4318)愛知県支部役員
2019年日本茶ブランド「美濃加茂茶舗」の立ち上げに参画、店長に就任。
2020年美濃加茂茶舗を運営する「株式会社 茶淹(ちゃえん)」を設立。