
生鮮
企業が意識すべきSDGsとは。食品ロスへの取り組み
企業や生活者の積極的意識が不可欠とされるSDGs(エスディージーズ)。今回は達成目標のひとつ「つくる責任 つかう責任」につながり、食品業界にとって避けては通れない食品ロス(フードロス)にフォーカスし、世界の動向や企業の取り組みをご紹介します。
持続可能な社会を実現する
SDGs(エスディージーズ)とは
SDGs(エスディージーズ)とは、2015年に国連サミットで定められた「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。持続可能なより良い世界へ向けた、17個のゴールが設けられており、貧困・飢餓ゼロ・ジェンダー平等の実現・気候変動対策など、解決すべきさまざまな社会課題が掲げられ、2030年までにSDGsを達成できるよう、世界各国が取り組んでいます。
その中でも、ゴール12の「つくる責任 つかう責任」は、大量生産・大量消費から脱却し、人や環境にやさしい持続可能な消費生産パターンを実現するために設けられた枠組みです。ゴール12を形成する具体的な11の項目には、資源の効率的な利用、廃棄物の発生防止・削減などが挙げられ、食品産業にも関わりの深い食品ロスも取り上げられています。
食品ロスの現状と食品業界のつながり
SDGsの項目の中では、一人当たりの食料廃棄を半減させることが掲げられており、世界の食品業界からも注目が集まっています。2011年、FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した「世界の食品ロスと食料廃棄」によると、現在、世界の年間食料生産量は約40億トンのうち、廃棄量は約13億トンにものぼり、食品ロスが発生する地域は先進国に集中。17個のゴール目標の平均達成度が高いヨーロッパや北米でも、ゴール12についてはあまり進展がみられず、欧米においては施策自体が進んでいないという指摘もあり、食品ロス問題が大きく影響していると言われています。
日本でもゴール12は大きな課題と位置付けられており、食品ロス削減も重要視されています。現在の日本の食料廃棄量は年間2,842万トンあり、その中でも食べられるのに廃棄されている食品ロスは年間646万トンもあるのが現状です。その内訳は、事業に由来するものが357万トン、家庭由来のものが289万トン。これを削減するには企業と生活者両者の協力が必要で、事業由来の食品ロスへの取り組みが今後の食品業界の大きな使命ともいえます。
参考:サステナブル・ブランド ジャパン
https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1193050_1501.html
参考:平成30年 消費者庁 食品ロス削減関係参考資料、平成28年度推計(農林水産省・環境省)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/efforts/pdf/efforts_190711_0001.pdf
SDGsにおける日本政府の取り組みは?
日本政府の食品ロス削減に向けた動きとして、2019年に公布された「食品ロスの削減の推進に関する法律」略して「 食品ロス削減推進法」が挙げられます。これには、食品ロス削減の定義や政府の基本方針などが定められており、食品ロスの削減について、国や地方公共団体には取り組む責務があり、事業者には積極的に取り組むように記されています。
また、SDGs達成に向け政府が発足した「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部委員会」では「ジャパンSDGsアワード」を創設。SDGs達成に取り組む企業や団体を毎年公募し、表彰しています。「ジャパンSDGsアワード」のサイトでは、食に関わる多くの事例が紹介されており、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞に選ばれたのは、2018年、2019年の2年連続で食品ロスに取り組んでいる企業・団体でした。
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/award/index.html
企業がSDGsに取り組むなら、
自社の関わりが深い課題から
豊かな自然資源と健康な人的資源、どちらが欠けても成立しない食品業界は、SDGs達成への取り組みが不可欠となっている業界ともいえます。すでにSDGsの取り組みをはじめた多くの企業は、SDGsを自社と照らし合わせることからスタート。食品ロスだけでなく、ゴール3「全ての人に健康と福祉を」ゴール8「働きがいも経済成長も」など、自社との関わりが深い課題とあわせて取り組んでいます。
また、企業の取り組みの一環として、未利用食品を福祉施設などへ無料で提供するフードバンクを利用するのも一つの選択肢。最近ではコロナウイルスの影響もあり、利用する事業者も増えているようです。
フードテック×食品ロスに期待の眼差し
食べられるのに廃棄される食品ロスは、資源の効率化の余地や新たなビジネスチャンスでもあります。近年では、食に最新のテクノロジーを駆使させた「フードテック」も食品ロスへの取り組みに活用され、注目を集めています。食品自体の消費期限を伸ばすものから、食品ロスを防ぎたい飲食店と生活者をつなぐものまで、多様な角度から課題解決の一手が生み出されているのです。
SDGsに注目し、食品ロスに取り組んでいる企業事例をいくつかご紹介します。
食品ロスへの取り組み事例
消費者庁
参照:https://cookpad.com/kitchen/10421939
消費者庁はクックパッドと連携し、独自のアカウントで野菜の皮や残ったおかずを食べきるためのレシピを公開。『「賞味期限」の愛称・通称コンテスト』や『私の食品ロス削減スローガン&フォトコンテスト』をおこなうなど、食品ロス削減を啓発しています。発信方法を工夫することで、食品ロスの問題を生活者にとってより身近に自分ごととして捉えてもらう取り組みです。
TABETE
参照:https://www.cocooking.co.jp/food-sharing/
株式会社コークッキングが運営する「TABETE」は、食品ロスが発生しそうな飲食店や中食店と、それを食べたいユーザーをマッチングするフードシェアリングサービスです。アプリで料理を注文する感覚で、気軽に社会貢献ができるユーザー体験は、生活者がSDGsや食品ロスに関心を持つきっかけにもなっています。食品ロス削減への貢献を大きく期待され、全国各地の市区町村と協定を結んでいます。
山崎製パン株式会社
参照:https://www.yamazakipan.co.jp/
大手食品メーカーの山崎製パン株式会社では、商品をつくる上で生まれた未利用食料を別の商品に活かしたり、飼料化に取り組むなどして、食品ロスを最小限に抑えています。加えて、地震で落果した梨を買い取り商品化するなどの社会貢献にも積極的で、フードバンクへの商品寄贈もおこなっています。
最後に
SDGsに目を向ければ、今まで見えていなかった課題が見えてきます。課題解決に向けた活動は社会貢献のみならず、新たな顧客やサービスを生み、ひいては食品業界全体の発展にもつながるはずです。
また、現在全国にて上映中の映画「もったいないキッチン」(https://www.mottainai-kitchen.net/)は、食品ロスを身近に解りやすく感じられる映画としておすすめです。実際にどこでどれほどの食品ロスが生まれているのかを知り、食品ロス問題に取り組んでいる事例を紹介しながら、解決の糸口やヒントを探るロードムービーです。食品ロス問題について、親子やご家族で一緒に考えるきっかけになるかもしれません。
writing support:Akira Fukui
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