[お茶の話しと、私たち]日本茶業の礎、和紅茶とは?

[お茶の話しと、私たち]日本茶業の礎、和紅茶とは?

食や料理への「偏愛」を語ってもらうHolicClip。日本茶インストラクターで、株式会社 茶淹の代表取締役でもある伊藤尚哉さんの連載[お茶の話しと、私たち]。今回は日本国内で栽培・製茶される紅茶のお話しです。

前回の記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/4770/

はじめに

先日、岐阜県東白川村で「和紅茶」を生産している茶農家さんに茶畑を案内していただきました。その茶農家さんは、以前は「緑茶」の生産に携わっていましたが、ある年に和紅茶作りにチャレンジしたのをきっかけに本格的に和紅茶の生産を始めて、今では全国の品評会でも高い評価を獲得しています。

「なんで和紅茶作りに熱を入れるようになったのですか?」と尋ねると、「純粋に面白いと感じたし、何よりここ(東白川村)で和紅茶を作っている人がいなかったから…」と答えてくれました。

周りに和紅茶の生産者がいないということは、ノウハウが充分に蓄積されていないということです。そんな環境でも情熱の赴くままに和紅茶作りを続けてきた、生産者のチャレンジ精神と熱意が、この産地の和紅茶の産業を支えているのだと感じ、もっと多くの方にその魅力を丁寧に届けていかなければ、と思いました。

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日本茶というと緑茶のイメージが強く「日本って紅茶も作っていたの?」と思われる方も多いかもしれません。実は紅茶生産の歴史は古く、明治時代から、静岡県を中心に輸出用としても紅茶作りが盛んにおこなわれてきました。

紅茶の輸入自由化などで一時期生産量は激減しましたが、2000年代以降、さまざまな産地で和紅茶が作られるようになり、以前ほどではないものの生産量も上昇基調にあります。

近年では、「ジャパン・ティーフェスティバル」や「地紅茶サミット」と言った、和紅茶に関する大きなイベントが、日本各所で開催されるまでになりました。

ちなみに、2019年の地紅茶サミット資料「全国地紅茶マップ2019」によると、現在日本では、45都府県769ヶ所で地紅茶(和紅茶)が生産されています。

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「和紅茶」ってなに?〜和紅茶の歴史〜

「和紅茶」って何?普通の紅茶と何が違うの?と思われる方も多いと思います。
「地紅茶」や「国産紅茶」など、さまざまな呼称が存在しますが、基本的には日本国内で栽培・製茶された紅茶の総称のことを「和紅茶」と言います。

「紅茶」と聞くと、ダージリンやセイロンといった外国産のお茶のイメージが強いかと思いますが、実は、日本でも古くから和紅茶の生産はおこなわれていて、明治初期から中期においては、生糸と並び日本の主要な輸出作物だったのです。

世界的にも紅茶の需要が高かったことから、政府も茶業振興を図っていました。そこで、静岡でお茶栽培をしていた多田元吉を、インドのアッサム、ダージリン、スリランカ、中国などへ派遣しました。

紅茶の本場で栽培や製造を約2年間学び、品種改良など多岐にわたる紅茶製造の技術を日本にもたらし、明治14年(1881年)に日本で初めて和紅茶の生産を静岡の丸子(まりこ)にて始めました。

また、多田元吉が日本に持ち帰った技術は紅茶だけでなく、緑茶の品種改良や有機栽培、製茶器具の発明、技術者の育成などにも活かされ、まさに現代の日本茶業の発展の基礎を築いたといっても過言ではありません。

渋みが少ない和紅茶はストレートがおすすめ

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お茶の樹の品種は「中国種」と「アッサム種」の2つに大別されます。日本のお茶の樹は「中国種」ですが、インドやスリランカのお茶の大半は「アッサム種」です。

アッサム種は、中国種に比べて渋み成分のタンニン含有量が多く、発酵する力も強いので味や香りが強くなります。それと比較して、中国種で作られる和紅茶は、タンニンの含有量が少なく、ほのかに緑茶の風味が感じられるような爽やかな甘みと、すっきりとした後味のものが多いです。ですので、普段からミルクティーで飲むことが多い方も、砂糖は加えず先ずはストレートで、華やかな香りとクリアな甘みをお楽しみいただきたいです。

おすすめの和紅茶

和紅茶も緑茶と同じように、産地や品種によってさまざまな個性があります。最後に、全国各地のおすすめの和紅茶を、茶葉(リーフタイプ)とティーバッグタイプそれぞれご紹介します。


【カネトウ三浦園】
静岡県の島田市のカネトウ三浦園さんは、和紅茶だけでなく緑茶の品評会においても数々の受賞歴を持っています。

「奏紅」は、「べにふうき」という和紅茶の代表的な品種で作られています。
春の新芽のみを丁寧に手摘みした「奏紅」は、雑味が一切なく繊細で優しい甘みの和紅茶で、ほのかに果実味を感じられる味わいです。

【茶葉】 奏紅(そうべに) ~ 春摘み(ファースト・フラッシュ)
https://tea-miuraen.jp/?pid=145900589


【中窪製茶園】
京都唯一の村、南山城村の中窪製茶園さんの「さえあかり」は、渋みが一切なく、華やかな香りと清涼感のあるクリアな後味が特徴。
渋みは少ないですが、しっかりとした甘みも感じられるので、紅茶特有の渋みが苦手な方にもおすすめです!

【茶葉】「さえあかり」(ファーストフラッシュ 2020年春摘み)
https://www.seichaen.com/SHOP/n106.html


【平岡園】
埼玉県所沢市の平岡園さんの「三富紅茶」は、渋みが少なくやわらかい甘みの「はるみどり」「ほくめい」、フローラルな香りが特徴の「むさしかおり」の3種類の品種がブレンドされているティーバッグタイプの和紅茶です。
ほのかに柑橘系の香りも感じられる「三富紅茶」は、少し個性的な味わいなので、普段からよく紅茶を飲まれる方は、今お手持ちの紅茶との飲み比べをしてもお楽しみいただけると思います。

【ティーバッグ】「三富紅茶」
https://hiraokaen.com/index.php?main_page=product_info&cPath=59&products_id=136


【グリーンエイト】
「静7132(しずなないちさんに)」という少し変わった名前の品種で作られた和紅茶「マイルド」は、静岡県清水区の両河内(りょうごうち)で作られています。

渋みは少なく飲みやすい印象ですが、しっかりとしたうま味が感じられて飲みごたえのある味わい。品種の大きな特徴でもある華やかな香りも存分に楽しめます。

【ティーバッグ】和紅茶「マイルド」
https://wadashima.shop-pro.jp/?pid=119372879


【美濃加茂茶舗】
美濃加茂茶舗の和紅茶は、東白川村で栽培された紅茶用品種「べにふうき」、日本茶の代表品種「やぶきた」、華やかな香りが特徴の品種「香駿(こうしゅん)」の3品種をブレンドし、スッキリとした甘味と華やかな香りに仕上げています。

※「和紅茶(ティーバッグ)」は、秋冬限定の商品になります。

【ティーバッグ】美濃加茂茶舗 和紅茶(ティーバッグ)
https://minocamo-chaho.shop/items/5e9d9006cee9ea3ffe290ecc

 





著者プロフィール

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伊藤尚哉
株式会社 茶淹 代表取締役

1991年愛知県出身。24歳のときに日本茶のおいしさに魅了され、2016年から名古屋の日本茶専門店・茶問屋に勤務。
2018年日本茶インストラクターの資格を取得(認定番号19-4318)愛知県支部役員
2019年日本茶ブランド「美濃加茂茶舗」の立ち上げに参画、店長に就任。
2020年美濃加茂茶舗を運営する「株式会社 茶淹(ちゃえん)」を設立。