
グローサリー
食の未来予測を ”ホールフーズ2020”から読み取る
みなさんは3年後にどのような食志向が一般化され、どんな食材のニーズが高まっているか想像がつきますか? そのヒントは環境意識や食嗜好が多様化されている諸外国から見つけることができます。
今回FoodClipでは「ホールフーズの2020年食トレンド予測」を忠実に翻訳。また日本市場で馴染みのないキーワードを丁寧に補足しました。
数ヶ月または数年後には日本でも主流になっている可能性が高い食品ばかり。ぜひこの機会に注目してみてください。
2020年の食のビッグトレンドは何でしょうか。
私たちホールフーズは、トレンド予測者に次に何が来るのかを聞いてみました。聞いたのは料理専門家、グローバルオフィスのバイヤー、490店舗の商品や消費者の嗜好を熟知しているスタッフなどです。彼らの話をじっくりと聞きました。
私たちは昨年2019年のトレンド予測リストに載ったものたちが減速することなく、むしろそれらの新しいフレバーや関連商品が増えてきていることを店舗の商品棚で日々確認しています。
さぁ、これらが2020年の注目すべきものたちです。
1. 「再生農業」
土壌の質を上げることでCo2の排出抑制に。
長期的な環境利益を目指す
農家、生産者、学者、政府機関、小売業者などは土地と動物の管理を通して土壌の質を上げ、二酸化炭素の排出を抑制することに注目しています。「再生農業」には多くの定義がありますが、一般的には耕作に使用された土地の復元、生態系の改善や保護、二酸化炭素の回収を実現しながら、気候変動にプラスの影響を与える長期的な環境利益を生み出す農業のことを表します。再生農業を実践するブランドや商品を求めることで、この取り組みを支援することができます。
2.「小麦粉の代替品」
果物やバナナが小麦粉の代替に。
スーパーフードが小麦粉市場に切り込んでいく
新しい魅力的な材料が、小麦粉市場にも参入しています。
その結果としてベテランのパン職人もアマチュアのパン職人も新しい材料で何を作ろうかとウズウズし始め、パン作りがより一層面白くクリエイティブになっているようです。
新しいもの好きの消費者は、エチオピア伝統料理のインジェラ(※)に使われているテフ(※)のような、これまで馴染みのなかった粉に関心を寄せています。
2020年はより一層、果物や野菜の粉(例えばバナナ!)が小麦粉の代替となり、それらを使った商品が加工商品棚に並ぶのではなく、粉の状態のまま小麦粉の商品棚に並べられ、各家庭へと持ち込まれていくことでしょう。
(※)インジェラ:イネ科の穀物 テフを水で溶いてクレープ状に焼いたエチオピアの主食。
(※)テフ:世界最小の穀物と言われ、栄養価が非常に高くスーパーフードとしても注目されている。
消費者向けの商品トレンドとして、これまで小麦粉で作られていたチップスやスナック菓子がスーパーフードのタイガーナッツで作られ、植物の種とブレンドした粉でペストリーが作られていくことでしょう。小麦の代替品が注目されていく中で、タンパク質や食物繊維がより多く摂取できるスーパーフードを原料とするものがトレンドになっていきます。
さあ、新しい冒険を始めましょう!
3.「西アフリカ料理」
中東や西ヨーロッパの影響を受けた独自の食文化。
ソルガムやフォ二オなど豊かなスーパーフードの品々
先住民族が食してきたスーパーフードから素朴で豊かな料理に至るまで、あらゆる場面で西アフリカ料理や飲み物が注目されています。西アフリカ料理はトマト、玉ねぎ、唐辛子がベースとなり、そこにピーナッツや生姜、レモングラスなどが加えられています。
16の国からなる西アフリカはそれぞれの料理にいくつか共通する部分もありますが、中東や西ヨーロッパの影響をそれぞれに受け独自の食文化を構築しています。多くの食品メーカーは西アフリカのモリンガ、タマリンド、まだあまり知られていない穀物ソルガム(※)、フォニオ(※)、テフ、キビなどにも注目しています。
セネガル生まれで数々の受賞歴を持つニューヨークの人気シェフであるピエール・ティアム氏も西アフリカ料理を推奨しています。NY、ハーレムにある同氏の新しいレストランは料理を通じてアフリカ文化を伝えようとしています。
(※)ソルガム:イネ科の穀物、茎を粉砕し抽出をしたジュースを過熱させ余分な水分を飛ばすことでシロップになる。
(※)フォニオ:西アフリカ諸国で5,000年以上も前から栽培されているイネ科の古代穀物。栄養価が高く、繊維質、鉄分、タンパク質を豊富に含む。
4.「冷蔵スナック(おやつ)」
おやつにイノベーションの風。
エナジーバーまでも野菜や果実で作られる
人生のペースは落ちないのに、スナックの選択肢は急速に増えています。
出かける際に持ち歩くおやつの新しいキーワードは、まさに「フレッシュさ」です。これまで外出時に人気のスナック菓子だったグラノーラバーや袋入りプレッツェルというのは、もはや過去のものなのです。
今や冷蔵コーナーにはフレッシュで手軽に食べられる、自宅で準備してきたようなスナックが溢れています。
例えば、食欲をそそるトッピングがのった固た茹で卵と、ピクルス、スープ、ディップが一人分ぴったりな量にパック詰めされています。エナジーバー(栄養バー)さえもフレッシュな野菜や果物が使われ、これまでの売り場から冷蔵売り場へと移ってきています。このスナックに起こったイノベーションは、使われる原材料の種類を減らし、気持ち良く体にも良いものを選ぶことが可能になったことを意味しています。
5. 「大豆以外の植物性タンパク質商品」
緑豆、アボカド、クロレラ。
タンパク質パウダーとなってビーガン市場に参入か
豆腐スクランブル(※)はビーガンの朝食メニューとして定番でしたが、2020年はこれまで植物性タンパク質で絶対的存在であった大豆がトレンドから離れていく年になると考えられています。
いくつかの商品は「大豆不使用」を謳いながら植物(例えば穀物や緑豆)を革新的にブレンドし、ヨーグルトや乳製品のクリーミーさを模した新しい商品として大豆由来商品に取って代わることが考えられます。
また、サプリメント売り場では、大豆の代わりに緑豆やヘンプシード、かぼちゃ、アボカド、スイカの種やゴールデンクロレラ(※)を使用することで、ビーガン用タンパク質パウダーの滑らかな質感を出していくとともに植物由来のアミノ酸源の選択肢が広がってきています。
フレキシタリアンによって植物由来食品のブームは牽引され、各ブランドはできる限り主要アレルゲン食材(※)を避けながら植物由来の加工品(特に肉の代替品)の開発や大豆不使用の商品の開発に力を注いでいます。
(※)ゴールデンクロレラ:藻類のクロレラを原料にしたプロテインパウダーの商品名、成分の63%がタンパク質でその他食物繊維、ビタミン、ミネラル、アミノ酸が豊富に含まれる。
(※)アレルゲン食材:食物アレルギーを引き起こしうる食材。米国FDA(医薬品局)による主要8品目は牛乳、卵、ツリーナッツ(アーモンド、カシューナッツ、松の実、クルミなど)、ピーナッツ、甲殻類、小麦、大豆、魚。
6.「植物性バターやスプレッド」
ナッツがバターのように楽しめる時代到来?
ストレスフリーなダイエット食材たち
ナッツがバターのように楽しめるようになると思いますか?
2020年にはそれが起こりそうです。
タヒニ(※)のようにスイカの種でできたペーストやかぼちゃの種を使ったペーストがバターのように楽しめるようになることを想像してみてください。
カシューナッツ、アーモンド、ピーナッツ(こんにちは、マカデミア)、ひよこ豆さえもバターのようになってしまうでしょう。
トーストやクラッカー、ベーグル、セロリスティックにぴったりで、クリーミーかつピリナッツ(※)のようなスーパーフード由来のスプレッドの登場が期待されています。このバターやスプレッドのトレンドはパレオ(※)やケト(※)ダイエットを後押ししています。
しかし、このトレンドにおいて原材料の透明性も非常に重要な要素です。多くのブランドはパームオイルの使用を避けることや、環境に優しい方法で栽培されたナッツを使用した商品の開発を模索しています。
(※)タヒニ:地中海、また中東で食べられているゴマのペースト。
(※)ピリナッツ:ピリという熱帯性樹木から採れる木の実。不飽和脂肪酸・タンパク質・8種の必須アミノ酸などが豊富に含まれた栄養バランスに優れたスーパーナッツ。
(※)パレオ:旧石器時代の食生活を理想とする考え方。農耕、牧畜、食品加工技術がなかった時代の食事、つまり季節の野菜や果物、肉・魚、ナッツ、シード類から栄養を取り入れることを基本とし、精製された塩や砂糖もNGのため調味料には岩塩やハーブ、スパイスが使用され、できるかぎり自然に近いものを取り入れる食事法。
(※)ケト:十分な量のタンパク質と脂肪を摂取し、可能な限り炭水化物を減らす食事法。体を動かすためのエネルギー源として、炭水化物ではなく脂肪を使う代謝「ケトーシス」の状態を作るダイエット法。
7.「キッズメニューの再考」
グルメな子どもたちがターゲット。
キッズメニューの再構築が始まる
グルメな子どもが増えていると思いませんか?
テレビで子ども料理コンテストの数が増えていることからも、子どもがかつてないほどに料理に精通していることがわかります。
2026年は80%のミレニアム世代が子どもを持ち、たくさんの親が”新しい食事”を子どもにあたえることになるでしょう。(ホールフーズの寿司コーナーのカウンター席で親と一緒に寿司を楽しむ姿は非常によく見る光景となっています。)多くの食品ブランドは次世代の子どもたち、真の食通のためにより体に良い食材を定番メニューに使うなどして、メニューを改善していくことに注意を払っています。
多くの食品ブランドは昔からの定番子どもメニューと、近年の子どもたちの洗練された味覚とのギャップを埋めることに考慮しています。
例えば、パン粉をまぶさないサーモンスティックフライ。
発酵され、スパイスで味つけられ、旨味がたっぷりなメニュー。様々な代替小麦で作られたカラフルで面白い形のパスタ。もしかしたら大人がキッズメニューから多くの気づきを得るようになってきたのかもしれません。
8.「砂糖以外の甘味料」
ココナッツやデーツ、
フルーツの根菜から抽出した”スワブ”にも注目
確かに、つねに暮らしの中には砂糖があります。
砂糖、ステビア、はちみつ、メープルシロップ以外にも料理、パン・お菓子作り、紅茶、コーヒーの甘味料の選択肢があります。肉料理のつや出しやマリネ作りに加える際には羅漢果、ざくろ、ココナッツやデーツを甘味料として使うのも一つの手です。ソルガム(高キビ)やさつまいもから作ったシロップは糖蜜や蜂蜜のような深い味わいがあり、パン・お菓子作りや飲料の甘味料として使うことができます。ゼロカロリー飲料の甘味料になるスワブ(※)は、エリストール(※)とフルーツや根菜のデンプンとを組み合わせて作る粒状の甘味料です。
(※)エリストール:ブドウ糖を原料に発酵させることにより作られる天然由来のゼロカロリー甘味料。
9.「肉と植物性食品のブレンド」
2020年の食肉メーカーは「植物由来の代替肉」のトレンドに乗っていくことでしょう。
全米の多くのシェフはジェームス・ビアード財団の「ブレンデッド・バーガー・プロジェクト」(ハンバーガーのパティの25%に生のキノコを使うことで顧客にとっても環境にとっても良いものを作ろうとする活動)のトレンドの波に乗っています。健康志向なシェフはミートボールやハンバーガーの材料に植物由来食品を混ぜることでボーナスの加算となっています。(それはコストの削減になっているからです!)
代替肉のメジャーなブランドのアップルゲート(Applegate)は、伝統的なビーフハンバーガーの材料30%を植物由来食品に代替すれば摂取する脂肪分とコレステロールを減らせると謳った場合に、消費者はそちらを選ぶのかどうかを見ています。(Applegateのサイトで栄養の比較をご覧ください!)また他のブランドもこれに注目をしています。
75%の牛挽肉、25%のリカ・プラス(※)をブレンドして作られたリカ・プラス・バーガー(Lika Plus Burger)は米国の南西部のホールフーズの店頭に並んでいます。肉と植物由来食品の美味しいバランスを求めるフレキシタリアンは、今後さらに多くの肉と植物由来食品のブレンド商品に期待しています。
10.「ノンアルコール飲料」
拡大するノンアルコール市場。
植物性のスピリッツを煎じた炭酸水
多くの消費者はアルコールの代替品を探しています。
ノンアルコール飲料の選択肢は世界的に評価の高いバーや専門店で増えています。ノンアルコール飲料は、アルコールに使われている通常の蒸留方法を利用してクラシックカクテルの風味を再現しようとし、リキュールの代替として使われ、それだけでは飲まず割り材として楽しまれています。ジントニック用のジン代替飲料、植物性のスピリッツ代替でマティーニ。ホップを煎じた炭酸水やノンアルコールアペリティフのボトルや缶入りは選択肢の一つとして加えられ、バーを避けていた人々も退屈しないでしょう。
(※)ホールフーズの店頭・商品画像は、執筆者が店舗に了承をもらって撮影しています。
著者情報

- 倉中真梨子
- 夫の渡米に帯同して、2019年7月より当時0歳の息子を連れて人生2度目の米国生活スタート。美味しいものと体に良いものが好きな食いしんぼう母さんです。
米国生活は通算16年目に突入。現在ピッツバーグ在住時々LA。