注目されるノンアルコール。あえて飲まないという選択も

注目されるノンアルコール。あえて飲まないという選択も

空前のノンアルコールブームが到来!話題のノンアルコールバーが続々とオープンし、スーパーやコンビニではノンアルコールの飲料缶や日本酒のラインナップも増加。今やノンアルコールドリンクはお酒が飲めない人だけのものではなくなっています。食品業界でも注目を集めているノンアルコールについて深掘りしていきます。

ノンアルコール市場の成長

「若者の酒ばなれ」が叫ばれてしばらく。成人1人当たりの酒類消費数量について、平成元年度以降は平成4年度(1992年)をピークに減少を続けており、酒類の市場は縮小傾向にあります。

その一方で、拡大しているのがノンアルコール市場です。日本初のノンアルコールビールが販売された2009年から少しずつ認知を広げ、市場を確立。2019年のサントリーの意識調査でノンアルコール飲料の飲用経験について質問したところ、半数以上(55.7%)が「飲んだことがある」と回答するまでになりました。現在、ノンアルコール市場の規模は、2009年と比較して4倍以上にもなると推定されています。

参照:国税庁「酒レポート」
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2019/pdf/000.pdf

参照:サントリー「ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査」https://www.suntory.co.jp/news/article/13483.html

 

なぜノンアルコールが求められるのか

ノンアルコールがトレンドになる背景として、世界的なウェルネスブームが挙げられます。日本でも食のトレンドに糖質制限などのキーワードが上がる中で、健康を気遣う生活者がノンアルコールドリンクを選ぶという選択肢が定着してきました。

また、SDGsの目標の中で「麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する。」との文言があり、「責任ある飲酒国際連盟(IARD)」に加盟する世界の大手飲料メーカーなどがSDGsへの取り組みをおこなっていることから、健康への影響や依存症のリスクなどに目を向ける生活者が増えたとも考えられています。

加えて、高齢化による影響でお酒を飲む世代が減り、新たにお酒を飲む若い世代においては、お酒を飲む習慣が少なくなっていることも影響。2017年に厚生労働省がおこなった「平成29年国民栄養調査」では、20代は飲酒の頻度について「やめた」「ほとんど飲まない」との回答が半数以上にのぼり、他の世代に比べて普段からお酒を飲まない人が多くなっています。

参照:厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査報告」
https://www.mhlw.go.jp/content/000681194.pdf

 

あえてノンアルコールを選ぶ
「ソーバーキュリアス」

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海外のミレニアル世代やZ世代には、心身の健康のために、お酒は飲めるけどあえてお酒を飲まない選択をする「ソーバーキュリアス」と呼ばれるスタンスがあり、日本でもその考えが広まりつつあります。「ソーバーキュリアス」は直訳すると、「ソーバー(sober)」はシラフ、酒に酔っていない様子、「キュリアス(curious)」は興味深い、好奇心旺盛な、といった意味。さまざまな情報に触れ、多様な娯楽が溢れる社会の中で、新しい世代は健康を阻害するリスクのあるお酒を、あえて選ばなくなってきたともいえます。

新感覚のノンアルコールバーがトレンド

そんなムーブメントの中で広がりをみせているのが「モクテル」です。アルコールカクテルを模したノンアルコールカクテルの新しい呼び名です。お酒とも、ジュースとも違う新しいジャンルとして、海外はもちろん日本でもトレンドとなり、モクテルを提供するノンアルコールバーも続々とオープン。お酒が飲める人も飲めない人もドリンクを楽しめる場所として話題となっています。SNSやメディアなどで注目を集める店を紹介しましょう。

宇宙空間をイメージしたバー「0%」

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宇宙空間に漂うバーをコンセプトにしたノンアルコールバー「0%」は、見た目も香りも味わいも、全てにおいて新感覚のノンアルコールカクテルを用意。飲まなくても酔える、新しい体験を味わえます。フードは全てヴィーガン対応で、罪悪感を感じず、ジャンクフードを楽しめます。

ノンアルコールカクテル100種類以上を揃える
「Non Alcohol Bar」


京都に誕生した「Non Alcohol Bar」は、お城をイメージした店内で100種類以上のノンアルコールカクテルが楽しめるカフェバー。パスタやパフェなどフードメニューも充実し、未成年をはじめとした幅広い層が楽しめるカジュアルなお店です。

ノンアルコールはアルコールと横並びの市場に

新型コロナウイルスの流行による巣ごもり、SDGsなどの影響で、生活者の健康意識が高まるにつれ、伸長していくノンアルコール市場。市場の成長とともにノンアルコールは多様化し、一過性のトレンドではなく、嗜好品のひとつとしてポジションを獲得していく予感です。

それに伴い、今後食に関わる業界は、生活者のアルコールに対する考え方にも注視していく必要がありそうです。



writing support:Akira Fukui





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