![[蕎麦ワンダーランド]東京の老舗蕎麦屋おすすめ三選](/files/cache/647c683e3ea2e96ce38ff4eed0941f18_f1327.jpg)
食の偏愛コラム
[蕎麦ワンダーランド]東京の老舗蕎麦屋おすすめ三選
食や料理への「偏愛」を語ってもらうHolicClip。現役の蕎麦職人でもある「そば小僧」さんによる新連載コラムです。4回目となる今回は、そば小僧さんがおすすめする東京の老舗蕎麦屋を紹介していただきました。
前回の記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/4727/
蕎麦の季節になってきました
なんだか、肌寒い日が増えてきた今日この頃。「段々と暖かい蕎麦が食べたくなるなあ」
と思った皆さん、こんにちは、そば小僧です♪
少し気が早い気もしますが、「年越し蕎麦」に向けてこれから蕎麦の季節となっていきますね。また今の時期は「秋の新蕎麦」が旬でもありますので、「秋は旬の新蕎麦、そして冬は年越し蕎麦」の蕎麦三昧なんて、いかがでしょうか。
さて改めて、そば小僧は江戸時代から続く「更科堀井」で働いておりました「元小僧」です。最終的には蕎麦屋をやります!なのですが、料理の勉強をするため野に放たれている身分でございます。どうぞ末長くよろしくお願いいたします。
小僧はもちろん蕎麦屋巡りが大好きでございまして、よくふらりと蕎麦を食べに行きます。いろいろな蕎麦屋へ行くのですが、職業柄、老舗の蕎麦屋との思い出が多くあります。今回は、「そば小僧のここがおすすめ!東京の蕎麦屋(老舗編)」を思い出とともにご紹介したいと思います!
ガツン!と衝撃的だった「布恒更科」
最初にご紹介するのは、大森海岸にある「布恒更科」です。言わずと知れた名店でございます。品川駅から少し歩いた所にあるお店ですが、とても風情のある蕎麦屋です。布恒更科は「江戸三大蕎麦」である更科の系譜でもあるお店です。
「手打ち蕎麦」を広めたのも布恒更科であると、堀井社長からうかがったことがあります。「手打ち蕎麦」って昔からあるんじゃないのか?と思いますよね。
当然昔からありました。ですが生産性の観点から蕎麦用の機械が発明され、一時ほとんどの東京の蕎麦屋が機械打ちだったようです。当時ほとんど無くなっていた手打ち蕎麦を改めて探究し、手打ち蕎麦の隆盛に一役買ったのが布恒更科だそうです!
そして、大学を卒業したばかりの堀井社長が唯一修行に行ったのが布恒更科だそうです。もちろん今でも、更科堀井とも繋がりがあり、小僧もかわいがっていただいております。お相撲的なかわいがりではないですよ(笑)。
そんな布恒更科ですが、小僧が初めて訪れた時に食べた「変わり蕎麦」が今でも強烈に印象に残っています。「変わり蕎麦」とは、更科蕎麦に旬の食材を練り込んだ蕎麦です。時期により練り込まれる食材が変わる蕎麦ですが、小僧が食べたのは「よもぎ蕎麦」!
ビジュアルから濃ゆい蕎麦ですが、一口食べた瞬間に衝撃が走りました。最初の感想は…「これは畳(いぐさ)を食べているのだろうか?!」
とてもインパクトのある味が口の中を襲ってきました。もちろんよもぎのはずですし、畳を食べたことはないので、正確な表現かはわかりません(笑)。ただとても衝撃を受けました。と言うのも、更科堀井でも変わり蕎麦として「よもぎ蕎麦」を提供していました。しかし、印象としては全く違います。
更科堀井の蕎麦が、お殿様が食べるような上品な、ほのかな香りだとしたら、布恒更科は真逆でした。野武士が食べるような、無骨さを感じました。そう、とても良い意味で無骨です。布恒更科の変わり蕎麦は、ガツン!とした香りがします。更科堀井での変わり蕎麦にどっぷりと浸かっていた小僧には衝撃的な食体験でした。(ちなみに秘密ですが、小僧は布恒更科のガツンの方が好き♪)そんな布恒更科は、おつまみも多く、お値段も良心的でとても居心地の良い蕎麦屋です!
ご主人の小高さんは小僧の憧れ
「神田まつや」
出典:dancyu (https://dancyu.jp/read/2020_00003648.html)
小僧が初めて知ったのは学生時代。「情熱大陸」を見て「カッコいい〜!」と思いました。そう神田まつやのご主人、小高さんです。建物は東京都の有形文化財にも選定されている老舗蕎麦屋です。
なんと言っても、相席で座る「街の蕎麦屋」の雰囲気を残しながらも、歴史的建造物が醸し出す文化的な香りは格別です。小僧も生意気にもお邪魔することがよくありました。現在は生憎、コロナウィルスの影響もあり、しっかりと3密回避されております。多くの文化人が行きつけにしていた事でも、とても有名なお店ですね。
小高さんと堀井社長は、蕎麦屋の業界(木鉢会)で交流があります。以前、社長の付き添いで初めてご挨拶させて頂いた時はとても緊張しました。なんと言っても「情熱大陸」の人。しかも、テレビでは寡黙でちょっと怖そうな「the職人」。小僧はブルブルと震えておりましたが、お話してみたらとても気さくな方で、ホッとしたのを今でも覚えております。更科堀井にも何度も来てくださり、年始にお店に来ていただいた時にはお年玉もいただきました。(笑)
小僧が神田まつやを訪れたら、必ず注文するのは「焼鳥」です。焼き立てのプリップリの鳥に、蕎麦つゆベースのタレを絡めてあるスタイルです。ネギも一緒に添えてあるのですが、これがとっても美味しいのです。
「焼鳥」の調理詳細は、食と暮らしを豊かにする体験型メディア『dancyu』で以前取り上げられていますので、ぜひご参照ください。(https://dancyu.jp/read/2020_00003648.html)
ビールでも、日本酒でも、どちらにもこの濃厚なタレと絡めた「焼鳥」が合います。(はあ、お腹が減ってきました…)そして、ひと通りおつまみを楽しんだ後に蕎麦を頼みます。歴史を感じる蕎麦屋の中で、この一連の流れがたまりません。まさに贅沢です。
そして、神田まつやではご飯ものも提供しています。ご飯ものを提供している蕎麦屋は今では少なくなってきていると思いますが、懐の深さを感じます。「天丼・親子丼・カレー丼」全て蕎麦つゆをベースに調理されている丼には、やはり心惹かれますよね。
小僧はお米も大好きなので、毎回少しばかり悩み、結局蕎麦にすると言う流れもお決まりのパターンです。
蕎麦は手繰るもの「室町砂場」
出典:ヒトサラ(https://hitosara.com/0006042953/)
最後は「室町砂場」です! 砂場といえば、以前もご紹介した「江戸三大蕎麦」の系譜ですね。
室町砂場は日本橋と赤坂店があり、どちらも一度は訪れてほしい名店です。日本橋店には、店内に小さな日本庭園があり高級感漂い、赤坂砂場は数寄屋造りで雰囲気がとても良いです。
小僧が室町砂場を最初に知ったのは大学生時代。文芸評論家・小林秀雄の本を読んでいて室町砂場について知りました。本の内容は難しくてさっぱりでしたが(笑)、室町砂場で食べている写真と蕎麦についての食べ方について言及されており、それがとても印象に残っています。
著書の中で「蕎麦は手繰るもの」と言う趣旨のことを仰っていました。つまり、沢山蕎麦をすくって、もぐもぐではなく、数本だけ手繰るように蕎麦を取り、ほとんど噛まずに喉越し・香りを楽しむと言うことでした。小僧はこの文章に感銘を受け、「蕎麦は基本的には飲むように食べるのか」と学んだ記憶があります。
室町・赤坂の砂場に行った時のおすすめは、やはり「天ぷら蕎麦」ですね!天ざるの発祥と言われていて、既にお汁の中に入っているかき揚げが特徴的です。
出典:ヒトサラ(https://hitosara.com/0006042953/)
具材は小海老とあられが入っており、お汁の味が染み込んだ天ぷらを蕎麦と一緒に食べるとたまりません。お蕎麦も「ざる蕎麦」と「もり蕎麦」の2種類があり、こちらの「ざる蕎麦」は白い色が特徴です(蕎麦実の中心部分を使用しています)。ざる蕎麦の定義も諸説ありますが、砂場では、白い蕎麦が「ざる蕎麦」茶色が「もり蕎麦」と覚えてもらえば、わかりやすいと思います。
砂場関連で少し話がそれますが、小僧が好きな砂場の系譜のお店は他にもありまして、「巴町砂場」です。こちらのお店は2017年に惜しまれつつ閉店してしまったのですが、「とろろ蕎麦」の発祥として有名なお店でした。
更科堀井の「とろろ蕎麦」で使用している大和芋も巴町砂場から紹介してもらいました。また、巴町砂場の閉店の際には、多くの器を譲り受け、更科堀井の麻布十番のお店では巴町の器も一部使わせてもらっています。老舗の繋がりっていいですよね!
最後に
小僧の思い出とともに、おすすめを紹介しました!いかがだったでしょうか。
一番思い出のある更科堀井を混ぜようか悩みましたが、身内贔屓すぎるのでやめました。(笑)
今回は老舗蕎麦屋の紹介でしたが、老舗だけではなく、素敵な蕎麦屋が沢山あります。
皆さんもそれぞれの物差しで楽しみながら、蕎麦屋巡りをしてみてくださいね。
著者情報

- そば小僧
- 「江戸三大そば」とも言われる更科堀井で約5年間修行。厨房で料理を作る傍ら、SNS運営、通販サイトの立ち上げと、何でも屋の小僧です。「日本の伝統」がとても好き♪ Twitterも是非ご覧ください。https://twitter.com/sobakozoo