withコロナの食変化とマーケティングのあり方とは

withコロナの食変化とマーケティングのあり方とは

2020年10月23日、今年で3回目となる当社主催イベント「Food Marketing Forum Online」を開催。今回は昨今の状況を鑑み、初のオンライン配信という新しいスタイルでの実施となりました。

プログラム概要

●主催者挨拶

●オープニング基調講演:
株式会社Mizkan 様
「withコロナにおける食の変化とマーケティングのあり方」

●パネルディスカッション:
① エバラ食品工業株式会社 様 & キッコーマン株式会社 様
「食品製造メーカーにおけるデジタル推進の展望とコロナ禍における課題」

② カゴメ株式会社 様 & 日本水産株式会社 様
「コロナ禍における販売促進活動の現状と課題」

③ 旭化成株式会社 様 & 味の素株式会社 様 
「コロナは商機か!withコロナにおける消費者接点とは」

●アンケート回答、クックパッドよりサービス・新たな取り組みのお知らせ

●Zoomによる個別相談会(希望者のみ)


2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、私たちの生活様式、購買行動は大きく変化しました。今回の「Food Marketing Forum」では、「これからの食卓」を業界全体で考えていくことを目的に、今だからこそ必要な生活者とのコミュニケーションとマーケティング戦略について、メーカーご担当者さま数名に登壇いただき、オープニング基調講演をはじめ、各テーマによるパネルディスカッションを実施いたしました。

FoodClipでは、各プログラムごとの内容を全4回にわたって順次ご紹介していきます。今回はその第1弾として、オープニング基調講演の内容をレポートいたします。

※ご登壇者の所属、役職は2020年10月時点のものです。

オープニング基調講演:withコロナにおける
食の変化とマーケティングのあり方

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コロナ禍による食と生活者の変化

このコロナ禍において、自社のマーケティング戦略を考える上で、さまざまな環境認識のオープンデータを参考にされていると思います。我々もさまざまなオープンデータとなっているフレームワークを利用して「コロナによる食の変化と機会とリスク」について、次のようにまとめました。

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生活者の大きな潮流の変化として、健康予防意識、特に免疫については非常に強くなり、安全安心志向が高まっています。それによって、イエナカ、家族志向が改めて強まり、新しい家族団らんの形が始まるだろうと。

そうした中で、当社にとっての機会とリスクとは、健康ニーズの多様化によって生活者の知識が増えて複雑化していくこと、さらにそれによって明確なエビデンスが必要になってくるということです。また、買い物行動の変化として、GDPが下がってくると低価格化=PBシフトが起きるということ。小売店の間でも価格競争が起きる、購買チャネルの変化といったことが挙げられます。

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ただ、ここまではある程度どなたも整理されていると思いますので、我々は新たに「一辺倒の終焉」という形でサマライズしました。朝お弁当を作って出勤するとか、仕事一辺倒といったこれまでの当たり前が、当たり前ではなくなったということです。

そのため、自分や家族は自分たちで守っていくという脱依存・自立気運が高まっていくので、マスマーケティングの工夫が必要ということを導き出しました。


生活者の変化と気づき「ライフステージ」

そのうえで、生活者の変化と気づきについて「ライフステージ」「タッチポイント・コミュニケーション」「メニューローテーション・想い出づくり」の3つのポイントを挙げました。

「ライフステージ」とは、コロナによって大きく変化するライフステージはどこかということ。節目節目で、食に向き合う意識や行動は大きく変わります。働き方・学び方などが大きく変わるところはブルーオーシャンが生まれるので、そこにマーケティングコストをかけていくことにしました。

また、「この先の人生にブランドとして寄り添えるタイミング」を考える必要があります。コロナは非常に厳しい状況ではありますが、間違いなく人生で記憶に残る期間です。そこに食品メーカーがどう寄り添っていけるかが、企業イメージを深く刺せるタイミングになると考えています。

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ここに挙げているのは、既存店ベースで前年を超えている企業さまです。(2020年9月時点)
そのキーファクターは「子ども」「単身」です。子どもは3食ずっと家の食事というのも飽きてしまいますし、単身の場合も中食が増えたといっても、ずっとというわけにはいかない。このように直近でみても、影響があると考えています。


タッチポイント・コミュニケーションについて

これは、購買チャネルの変化、購買行動の変化、店舗展開の変化といったところです。今は特に、店頭で付加価値を提案することが難しくなっています。そこをどう伝えるか。さらに、生活者が抱えるより強いJOB・ニーズに引っ掛けることが重要です。

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購買の前手で、いかに需要喚起に繋げる情報を深く刺すか。これは我々も答えが見えていませんが、新しい商品・新しいメニューの認知をどう取っていくかが課題です。

例えば、「お鍋に合うお酒」ではなく「レモンサワーが旨いお鍋」といったように、これまでとは主役を変えてメッセージを伝えていくのもひとつだと考えています。


メニューローテーション・想い出づくり

コロナ禍の4・5月、当社「味ぽん」で広告の投下量を集中的に増やした2つが「鶏のさっぱり煮」と「餃子」です。

今まで、「味ぽん」では必ず「さっぱり」というクリエイティブを入れていました。それをやめて、とにかくシンプルでわかりやすい「おいしさ」と「シズル感」、「子どもの笑顔」に特化しました。

クックパッドの「たべみる」のデータでは、コロナ禍で内食が増えた「ピザ」「たこ焼き」などのメニューについては、一時的に上がり、その後かなり下がっています。それに比べ、「さっぱり煮」は安定して歩留まりも上がっており、日々のメニューローテーションに加わったことを実感しました。

また、「想い出をつくる」部分にマーケティングコストをかけ、「食卓に味ぽんというブランドを見せる機会を徹底的につくる」ということをおこないました。
結果についてはまだ出ていませんが、うまくいくのではないかと思っています。


食品業界が目指す、これから大切なこと

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食を通じて世の中をより良くしていくために、我々が何をすべきか。私は「食を通じて孤独を減らす」「生活そのものを豊かにする」ことがマーケティングの基本だと思っています。

食は3世代、世代を超えたコミュニケ―ションの場です。そして、食や食卓は人生のジャーニーに深く刻まれるものでもあります。誕生日の食卓や新婚当時の熱量の高い料理、そういった原体験がとても大事で、ジャーニーにリンクすると感じています。

そのため、このコロナの時期だからこそ、時代を紡ぐブランディングが必要であり、豊かさのきっかけになるのではないでしょうか。

食を通じて世の中を豊かにすることは、なかなか一企業だけではできません。まさにオープンイノベーション、皆さんと一緒に共同のマーケティングをしていきたい、そのように思っています。

質問セッション

クックパッド株式会社
マーケティングソリューション事業部
事業開発室 室長 
齋藤 貴生

クックパッド齋藤からMizkan佐藤さまへの質問セッションを開始するにあたり、コロナ最前線であった直近2〜3月の消費者変化について、あらためて以下の要点をご説明をいたしました。

・家で催事を楽しむという志向がまだまだ強い
・シニアの方ほど、家で楽しむ手仕事系を求めている
・外食控えがあり、家で食べるための高価格帯の食材が伸びている
・キャズムの時間軸が大幅に短縮された


齋藤:先ほど、生活者の健康ニーズが多様化(複雑化)していくということでしたが、どこまで複雑化していって、それに対してはどう対応していこうとお考えですか?

佐藤:コロナの中で、生活者の方が疫学的な考えに立ち返っていると思うんです。例えば、健康ドリンクを飲んでその場ですぐに元気になる不自然さや身体への無理、また実は食物繊維は身体によくないという見解など…色々な場で色々な学び方をされ、SNSなどで拡散されています。

ですから、「生活者の方と我々が一緒になって活動していること自体をローンチする」ことが打ち手になると考えています。

機能に合わせて研究するのももちろんですが、それ以外に「コト化」に近い健康ニーズの取り方が必要です。人生100年的な「その場の危機感より先々への不安」への健康ニーズにあわせて、「減塩」などシンプルにわかりやすいものが求められてくると思います。

齋藤:コト化に近い健康ニーズについて、着目されているポイントはありますか?

佐藤:一番は免疫ですね。あとはダイエット、糖質オフ、プロテイン。特に植物性たんぱく質は、今後、中長期的に大きくなってくるニーズだと思っています。納豆も言い換えれば大豆プロテインです。実際にはここまでは言わないですが、こうしたコミュニケーションの工夫、ポジショニングを変えることで、新しいニーズに応えていく必要があると思っています。

齋藤:節約・経済性重視志向による汎用価値の高まりが期待される一方、PBシフトへの懸念、対策についてはどうお考えですか?

佐藤:これは私も教えて欲しいくらいですが、「NBだからできること」を考えるというのが全てかと思います。

一つは、コミュニケーションによる付加価値、つまり情緒的価値を感じてもらって見せ方を変えていくこと。もう一つは、新しいポジショニングを取って新規カテゴリーをチャレンジし続けるしかないと思います。

齋藤:現在、店頭での施策ができない状況ですが、新しい商品やメニューの認知をどう取っていけばよいとお考えですか?

佐藤:これは「やれたらいいな」というレベルのことですが、ローンチのタイミングをいかに早くするかに尽きると思っています。

即食系については、マス+店頭でも効果があります。最近は「マスからデジタル」と言われていますが、若い方もマスに反応するという点も驚きましたね。広告もまだまだ通用するので、クリエイティブの見せ方、またカテゴリーによって広告を変えていくことが必要です。

齋藤:一時期は、マスとデジタルの比較ばかりされていましたが、最近ではそれぞれをいかに有効的に使うかと言われていますよね。

佐藤:調味料とデジタルのコミュニケーションは「料理をする」行為と「食べる」行為とプロセスがあるので、難しいと感じています。そのため、調味料に関しては、食べてみたいという欲求を強いシズルでいかに押すか、楽しさなどの情緒価値をどう組み込むかが、マスの工夫だと思います。

そして、自分も作ってみたい、やってみたいという態度変容を後押しするには、メーカーでなく、生活者である第三者に発信してもらうことが大事で、そこにはデジタルコミュニケーションが必須だと考えています。

齋藤:時代をつなぐブランディングとしてメーカーがやるべき事とは何でしょうか?

佐藤:私は「メーカーがやるべき事」という発想自体をしたらダメではないかと思っています。メーカーにいると「ブランドを作ろう」としてしまいますが、ブランドの定義とは、生活者の方が頭の中で作り上げた結果です。10年後20年後、親御さんになっていただけるであろうお子さんに、いかにして食卓をイメージしてもらえるシーンを作ることではないかと思います。

齋藤:最後の質問の前に、コロナのデータのお話など、他に今気になっていることなどはありますか?

佐藤:キャズムの壁については気になっています。コロナだからとキャズムの壁を超える変化はないのではと思っているので、クックパッドのユーザーの質が変わっているのではないかという疑問です。

あとは、キャズムの壁を超えた後、定着するポテンシャルについてどう見ればよいのかについてご教示いただきたいです。

齋藤:確かに、コロナだからとキャズムの壁を簡単には超えられないと思いますが、ユーザーが情報を取る感度は変わってきたと感じています。

これまでの情報は「自分にとって必要かそうでないか」、流行りのものについては「トレンド感度が高い方は反応し、それ以外の方はされない」状況でした。

ただ、コロナによって多くの人に「色んなものにチャレンジしたい」というマインドの変化があったと思います。定着のポテンシャルについては、外食のトレンドインの考え方が参考になります。

例えば、韓国系のメニューがトレンドインして普及する時のタイミングでは、焼肉のタレが使われます。いかに簡単に再現ができて、子どもが食べてくれるかというのが定着するポイントになるのです。調理が難しい、面倒くさいとなると、トレンドは一気に終わっていくと思います。

最後にクックパッドに期待することを教えてください。

佐藤:まさに、今のような「答え」をいただきたいですね。生活者の方のメニューのトレンドの兆しやポテンシャルについて、ビッグデータを活用して客観的かつお安いサービスで提供し続けてくだされば幸いです。

齋藤:佐藤さん、基調講演ならびに質問セッションと本日はありがとうございました!

次回は

次回のレポートは、エバラ食品工業株式会社とキッコーマン株式会社による、パネルディスカッション「食品製造メーカーにおけるデジタル推進の展望とコロナ渦における課題」の内容をご紹介いたします。



writing support:Miyuki Yajima





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