[スーパーマーケット偏愛日誌]イオン編

[スーパーマーケット偏愛日誌]イオン編

自他共に認めるスーパーマーケットオタクの谷尻純子さんによる偏愛コラム。
第3回目は、全国に展開されている「イオン」の特集です。
読んだら訪問せずにはいられない、スーパーマーケット偏愛情報をぜひご堪能ください。

地元発スーパーよりも地元商品豊富!?
イオンの地元力

「地元に何軒もあったから、全国展開しているスーパーだと思ってた!」なんてエピソードは、“スーパーマーケットあるある”のひとつ。大学生や社会人などになり、地元を離れて初めて、地元ではなじみ深いスーパーが他エリアでは展開されていないことに気付いた方も多いのではないでしょうか?

それぞれの地域で誕生したスーパーはその土地の郷土料理をはじめ、食卓を地元らしさでいっぱいにしてくれる、地域色のある商品ラインナップが魅力的。…だったはずなのですが、最近はご当地スーパーへ行っても地元商品をあまり扱っていないお店が多く、店頭から地元の味が見えないこともしばしばです。

一方、全国に店舗を展開している「イオン」は、実は地元商品が豊富。全国展開チェーンと聞くと、どの地域も同じ商品ラインナップであるイメージですが、各地の「イオン」では、時には地元発のスーパーよりも多数、その土地らしさのある商品が発見できます。

今回はそんな「地元力」をテーマに、「イオン」の魅力を堀り下げていきましょう!

日本国内300社以上の企業で構成されるイオン

全国どこへ行っても出合うことのできるイオン。生活者として接していると何となく「一つの企業が全国の店舗を運営している」ように思えますが、実はイオンはエリアによって運営元の母体が異なっています。

純粋持株会社でありイオングループ全体を統括するイオン株式会社と、イオンリテール株式会社を中核とした国内300社以上の企業で構成されています。

展開するブランドもGMS(総合スーパー)の「イオン」「イオンスタイル」をはじめ、食品スーパーの「マックスバリュ」、ディスカウントストアの「ザ・ビッグ」など多岐にわたります。

また「ダイエー」や「マルナカ」「レッドキャベツ」など店名にイオンとつかない店舗の展開も。イオングループの広い店舗展開ぶりは、日本のどこででも「石を投げたらイオングループ店舗にあたる」といえるほど。日本で生活する私たちにとって、食のインフラのような存在です。

地元スーパーよりも、
イオンの方が地元商品が多い!?

常日頃から「旅行のお土産はスーパーで買うのがおすすめ」と周囲に伝えている私ですが、その理由は地元商品が豊富であることや、地元の生活に本当に根差した商品に出合えること、価格がお手頃な商品が多いことなどです。

ところが、お土産を買おうと意気込んで入店したのに、都内のスーパーとほとんど品揃えが変わらなかった……なんてことも最近ではしばしば。

いろいろな事情があるのだろうと思いつつも、「せっかくこの地域にしかないスーパーなのに、地域に密着した品揃えで個性を出さないのはもったいないなぁ」と、残念に感じることが多々あります。

ところがあるとき、ダメ元(失礼な言い方ですね、スミマセン…)で入ったイオンで、大量の地元商品と出合い、感動を味わいます。

その後各地に行くたびに、地元スーパーとイオンの両方へ行くようにしてみると、たびたび「イオンの方が地元商品が多かった」という経験をすることがありました。

気になって調べていくうちに、店舗を運営する運営元企業が各地で異なり、それぞれの企業で地元メーカーさんと積極的に商談を重ねているからなのだと知りました。

地元商品が並ぶ店舗の例

ではイオンの地元力の強さを、実際のお店の様子からご紹介しましょう。


沖縄県

例えばイオン琉球株式会社が運営する沖縄県の店舗。こちらには「亜熱帯の気候からくる、独自の食文化に寄り添う商品ラインナップを」と、沖縄色の強い商品が数多く並びます。

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イオン那覇


デリカ売り場では、旬の島野菜やポーク(スパム)、沖縄そば、島豆腐などはもちろん、沖縄県で消費量が多いフライドチキンも、独特の味付けで数種類を展開。

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沖縄のご当地グルメ、ポーク玉子おにぎり


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フライドチキンも豊富に並ぶ


またそのほか、沖縄ぜんざいは地元企業とコラボして商品化したものを扱っているそう。沖縄といえばの泡盛も、地元の酒造会社と提携し、オリジナル品を販売しています。

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ぜんざいの「富士家」が監修 した、丸永製菓 「沖縄ぜんざい」


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地元の酒造とイオンが共同開発したオリジナル泡盛「琥珀伝説」


「地元の小売業として、地域ナイズした地元商品と、全国のイオン系スーパーで購入できるPB商品をバランスよく供給し、地元の皆さまの生活を応援したいと考えています」(イオン琉球株式会社 広報課長 喜納優子さん)

さらには、広く「沖縄県」といっても、実は地域によって細かく食文化が分かれているそうで、店舗ごとに地元民の嗜好に合った商品ラインナップになるようチューニングしているのだとか。芸が細かいとはこのことですね。


静岡県

「そうはいっても、沖縄県って独特の食文化だからじゃない?」「そもそも沖縄県は他のチェーンも地域色が濃いよね」なんて声が聞こえてきた気がします。

いえいえ、それは事実ではあるものの、イオンは沖縄県以外の地域も同じようにそれぞれのカラーがあるのです。

続いてイオンリテール株式会社が店舗を展開する、静岡県は富士宮市に店舗を構える、イオンスタイル富士宮の例を紹介しましょう。

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イオンスタイル富士宮


こちらの地域では、いわずと知れたB級グルメの元祖「富士宮焼きそば」がご当地グルメとして大人気。観光客に人気なのはもちろん、地元の方々も高い誇りと強いこだわりを持つメニューです。

イオンスタイル富士宮では、そんな富士宮焼きそばのアイテム数が地域で一番多いそう(イオンリテール調べ)。使用する食材に関しても、地元の飲食店で販売しているようなこだわりの品を揃え、地元密着を大切に取り組まれています。

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富士宮やきそばのコーナー


また年に1回、地元企業とコラボして富士宮焼きそばを挟んだ焼きそばパンを販売するという試みも。じゅるり…おっと失礼、心のヨダレが漏れてしまいました…。

さらにはイオングループが展開する電子マネー「WAON」のカードデザインにも、「富士宮焼きそば」や「富士山」を描いたものが!店内で定番デザインと併売しているそうです。

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富士宮焼きそばデザインのWAON。かわいい!


このほか、静岡県内に製造元企業のある地元銘菓「田子の月もなか」や地元新鮮野菜の「JA富士宮 う宮~な」も揃うなど、静岡県ならではの食卓を準備するにはバッチリな地元力なのです。


東京都

そして、私が住む東京都の店舗もまた、地元色の強い商品を扱っています。

2021年には東京オリンピックがあるなど、いま最も都内で注目されているエリアのひとつ、江東区有明にあるイオンスタイル有明ガーデンの例をお話ししましょう。

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イオンスタイル有明ガーデン


こちらでは1.5Km先の豊洲市場から運んだ農産品、水産品をラインナップ。

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豊洲市場から届いた新鮮な鮮魚


また江東区にある「深川ワイナリー」や、港区で酒造を開業する「東京港醸造」の日本酒も、店頭に揃っています。さらには豊洲市場に本店を構える「茂助(もすけ)団子」の和菓子も購入できるそう。

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深川ワイナリーのワイン。「TOKYO」のPOPもついており、わかりやすい!


これまで数々の都内のスーパーを見てきた私ですが、「東京都ならでは」の商品を揃えていたお店はほとんどありませんでした。街と同じで、商品も“雑多で、“何でも揃う”印象ゆえ、逆にローカル性がないのです。

でも都内のイオンなら、東京都の「ローカルな魅力」に気付ける商品に出合えそう!東京都の店舗まで地元力があるのには、いや~驚きました。

「このほか全国の納豆や豆腐、調味料を揃えるなど、ほかのスーパーでは手に入らないような商品も多数扱っています。

食への感度が高いお客さまが多いエリアのため、専門店や百貨店と同等に近い品揃えとサービスで、お客さまの期待に応えていきたいですね」(イオンスタイル有明ガーデン 店長 谷本和彦さん)

このほか、イオンリテールの店舗では地域に根付いている銘店やテナントさんの導入、出店した街に馴染んだ外観づくりなども行っているのだといいます。すごい!

地元商品にこだわったラインナップはなぜ?

ご説明してきたように、全国チェーンでありながら、その土地ごとに個性豊かな地元商品がたくさん発見できるイオン。

大手メーカーの商品とPB商品だけでも生活者にとっては十分なラインナップとなるし、そのほうが企業として仕入れも効率的な気がするのですが、地元色にこだわるのはなぜなのでしょうか?

「イオンリテールでは、生鮮食品などの品揃えや仕入れは、各エリアの支社を中心にバイヤーが選定、商談をしています。これはその地域で親しまれている商品の品揃えや、地場の農産物や畜産物、鮮魚の品揃えにより、地域に密着したお店として愛され、お客さまの買い物体験を楽しいものにしたいとの想いからです」(イオンリテール株式会社 広報部 ご担当者さま)

生活者の好みやその土地の味は、地域によってさまざま。全国に店舗を展開しているチェーンだからといって、全国共通の味を提供するのではなく、個々の地域に寄り添う商品展開を心がけ、どの地域に住む人にもその土地らしい、心地よい暮らしをイオンは提供しているのでした。

ぜひ皆さんも、旅行に行った際はその土地のイオンをチェックしてみてくださいね!きっとすてきな地元商品が見つかりますよ。


※記事中の写真はすべてイオンリテール様および、イオン琉球様よりご提供いただきました。





著者情報

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谷尻純子
1986年生まれ。編集者としてはたらく傍ら、スーパーマーケットキュレーターとして小売りや食品の情報を集め、自身の運営するWEBサイトやSNS、各種メディアで発信している。スーパーマーケットに関するメディア出演、執筆、監修など多数。暮らしの道具と台所も大好物。
Twitter:https://twitter.com/gotouchisuper
ゴトウチスーパードットコム:https://gotouchisuper.com/