今、主婦から愛される「名もなき炒めもの」とは何か?

今、主婦から愛される「名もなき炒めもの」とは何か?

手早く簡単に作れる人気の「炒めもの」。近年は調理者の環境要因の変化から「炒めもの」にもある変化が生まれているようです。クックパッド社のプランナー、小室さんに教えてもらいました。

忙しい調理者を助ける「炒めもの」

夫婦の共働き化によって日々の食事の支度時間が減少を続ける今、実は人気を伸ばしている料理があります。その料理とは「炒めもの」。平日の夕食時間には、時間のかかる煮込み料理や、凝った料理を作る時間を捻出するのは難しい…。そんな時に、食材をカットしてフライパンで炒めれば、10分ほどの時間で主菜が作れることから「炒めもの」が選ばれているようです。

クックパッドの検索データで「炒めもの」は、全キーワードの中で21位にランクインしている人気のキーワードです。「炒めもの」単体キーワードの経年推移は、横ばいとなっているようにみえますが、もやし炒め、味噌炒め、ソテーなど「炒めもの」に関連したワードを含めると、検索頻度は増加しています。

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「調味料名+炒め」
名もなき炒めものが増加中

そんな「炒めもの」の中でも、特に検索頻度が成長しているのが「名もなき炒めもの」です。「名もなき」とは、酢豚や八宝菜、青椒肉絲などのメニュー名のついた料理ではなく、調理者が創作で作った料理のことを指します。食材や調味料、あるいは特定のメニュー名を起点にレシピを探すのではなく、冷蔵庫にある食材を上手にやりくりするためのレシピを探しているようです。

具体的にどのようなものが「名もなき炒めもの」なのかというと、「調味料名+炒め」や「食材+炒め」などで検索されるもので、醤油炒めやマヨネーズ炒め、ケチャップ炒めや卵炒め、ガーリック炒めなどが、その例と言えます。

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「炒めもの」に関連するメニューのSI値を2015年対比で見てみましょう。
醤油炒めは3,198%、ガーリック炒めは2,357%、マヨネーズ炒めは1,268%と検索頻度が大きく成長していることが、クックパッドの検索ビッグデータである「たべみる」からわかります。

「調味料+炒め」の食材は自由自在。
そこが調理者ニーズにマッチ

「名もなき炒めもの」の中から比較的検索されている(検索頻度が0.1以上)レシピには、どんなものがあるのかというと、「ポン酢炒め」や「ケチャップ炒め」「オイスター炒め」や「醤油炒め」などが挙げられます。

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これらの人気メニューの中で、「ガーリック炒め」と「マヨネーズ炒め」をさらに詳しく分析していきましょう。

2つのレシピを見てみると、「ガーリック」と「マヨネーズ」という調味料は固定(ロック)されているものの、料理に使用する食材としては「ブロッコリー」や「小松菜」「じゃがいも」「ピーマン」など、調理者によって多様な食材が選ばれており、食材に縛りがないことがわかります。

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さらにデータを詳しく追っていき、各レシピの「つくれぽコメント」から調理者のインサイトを見ていきます。

すると、レシピに記載されている材料以外のものを使ったり、食材を自由にアレンジしており、「冷蔵庫にストックしている食材を自宅にある調味料で簡単に調理したい」という背景が見えてきます。

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加工度の高い調味料ほど
「これひとつで簡単」と判断されている

他にも面白い発見がありました。「名もなき炒めもの」のレシピに含まれる調味料数の平均を調べると、「オイスターソース」や「ケチャップ」などは、追加している調味料数が4以上(油、薬味、スパイスなどの他調味料)あるのに対して、「焼き肉のタレ」や「めんつゆ」など、調味加工度が高いものについては調味料数が2.5程度のようでした。

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なぜ、名もなき炒めものは共感されるのか?

一人暮らし世帯や共働き世帯が増え、調理時間が減少していると同時に、当然ながら調理の知識やスキルが家庭内で伝承される機会も少なくなっている現代。また検索すれば何でも「回答」を見つけられる時代でもあるために、「冷蔵庫にある食材と、家族も食べてくれる(失敗なし)の調味料で一皿作れないないか」と検索されているようです。

毎日買い物に出かけなくとも、冷蔵庫の中に残っている食材や、賞味期限が間近となった調味料を効率よく使い切った時短料理で一品を、との生活者の思いが色濃く反映されている料理が「名もなき炒めもの」であると言えるでしょう。

ステイホームや在宅ワークなどで自宅で料理をする機会が増えた忙しい生活者にとって、主菜にも副菜にもなり、フライパン一つで完成する「名もなき炒めもの」は、これからの食卓の救世主でもあるはずです。

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在宅勤務など働き方改革は進む中でも、調理者たちが「在庫食材と家庭にある調味料で簡単に作りたい」という気持ちは変わりません。また、調理者として男性が加わる場合においてもトライアルしやすい料理として「名もなき炒めもの」が注目される可能性があります。

今後もさらに「名もなき料理」ニーズは拡大していくかもしれません。

 


writing support:Yasue Chiba





著者情報

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ストラテジックプランナー 小室真理絵
旅行会社にてコンテンツマーケティングやデータ分析の経験を経て、2017年クックパッド入社。仕事も育児も頑張る全ての人のライフスタイルに寄り添った課題解決型のコミュニケーションを重視。最近は、家事の合理化、家族の料理コミュニケーションに注目している。アウトドアとガジェットが好き。