[世界の台所探検]自炊100%?! タイのアカ族の村

[世界の台所探検]自炊100%?! タイのアカ族の村

HolicClipの連載[世界の台所探検]です。世界中の台所を訪れて現地の人と料理をする台所探検家・岡根谷実里さんのレポートから、世界各地の家庭料理を通じて、さまざまな食の文化と歴史、それぞれの暮らしを感じることができます。

人の作ったごはんが食べたい!

そろそろ「自分の作った料理じゃないもの」が食べたくて困っています。

テレワーク、三食自炊、そんな生活が日常になりました。100%自炊の生活に突入し、最初はいろいろな料理に挑戦したりもしましたが、結局自分で作るものは偏るし、作っている途中で味も想像がついてしまう。最初は楽しかったのに、いよいよ面倒になってきてしまいました。家のごはんは好きだけれど、「それだけ」になるとこんなにもつまらないものなのかと、実感する日々です。

これは「贅沢な悩み」なのか?!

そもそも、子どもの頃は毎日家でごはんを食べていたし。気軽に外食ができるのは、お店も機会もたくさんある今の暮らしに慣れてからのはず。それなのにどうしてこんなに我慢ができないのでしょう? これは「贅沢な悩み」なのか…?!

そういえば、私が台所探検でお世話になった中にも、毎日食を「手作りする」暮らしがありました。彼ら彼女たちは、100%自炊の生活のようだったけれど、どうして飽きないのでしょうか。今は届かぬその暮らしに、思いを巡らせてみることした。

100%自炊の人々の「食事の楽しみ方」

5971_image01.jpg思いつく限り、最近訪れた中でもっとも100%自炊の生活を楽しんでいたのは、タイのアカ族の村です。 最寄りの街から山道を車で進むこと4時間、山奥の集落がそこでした。毎日の食事は山からとってきた野草を塩や発酵調味料で味付けしたもの。村にはレストランも食堂もありません。くる日もくる日も野草の料理ですが、そんな中で時々あるのが「お互いの家に行ってごはんを食べる」というイベントでした。

ある日の朝ごはん、私がお世話になっていた家のおかずは「テブー」というマメ科の野草を茹でておひたしのようにしたもの。ところがお隣さんが持ってきたのもまったく同じもの。打ち合わせがなかったからかぶっちゃったんだなあと、私はちょっと居心地の悪い気持ちになりました。ところが誰もそんなこと気にする様子はなくて、ちょっと色味の違うお互いの家の「テブー」を食べながら談笑しているのです。

5971_image02.jpg今思うとこれも「人の作ったごはん」。お隣さんの力を借りて、自分の手だけでは作り出せない味や気分の変化を楽しんでいたのでした。

そういえば、インスタント麺の袋を開けたお昼ごはんもありました。こんなに自然の食材に囲まれているのにと思ったけれど、あれも「たまには違うものも食べたい」ということだったのかも?

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食事を楽しみたい気持ちは「世界共通」

思い出してみて、一見自分の手でなんでも作っているようにみえた世界の家庭でも、完全に自分の料理で完結しているわけではなくて、「ひとの味」も取り入れていたことに気付かされます。 なんだかんだみんな工夫して、食事がつまらなくならないように工夫していたのです!

世界を訪れることはおろか、大勢で集まって食事をすることもままならなくなった今、「自分以外の人が作った料理を食べたい病」は抑えようがなく、食事は栄養を摂取するためだけのものではないんだということを、今まで以上に実感しました。普段いかに人との関わりの中で生きているかを突きつけられた気持ちです。

少しずつ日常を取り戻しつつある今、誰かが作ってくれた食べ物や、一緒に食べられること自体にも、より有り難みを感じられそうです。





著者プロフィール

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岡根谷実里
台所探検家。世界各地の家庭の台所を訪れ、世界中の人と一緒に料理をしている。これまで訪れた国は60カ国以上。2014年クックパッド入社。料理から見える社会や文化、歴史、風土を伝えている。
https://note.com/misatookaneya