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注目のフードシェアリングとは?食品ロス削減への期待
世界中で食品ロス(フードロス)が問題となる中、食品ロスとなりそうな商品と生活者をマッチングする「フードシェアリングサービス」が広がりをみせています。社会貢献のみならず、事業者が取り組むメリットはどんなところにあるのでしょうか?
SDGs達成に不可欠な
食品ロス(フードロス)問題とは
世界中で注目を集めるSDGs。その中には「世界の食品廃棄を半減させる」という目標が盛り込まれています。特に食べられるのに捨てられてしまう食品ロスは、先進国に集中しており、日本でも大きな問題となっています。
具体的な数字を挙げると、日本の食品ロスは年間646万トンあり、そのうち事業に由来するものが357万トン、家庭由来のものが289万トンにものぼります。これを受け、2019年には「食品ロスの削減の推進に関する法律」略して「 食品ロス削減推進法」が定められ、さまざまなステークホルダーに向けて、食品ロス削減の協力が求められています。
食品ロス問題に対する生活者の意識は
平成30年に実施した消費者庁アンケートによると、日本の生活者の食品ロスの認知度は70%以上。さらに、「食品ロスを減らすための今後の取り組みについて」の質問へは「積極的に取り組んでいきたい」と回答した人が36.5%、「気がついたときに取り組んでいきたい」と回答した人が52.5%という結果に。合わせると約90%の人が食品ロスに関心を寄せ、取り組む姿勢を持っていることがわかります。
フードシェアリングサービスとは?
生活者の食品ロスへの意識が高まる中で、近年広がりを見せているのがフードシェアリングサービスです。食品ロスとなりそうな商品と生活者やフードバンクをアプリやECサイトなどでマッチングするサービスで、事業由来の食品ロスを削減できることから、食品メーカーや飲食店などの事業者からも大きな関心を集めています。そのサービス内容は、飲食店のメニューを店舗で受け渡しをするものから、食品メーカーの商品をECサイトで販売するものまでさまざまです。日本で展開されている主なケースをいくつかのマッチングパターンに分けてご紹介します。
①飲食店、小売店から生活者へ
提供:飲食店、小売店
受取:生活者
事例:飲食店のフードロスの危機にあるメニューと生活者をマッチングし、購入者が店舗で受け取り。
②地域の生産者、食品メーカーから生活者へ
提供:地域の生産者、食品メーカー
受取:生活者
事例:規格外の野菜や肉、賞味期限の近づいた食品などをECサイトで販売し、生活者のもとへ発送。
③地域の生産者、食品メーカーから食品メーカー、飲食店へ
提供:地域の生産者、食品メーカー
受取:生活者
事例:規格外の野菜や肉、賞味期限の近づいた食品などをECサイトで販売し、食品メーカーの商品や飲食店のメニューの材料に。
④飲食店、小売店からからフードバンクなどの団体へ
提供:地域の生産者、食品メーカー
受取:フードバンクなどの団体へ
事例:飲食店や小売店のフードロスの危機にあるメニューをフードバンクを運営する団体へ提供。
⑤地域の生産者、食品メーカーからフードバンクなどの団体へ
提供:地域の生産者、食品メーカー
受取:フードバンクなどの団体へ
事例:規格外の野菜や肉、賞味期限の近づいた食品などをフードバンクを運営する団体に提供。
④と⑤のサービスは日本でまだまだ少ないですが、①と④、②と⑤を組み合わせたサービスも登場しています。事業者がサービスを利用する場合は、その目的とメリットを明確にした上で、利用するプラットフォームを検討することが重要です。
事業者がフードシェアリングサービスを利用する3つのメリット
フードシェアリングサービスの中で世界的にも認知度が高く、日本で広がりを見せているのが「①飲食店、小売店から生活者へ」のサービスです。最近では、新型コロナウイルスの影響で多くの食品ロスを抱えてしまい、頭を悩ませる飲食店や食品メーカーの希望の光としても注目を集めました。これを例に、事業者がフードシェアリングサービスを利用するメリットを考えてみます。
【1.食品ロス削減】
予想しきれない食品ロスを未然に防ぎ、食品ロス削減に繋がります。
【2.認知度向上】
新規客とマッチングすることにより、新たな顧客獲得が見込めます。社会貢献に取り組む事業者としてイメージアップに繋がり、社会的価値の向上の効果も。
【3.売上向上】
材料費や廃棄にかかる費用などの損失を防止し、顧客獲得するサイクルを繰り返せば、売上の向上に繋がります。
事業者にとって、うまくいけば、店の認知拡大やブランディング、利益拡大が見込め、利用する意義は充分にあると言えそうです。
フードシェアリングサービスの課題
しかし、フードシェアリングサービスの市場は発展途上。欧米に比べるとその認知度はまだまだ低いというのが大きな課題点です。多くのサービスが利用者の拡大を課題に抱え、残念なことにせっかく登録したのにマッチングがうまくいかないというケースも少なくありません。今後は、日本での食品ロスとフードシェアリングサービスの認知拡大を図り、サービスの利用を選択肢に入れる生活者を増やしていくことが重要と考えられます。
そんな中で市場を牽引し、フードシェアリングサービスの認知拡大に貢献しているサービスをご紹介します。
フードシェアリングサービス事例紹介
地方自治体とも連携。
「食べて」を食べ手につなぐ「TABETE」
TVCMなどで、生活者の認知度も高まっている「TABETE」は、食品ロスの危機にある飲食店のメニューと食べ手をマッチングするサービスです。マッチングして店の食事をテイクアウトすることを「レスキュー」と呼ぶことで、利用者に社会貢献する楽しさを訴求しています。運営の株式会社コークッキングはその優れた取り組みと食品ロス削減の貢献を評価され、内閣府が主催の「第2回 日本オープンイノベーション大賞」の環境大臣賞を受賞。多数の市区町村とも連携しています。2020年9月時点で、登録店舗数は全国で1300店舗を超え、登録者は30万人以上。今もっとも注目を集めているフードシェアリングサービスとも言えます。
産地と飲食店をつなぎ食品ロス削減。
BtoB、BtoC向けサービス「tabeloop」
「tabeloop」は、ECサイトを利用して不揃いでスーパーに出回らない食材などを販売するBtoB、BtoC向けのサービスです。売り手は、食品飲料メーカー、各地域の生産者で、買い手は主に飲食店や学生寮などの会員制をとっている。同サービスはSDGsの課題に積極的に取り組む姿勢で、利益の一部は飢餓撲滅のために寄付しています。
いかがでしたでしょうか?
食品ロス削減の新たな解決策として期待を集めるフードシェアリングサービスは、事業者にとっても損失を防ぐ一手であり、これまで出会えなかった顧客とマッチングする新たなチャンスと捉えることもできそうです。
また今後は、新型コロナウイルスの影響によるテイクアウト需要の高まりなどが追い風になって、フードシェアリングサービスにも新たな展開が見られるはず。これからの動きにも目が離せません。
writing support:Akira Fukui
著者情報

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