会員制レストランはなぜ成り立つのか?その経営の仕組み

会員制レストランはなぜ成り立つのか?その経営の仕組み

高級、秘密、一流経営者や政治家、芸能人がお忍びで利用するようなイメージの強い「会員制レストラン」。最近では、インターネット上で不特定多数の人に呼びかけ資金を集めるクラウドファウンディング型の会員制レストランも増えており、若者を中心とした幅広い層に支持されています。

会員制レストランとは

会員制レストランとは、入会費や年会費などを支払ったり、ある一定の条件を満たし会員となった限られた人だけが行くことができるお店のことです。

ユーザー側はプライバシーが守られる、一流のサービスが受けられる、滅多に食べられないものが食べられるなど、会員ならではの特典を受けられるメリットがあります。一方、企業やレストラン側にとっても、安定収入や広告費の削減など、さまざまなメリットがあります。

なぜ会員制レストランは成り立つのか

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会員制レストランの多くは、派手な広告宣伝をすることなく安定的な売上を維持し、顧客からも支持されています。会員制=客数を制限することになるため、一見すると売上に制限をかけてしまうように思えますが、むしろ収益は安定し、顧客の質を高めることに繋がるのです。では、どのように成り立っているのでしょうか?


安定的に収益が確保できる

会員制レストランは、収入の予測が立てやすく、安定的に収益が確保できます。会員制ビジネスと通常のビジネスの大きな違いは、収益の安定性です。

飲食店は、天候や時事的な影響によって客足が大きく変動します。そのため、売上の予測が立てづらく、常に一定の集客をキープして収益を確保するのは簡単ではありません。会員制レストランの場合、ユーザーは年額または月額などで会費を支払います。加えて、飲食する度に代金を支払う所もあれば、店舗によって定額制という料金体系を取り入れているところもあります。そうすることで、安定的な収益が見込めるのです。


顧客の質が高い

会員制レストランは、自分の店を気に入ってくれる人だけが来店するため純粋に顧客の質が高くなります。

会員制にすることで、客層はそのお店の味やサービスを気に入っている、お店のファンに絞られます。お店のことを良く知らない、ニーズや好みが合わない人が来ることはほぼありません。また、お店によっては、入会にも「紹介制」というスタイルを取っているため、紹介する側も人を選びます。紹介された側も、紹介者の顔を立てる必要があるので下手なことは出来ません。顧客同士で、すでに信頼関係が成り立っている人だけが集まることになるのです。

さらに、会員データが集められるので、お店としては顧客の趣向や、誕生日や記念日に合わせたサービスが提供できるようになります。そうした細やかで質の高いサービスを提供することで、顧客の満足度も高めることができます。


客単価が上がる

会員制を導入することで、食への意識が高い人が集まるため、客単価が上がりやすくなります。
会員制レストランに来るのは、経営者や高所得者など、社会的ステ-タスが比較的高い人たちです。あわせて、食に対する意識が高く、こだわりのある人も多いので、多少高くてもいいものを食べたいという嗜好も強いのです。

また、会員制レストランではコースメニューで設定されることが多いため、お店としても客単価を上げやすくなります。

会員制レストランで解決できる
飲食店最大の悩み

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会員制レストランにすることで、飲食店が抱えるさまざまな問題を解決することができます。


無断キャンセルが抑えられる

もっとも大きいのは、会員制の導入で、無断キャンセルを抑えられるということです。昨今、メディアでも大きく取り上げられますが、飲食店にとってドタキャンは死活問題。予約人数に合わせて食材や人員を準備していても、急遽キャンセルになってその分の人数が来店しなければ、すべて廃棄するしかありません。経営面でも大きなダメージです。

会員制レストランでは、顧客側も自分の情報がお店に伝わっているため、そのような非常識な行動を取ることはありません。万が一の場合でも、お店が顧客の情報を持っているので、追って何らかの対応を取ることができます。このように、キャンセルによるリスクを大きく減らすことができるのです。


店舗経営の目安が立てやすくなる

会員制にすることで、会費や定額制による一定収入、客数による売上予測が立てやすくなるので、店舗経営がうまく回るようになります。

例えば、定額制のサブスクリプションモデルを導入している場合は、年間や月間の収入額が見込めるため、支出のコントールが可能です。万が一、当日キャンセルとなっても、経営に影響しません。
また、会費+その都度の飲食代という料金体系であっても、会員数からある程度の売上を予測することもできます。そのため、店舗運営における資金繰りの目途が立てやすくなるのです。

クラウドファンディングを利用した
会員制レストランが増加中

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ここ数年、クラウドファウンディングを利用した会員制レストランが急増しています。インターネット上で不特定多数の人に呼びかけて資金を集めるクラウドファウンディング。資金援助をしてくれたお返しに、お店の会員となってもらうというシステムです。昨今は、飲食店に特化したクラウドファウンディング支援会社もあるほどです。

会員制レストランというと、高級、ハイクラスといったイメージですが、クラウドファウンディング型の会員制レストランは、若者を中心に幅広い層に支持されやすいというのも特徴です。世の中に出ていないお店という特別感、自分がお店づくりに関わったという一体感や身近感が、多くの人を惹き付ける理由でしょう。

飲食店にとっても、開業資金の調達とともに広告宣伝ができ、安定的な集客を獲得できるのは利用価値が高いものだといえます。

会員制レストランの新しいスタイル
「あと値決め」とは

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一部の会員制レストランが採用している「あと値決め」とは、食後に顧客自身が値段を決めるという新しい価格設定方式です。

入店時にお店のQRコードを読み込んで請求書を受け取り、2日以内に顧客自身が決めた金額を振り込むというしくみです。食事やサービスの価値をお店側が決めるのではなく、サービスを受けた顧客側に全て決めてもらうのです。

飲食店にとっては、まず先にサービスを知って価値を体験してもらえる、価格の壁を感じずにより多くの人に広められる、新しい広告宣伝の方法ともいえるでしょう。レジや会計業務がいらないという点ではコスト削減にもなります。

どんな会員制レストランがあるの?

実際に、どういった会員制レストランがあるのか、特徴的な店舗をいくつかご紹介します。


クラウドファウンディングで会員応募が殺到
焼肉店「29ON(ニクオン)」

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西新宿、表参道などに複数の店舗を持ち、低温調理法を用いた「焼かない焼肉」が売りの会員制焼肉店「29ON」。クラウドファンディングで会員を募集したところ、数日で目標達成し話題にもなったお店です。

▶29ON:https://nishi-shinjuku.29on.jp/


飲食店の常識を覆しフレンチで定額制を導入
「Provision(プロビジョン)」

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フレンチのジャンルで、定額制という規格外のスタイルを導入した会員制レストランが六本木にある「Provision」。月に何度来店しても、飲み放題、食べ放題という破格過ぎる料金設定でありながら、安定的に経営しています。新たな会員制レストランのしくみとして注目されているレストランです。

▶Provision:https://provision-tokyo.com/


住所、電話も非公開
隠れ家的な肉割烹「かつまた」

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これぞ王道の隠れ家的会員制レストランが、肉割烹「かつまた」。一般には住所も連絡先も非公開、来店できるのは会員とその同行者のみ。極上の料理とおもてなし、空間を存分に味わってもらいたいという店主のこだわりが感じられます。

▶かつまた:https://nikukatsumata.com/ 

会員制レストランは
新たな飲食店経営の切り札に

会員制レストランは、今後新たな飲食店経営のスタイルとして導入が増えていくのではないでしょうか。コロナ禍で多くの飲食店が倒産の危機に追い込まれる中、安定的な収益と集客が見込める会員制ビジネスは、店舗存続の大きな切り札となるに違いありません。



writing support:Miyuki Yajima





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