完全食チョコレート「アンジュ」とは?開発者が語る想い

完全食チョコレート「アンジュ」とは?開発者が語る想い

食に悩みを抱える人の課題を解決する商品として、完全食チョコレート「andew(アンジュ)」に期待が集まっています。同商品は株式会社SpinLifeが開発し、現在ECサイトや期間限定のポップアップショップで販売しています。代表であり現役医学生でもある中村恒星さんに、商品開発にかける想いや今後の展開についてうかがいました。

今回、取材した方

株式会社SpinLife 代表取締役
中村恒星さん (以下、敬称略)

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現役医学生でありながら、完全食チョコレート「andew(アンジュ)」を開発し、ヘルスケアベンチャーを経営する学生起業家。 北海道大学医学部では、脳腫瘍の研究も行う。

すべての人が楽しめる完全食チョコレート
「アンジュ」とは

「アンジュ」は、人間に必要な27種類以上の栄養素を含む板チョコタイプの完全食チョコレート。自然由来の材料にこだわり、チョコレートの原料であるカカオ豆をベースとして、アーモンド、きな粉、チアシード、ココナツ、ケシの実、抹茶、 昆布などを使用。乳化剤などの保存料は使用しない、体にやさしい商品です。

難病患者との出会いをきっかけに「患者さんに食べる喜びを届けたい」との想いから開発され、食事をするのが難しい難病患者をはじめ、高齢者、栄養を気にしている人、罪悪感を抱くことなくチョコレートを食べたい人など、食を楽しみたいすべての人をターゲットとしています。

【含有栄養素】
タンパク質、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、クロム、 モリブデン、マンガン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン


▶完全食チョコレート「アンジュ」 公式サイト:https://andew.co.jp/


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編集部:中村さんがヘルスケア領域の起業家として活動するきっかけを教えてください。

中村:私には生まれつき心臓に病気があり、生まれてすぐに入院、手術をおこないました。病気を持ちながら、社会の中でどう生きていくかを常に考えていた経験から、病気を持つ人でも生きやすい社会を作ることが重要だと考えていました。これが、医療の道やヘルスケア領域に踏み込む、原体験ともいえます。

薬学部にいたとき(その後医学部へ転籍)にミャンマーの医療ボランティアに参加したのも大きな転機でした。薬学部では、ひたすら脊髄損傷の人のための治療薬を作る日々を送っていたのですが、当の患者さんとは向きあっていないことに気づきました。

そこで実際に会ってみると、本や講義で学んでいるのとは大きく違うんですよね。研究者であっても病気をいかに治すかだけでなく、人として病気を診る重要性を実感しました。

だから、プロダクトを立ち上げるときも、実際にふれた〇〇さんの課題を解決することがやりたかったんですよね。

編集部:完全食チョコレートも、実際の患者さんとのコミュニケーションから生まれたとうかがいました。

中村:医学部へ編入学した後、北海道大学の先生にすすめられて参加した患者会で、表皮水疱症という皮膚難病の患者さんに出会いました。

表皮水疱症は、生まれつき皮膚が弱く、激しい痛みをともなう病気で、患者さんは社会生活を送る上でさまざまなハードルを抱えています。口内が荒れてしまうので食事も制限されてしまい、ポテトチップスを食べるとトゲのついた板を食べているくらい痛いとも聞きます。色んな話を聞く中で、これは自分がやるべきなんじゃないかと思って、患者さんにも食べられる完全食の開発に着手しました。

編集部:題材にチョコレートを選んだのは秀逸ですよね。ギフトやおやつなどの嬉しい瞬間にぴったりです。

中村:最初はゼリーとかでもいいかなとも思っていました。でも、患者さん向けだけで終わらせてしまうと、認知度も上がらず、病気への理解も広まりません。なにより患者さんは満足に仕事ができない方も多く、ご自身で買うのではなくギフトなどで自然と手にしてもらえるのが理想だと考えていました。

どんなメニューを完全食にするか、スーパーで買ってきた食材をミキサーにかけたり、がむしゃらに試しましたね。一人でやけになってチョコレートを食べていたら、「これじゃないか」と気がついて。日本にはバレンタインの習慣があり、感情がのせられるというのも大きかったですね。

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開発に携わった「SATURDAYS CHOCOLATE」の皆さん


編集部:完全食の開発には、薬学の知識が生かされたのでしょうか?

中村:いや、そこは意地ですね。栄養士の免許を持っているメンバーに栄養素の入った食材をリストアップしてもらって。Bean to Bar 専門店「SATURDAYS CHOCOLATE」に協力していただいて、試行錯誤の末に完成したものです。


編集部:実際のお客様の反応はいかがですか?

中村:皮膚難病の表皮水疱症の患者会で、2歳くらいの患者さんが「おいしい?」の問いかけに小さくうなずいてくれたのには感動しましたね。子どもは素直に反応してくれますし。

他にも「母親がパーキンソン病でなかなか食べることができなくて困っていた。喜んで食べていたよ!」。「食べ物が食べづらくなってきたおじいちゃんと一緒に食べます!」といったお声をいただきました。病気でない人が誰かを想って購入いただいたり、患者さんが家族と一緒に食べてくれたり。完全食チョコレートを通じて幸せが広まるのは嬉しい限りです。

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編集部:同じものを食べられるって、とてもいいですよね。

中村:食の楽しさは一緒に食べる空間や会話が重要で、普段食べることに楽しさを感じない患者さんをも笑顔にします。患者会の方に「患者のための商品ではなく、一歩超えたものを作って欲しい」と託されていて、それを叶えられたかなという気持ちでいます。

編集部:まさに普遍的な価値を持つプロダクトですね。株式会社にしたのにも理由があるのですか?

中村:100年経っても残したい大切なプロダクトなので、属人的なビジネスモデルではなく、自分がいなくても回るシステムが作りたくて。利益をきちんと確保しつつ、スタッフの給与も出して…、資本主義社会に当てはめて動かしていく上では、株式会社が一番いいのではないかと考えました。

編集部:企業としての成長も早い気がしていますが、いかがでしょう?

中村:実は遅いほうですよ。私自身はもっとスピードアップしたいと思っています。
今後の課題は、間接的な寄付のモデル構築です。例えば、一定の金額以上購入いただくと、患者さんにチョコレートがギフトとして届くとか。良いシステムができないか検討中です。

あと、チョコレートは自由に形づくリができるので、型を使って商品のパーソナライズ化にも挑戦してみたいです。ただ、どうオペレーションするかが問題なんですよね。

編集部:実店舗での販売は考えているんですか?

中村:先日、渋谷パルコでポップアップショップをおこないました。実店舗を持つ価値は承知しているのですが、現状のリソースだとECが限界で、良い機会があれば、私たちの想いに共感してくれるお店に商品を扱って欲しいと考えています。

完全食に新たな価値を見出した「アンジュ」

【注目されるポイント】

・現役医大生がヘルスケア領域で起業
・難病患者の課題解決として、完全食チョコレートを開発
・完全食チョコレートは、あらゆる人が食べる楽しさを共有できる
・食に悩みを抱える人へのギフトとしても利用可能
・100年続くプロダクトを目指し、株式会社として起業

完全食チョコレート「アンジュ」の開発によって、たくさんの新しい価値を生み出した中村さん。「アンジュ」はあらゆる人へ食べる楽しみを提供しながら、普遍的なブランドとしてその価値をさらに広げていくことでしょう。



writing support:Akira Fukui





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