フードテックとは?意義から事例まで詳しく解説

フードテックとは?意義から事例まで詳しく解説

近年、世界的に注目の高まっている「フードテック」。その社会的意義や、あらゆる領域でスタートしているさまざまな取り組みについて詳しく紹介します。「フードテック」の事例からみえてくる、これからの食とは。

注目を集めるフードテックとは

「フードテック」とは、「フード」と「テクノロジー」を融合させ、これまでにない新しい技術やシステムの開発によって、食を取り巻く次世代型の商品やサービスを生み出すことです。

近年では、コンピュータ×インターネット×AI技術×IoTなどにより、あらゆる分野において進化した新しい技術を実用レベルまで落とし込む動きがあります。「フードテック」も、食料生産・製造・流通・保存・調理などの幅広い分野で取り組みが始まっています。

例えば、植物由来の代替肉や完全食などの次世代フードの開発、個人の嗜好に合った食材を自宅まで届けるデリバリーサービス。また、人手不足を解消するロボット開発や農業生産の効率化を促すものなどさまざまです。

この記事では「フードテック」の意義や広がり、新しい技術の紹介などをまとめたいと思います。

フードテックが解決できる課題とは

4829_image01.jpg
「フードテック」が世界で大きく注目される理由は、「フードテック」によって社会が抱えている食のさまざまな問題を解決できる可能性があるからです。


◾食料不足

先ず大きな課題のひとつに食料不足が挙げられます。世界の人口は増え続けており、世界の9人のうち1人が飢餓に直面していると言われています。

しかしながらデータを見てみると、世界の穀物生産量自体が不足しているわけではありません。開発途上国では貧困や環境、技術の問題で生産供給が不安定である一方、先進国では余剰食品が大量廃棄されるなど、食料バランスに問題があることがわかります。

効率的で安定した生産をおこない、情報を正確に取りまとめて食料を必要としている場所へ新鮮なうちに届ける。あるいはさらに、長期保存技術の進歩が実現していけば、こうした問題を解決していくことができるでしょう。

参考:世界食料デー
https://worldfoodday-japan.net/world/

◾食品ロス

先進国の食品ロスは解決しなければならない問題であり、日本においても年間612万トンもの、まだ食べられる食品が廃棄されています。これを1人あたりに換算すると、毎日お茶碗1杯分の食品が捨てられている計算になります。

例えば、小売や流通、飲食などの事業者は「仕入れ過ぎない」こと、生活者の各家庭においては「買い過ぎない」ということも大事なポイントであると言えます。

購買のビックデータをAIによって分析することで生産数や発注量、在庫数などを最適化するシステムや、家庭の冷蔵庫内を画像解析して的確な量とタイミングで買い物リストを作成するサービスなども、食品ロス削減に繋がる動きとして話題となっています。

参考:消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/


◾食の安全性

食品をおいしく安全に食べることができる基準として、賞味期限があります。しかし、保管方法によっては賞味期限内であっても傷んでしまうことがありますし、食品によっては賞味期限をある程度超えても、おいしく食べることができる可能性もあります。

こうした問題をより正確に把握するため、食品の傷み度合いをAIによって診断するツールや、長期保存を可能にする調理技術やパッケージ素材の開発も進んでいます。

このような取り組みによって、より鮮度を保つことができれば、消費期限切れの廃棄を減らせるだけでなく、食中毒を未然に防止することも可能になります。


◾人材不足

世界人口は増え続ける一方で、日本の人口は年々減少し、労働力不足は深刻になっています。特に食の分野においては農業や漁業、製造調理、流通販売まで多くの人材を必要としてきただけに、大きな影響を受けています。

「フードテック」の革新的な技術開発による省人化や無人化の実現には、その解決策としての期待が寄せられます。

アメリカでは既に2015年から、完全無人化のレストランが誕生しており、2020年には中国でもロボットによって全システムが運営されている店舗の営業が始まっています。

日本でもタブレット端末でメニューをオーダーする店舗も増えてきましたが、これも身近にある「フードテック」の一例と言えるでしょう。

あらゆる領域でフードテックが意識されている

4829_image02.jpg

こうしたさまざまな課題解決への期待が高まる「フードテック」ですが、実際にあらゆる領域で具体的な取り組みが始まっています。


◾生産の効率化を進める農業生産領域

農業生産の場における「フードテック」は、「アグリテック(Agriculture×Technologyの略)」とも呼ばれ、その役割についても重要視されています。

土壌や日射の状態をセンサーで管理し、最適な水と肥料の量をAIで分析する仕組みは、農作業を自動効率化するものとして期待されています。また、都内でもLEDや人工光を利用した植物工場などがスタートしています。植物工場では土壌や天候などの外部環境に左右されることがなく、どんな気候の地域でも安定した収穫量を実現することができます。


◾肉、魚、乳製品まで広がる代替食品領域

持続可能な社会のため「フードテック」が取り組んでいるもののひとつに、食肉の代替があります。大豆やエンドウ豆などの植物タンパク質を限りなく食肉そっくりの味や香り食感に近づけたものや、牛などの動物から細胞を抽出し、培養して生産された肉などが、すでに商品化されています。

日本でも「フレッシュネスバーガー」で、大豆由来の代替肉を使った新メニューが発売されたことが最近話題になりました。

こうした代替食の「フードテック」は、宗教上の食の戒律を持つ人だけでなく、自身の健康や環境問題に関する意識の高い生活者へも訴求することができるため、世界的にも注目されています。


◾新しい生活様式を見据えた外食領域

前述のように、外食サービスにおける大きな課題には「人材不足」が挙げられます。注文や会計をセルフにするだけでなく、調理や洗い場作業をおこなう厨房内のロボット導入なども進んでいます。

また、新型コロナウイルスの影響によって、外食産業は大きな岐路を迎えています。人と人とが近距離で接触する場面を極力減らす「新しい生活様式」においては、持ち帰りやデリバリーなど、これまでと違った運営やサービス展開も必要とされており、「フードテック」が担うべき役割はますます大きくなっていくでしょう。


◾生活者とダイレクトにつながる製造・流通領域

これまでの食品業界の製造・流通の仕組みを「フードテック」は大きく変えようとしています。食品事業者と生活者が、ECサイトや流通プラットフォームで繋がることで、新しい流通経路が生まれ、新たな顧客を獲得する動きが拡大しているのです。

わかりやすい代表的な例は「Uber Eats」でしょう。飲食店と生活者をプラットフォームでつなぎ、料理を届けるフードデリバリーサービスは「フードテック」のテクノロジーが可能にしたものです。

食品メーカーが自社サイトなどを通じて顧客に直接販売する「Direct to Consumer(D2C)」のビジネスモデルもそのひとつでしょう。D2Cは、食品メーカーが顧客のニーズをダイレクトに把握し、その要望に応えることができるという点から、流通だけでなく開発製造の在り方までも変化しています。

AIを活用し、1人1人の嗜好に合ったパーソナライズ化された食品サービスを提供するという動きもあります。アレルギーの有無や味の好み、手元にある食材に応じたレシピの提案・献立の作成・食材購入までを一貫しておこなうアプリも登場し始めています。


◾テクノロジーの開発で変わる調理技術領域

食品を分子単位まで細分化して、味やその香りを損なわないように再構築する「分子ガストロノミー」という調理分野があります。例えば「エスプーマ」と呼ばれる調理方法では、亜酸化窒素を使ってあらゆる食材をムースのような泡にしてしまうことが可能です。

調理技術の「フードテック」では今までになかった調理方法を可能にし、前衛的なメニューが誕生し続けています。

完全食も「フードテック」の1つです。完全食とは、人が健康的な生活をするのに必要な栄養素を全て含んだ食品です。2013年にアメリカのソイレント社が開発をおこない、日本でもすでに多くの完全食が販売されています。

拡大している市場規模

「フードテック」の市場は世界的な規模で注目を集め、その市場規模は年々拡大し続けています。今後はさらに700兆円にも達する見込みと言われ、世界のトータルでは年間2兆円を超える金額が投資されています。

日本政府も「SDGsアクションプラン2018」において食品ロス削減、フードバンク活動、サプライチェーンの商習慣などに言及しており、国内における「フードテック」への期待が高まっています。

2020年4月、農林水産省が中心として立ち上げられたフードテック研究会には100以上の国内企業が参加し、ルール形成や意見交換などがおこなわれました。「フードテック」に関する動きが日本においても徐々に活発化しています。

参考:日経クロステック
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/nc/18/101700076/101700003/

参考:農林水産省「フードテック研究会」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/foodtech/kenkyukai.html

展示会フードテックジャパン

こうした「フードテック」に取り組む企業向けの展示会が、2020年11月に「第1回 フードテック ジャパン」として幕張メッセで開催されます。

開催第1回目となる今回のテーマは、「食品製造の自動化・省人化」です。食品向けの新しいテクノロジーの出展者と、変革する食品メーカーや外食チェーンが出会う場として注目されています。セミナーも併催されているので興味がある方はぜひチェックしてください。

参考:フードテック ジャパン
https://www.foodtechjapan.jp/ja-jp.html

フードテックのこれから

多岐にわたって拡大している「フードテック」についてまとめてきました。
「フードテック」は、環境問題や食料問題という社会的に大きな課題を解決する役割を持つ一方で、個人の食の嗜好や健康状態に合った食品を届けるなど、よりパーソナルなニーズに応えるサービスも活発化させていくのではないでしょうか。

今後もどのような技術や商品サービスが登場するのかを楽しみにしたいと思います。


writing support:noriaki inagawa





著者プロフィール

著者アイコン
FoodClip
「食マーケティングの解像度をあげる」をコンセプトに、市場の動向やトレンドを発信する専門メディア。月1-2回配信されるスロー・ニュースレターにぜひご登録ください。