拡大する料理男子。新マーケットは誕生するのか?

「男子、厨房に入るべからず」といった風潮も今は昔。「料理男子」や「弁当男子」といった言葉が完全に定着し、「男子、積極的に厨房に入るべし」といった時代を予感させます。料理という舞台に男性が進出してきたことによって変化する市場を、その主役である「料理男子」の特徴から読み取ってみましょう。

社会環境とライフスタイルの変化で
マス化しつつある料理男子

「最近、男性タレントが料理をするテレビ番組をよく見るな」と感じることはありませんか? 
書店には「男子ごはんの本」のような書籍が並び、会社には弁当を持参する男性社員が増えています。料理教室には「男性コース」が設けられ「男性専用の料理教室」も存在します。料理をする男性の存在感が、ここ数年で急速に高まってきていると言えそうです。

実際クックパッドでの男性のレシピ投稿数を比較すると、2018年は2009年の3倍以上に伸びています。さらに2018年の男性のレシピ検索頻度(SI値)は2009年の18倍以上と、飛躍的な増加率となっています。

また、男性の半数以上が週に1度は料理をしていて「ひとり暮らし」の場合では、4割以上が平日の夕食をほぼ自炊するという調査結果(※)が出ていて、現代は男性が積極的に料理をする時代であることを裏付けています。

背景としては、ジェンダー意識の変化や、夫婦共働き家庭や単身世帯の増加、育休を取る男性の増加などの働き方改革の影響、さらには節約志向や健康志向など、さまざまな要因が考えられるでしょう。社会を取り巻く環境やライフスタイルの変化から、キッチンと男性との距離が急速に縮まっています。そのムーブメントが可視化・認知され「料理男子」が増えてきたのかもしれません。

※株式会社リンナイのアンケート調査

料理男子は
「こだわり、揃えたがり、語りたがる」

ル・クルーゼジャポン株式会社が料理男子の実態調査を目的にアンケートを行った結果、料理男子の半数以上は「趣味のため」として料理をしていることがわかりました。また、キッチン用品を選ぶ決め手としては「価格」を抑えて「機能性」が1位という結果になり、約3割の男性が「デザイン」で選んだと回答しています。

さらに、料理男子は料理をしない男性よりも仕事に対する向上心が高く、出世意欲が強いというデータも確認できました。

上記の調査結果をもとに、料理男子の生態について、さらに深くイメージしてみましょう。

    • 仕事も趣味も向上心が強く、アクティブに料理と向き合う
    • 調理器具にこだわり、単機能に特化したアイテムや高スペックのものを特に好む
    • スパイスや調味料をはじめ、なにかと一式揃えたがる
    • ホームパーティで自作の料理を振る舞い、食材や調理器具の背景・思想を語りたがる
    • (単身者の場合)自由に使えるお金が多いため、高額な食材や調理器具を揃える
    • (既婚者の場合)従来の夫婦イメージにとらわれず、積極的にキッチンに立つ

以上のような人物像が浮かび上がってきそうです。

料理にかかわるさまざまな面でこだわりを見せ、調理すること自体に楽しみを感じ、友人や家族に振る舞い、積極的に語って、満足感を得る。そんなペルソナが描けるのではないでしょうか。

そもそも料理という行為は、テキパキとした段取りや、細やかな手先の作業が必要であるため、仕事ができ、余暇でも活動的であろうとする男性と相性が良いのもしれません。

「料理×男性」という新領域で
売れる製品と市場の変化

上記の調査などから、料理男子は、食や調理に関して意識が高く、ディープな領域に迫ることを好む層であることが想定できます。高いこだわりを持った彼らは、どういう視点で製品やサービスを選好し、市場にどのような変化を生む可能性があるのでしょうか。

高品質で専門性の高い、無骨なキッチンツール

キッチン用品の選定基準として「機能性」を最優先する料理男子は、パスタマシンや燻製マシンなど、特定の料理に特化した専門器具や、高付加価値な製品を好んで選択することが考えられます。とりわけ、シンプルで機能美を追求した造形で、質実剛健なプロダクトであるならば、デザイン性にもこだわる彼らから、大きな支持を得ることができるかもしれません。

例えば、鉄鍋はまさに料理男子の嗜好を象徴するツールといえるでしょう。重厚な鉄を使用した鍋やフライパンなどは、重さやメンテナンスの面倒さという弱点を抱えながらも、素材に火をムラなく早く通すことができるという高い機能性があり、デザインは無骨で、いかにも男性的なイメージです。こうした機能的で男前な調理器具に、男性は惹かれるのではないでしょうか。

収集欲を刺激するもの

こだわりの強い料理男子は、機能やデザインを重視して製品を選ぶだけではおさまらず、その製品をすべて揃えたがるような「コレクター」的な面も持ち合わせているかもしれません。

例えば、包丁は気に入った製品のブランド・ラインで役割別・長さ別にキッチリと揃える。鍋やボウル、スケールなど、調理器具を同じメーカーで統一し、キッチン上に生まれた統一感のある風景にうっとりする。そんなオタク的な感覚から料理を楽しむ男性も想像できるでしょう。

コレクション的な目線で向き合う対象は調理器具だけではなく、食材にも及ぶかもしれません。例えば、カレーなどに使われるスパイスには非常に多くの種類があり、それらの組み合わせのバリエーションは無数に存在するため、調理の一部分ではあるものの奥深く、さまざまな調合を楽しむことができます。

こだわり派である料理男子として、専門食材店の棚に並ぶスパイスシリーズのすべてを購入し、最高のカレーを求めて日夜ストイックに味の追求に勤しむ・・・・・・といった、いわば研究者のような佇まいが目に浮かんできそうです。

収集する楽しさを満たしてくれるような製品には、料理男子の心を摑む魅力があるかもしれません。

深い思想やストーリーのある製品

何事にも意識の高い料理男子は、機能的な価値を重きにおいて製品を選ぶだけでなく、深い思想や歴史による付加価値、いわゆる「情緒的価値」も重視して製品を選んでいる可能性があります。

歴史のふるいにかけられて生き残ってきた物には、人々に長く愛されてきたという物語が身近に感じられます。作り手の思想やこだわりが込められたツールには深い味わいがあり、こういったストーリー性のある製品は、料理という行為をさらに楽しく彩ってくれそうです。

「この包丁は100年の歴史を持っていて……」

「英国貴族が愛用している食器で……」

自宅で開催したホームパーティで、このように語りたがる。料理男子のそんな一面も想像できるかもしれません。

料理男子を深くプロファイリングした結果、料理男子が持つ高いこだわりや感覚は新たな需要や市場の変化を生み出し、食品関連業界に新たな風を吹かせてくれそうです。

まとめ

社会環境や生活価値観の変化から、男性が日常的にキッチンに立つようになりました。料理男子は、料理におけるさまざまな領域においてこだわりを持ち、意識と意欲が高い、というペルソナが想像できます。

誰もが毎日必要とする「食」の分野において男性の存在感が増してきたことにより、ビジネスの視点からも新たな領域が開けていくことでしょう。「男性の料理」という市場が、大きな成長の可能性を秘めていることは間違いありません。



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