時代の変化を乗り越える老舗、マルコメの強さとは

時代の変化を乗り越える老舗、マルコメの強さとは

新型コロナウイルス感染拡大の対応や、withコロナの暮らし方への再編成を余儀なくされた2020年。
まだまだ先行きの見えない中で、2021年が始まりました。FoodClipでは新春特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は、味噌のトップメーカーであり創業から160年以上の歴史を持つ、マルコメ株式会社の青木社長に2020年の動向と今後の見立てをうかがいました。
(聞き手:FoodClip編集部)

お話をうかがった方

マルコメ株式会社
代表取締役社長
青木 時男 氏

2020年振り返り


ーマルコメの自律分散型組織体制は、コロナ禍の意思決定にどのように影響しましたか?

2020年は予測不能な事態の連続でしたね。マルコメでも在宅ワークに切り替え、スムーズに業務共有がおこなえるよう、さまざまなオンラインツールを取り入れてまいりました。早い段階で導入できたのは、組織体制を従来の管理統制型から自律分散型に移行した影響も大いにあると思います。これは後ほど社員から話してもらいますが、自律分散型は現場に信頼をおき、各セクションの判断で業務を遂行するため、刻々と状況が変わる非常事態下においても迅速かつフレキシブルに対応できます。

この体制がコロナ禍に活きたと感じていますし、従来型の組織では意思決定が遅れ、対応しきれなかったのではないかとも考えます。組織体制を切り替えるのは5年ほどかかったのですが、今まで色々と模索していたものが活き、2020年は試された感じがいたしました。


ー2020年の動向は、いかがでしたか?

2020年4〜8月下旬の売上高は、コロナ禍の内食需要の高まりによって、前年比7%増と好調に推移しました。味噌は保存がきいて、他調味料の中でも比較的お求め安いカテゴリーですから、外出自粛期間中だった3月〜5月は全国で相当数お買い求めいただきました。ストック需要で買われたので、その後の売上は落ち着くであろうと予想していましたが、健康視点で味噌や糀甘酒のほか、大豆のお肉などがメディアで紹介されたため、ECサイトでも好調に推移して、現在でも売上は高いベースラインを保っています。


ースーパーの売場でも変化を感じますか?

新型コロナウイルスの影響によって、スーパーの売場は変革が起きています。お客様の密集を避けるためにチラシ特売が減り、EDLP (エブリデイ ロー プライス)で展開する店が増えました。定番商品を特売とまでは言わないまでも、売価を安く設定しチラシの経費を下げ、買いだめ需要に応えて利益を増やす。これまで特売のハイ&ローで利益を作ってきた小売店も、こうした売り方を取り入れ、データ重視でマーケティングする売場がどんどん増えているようです。

EDLPでは、特売で訴求する棚よりも売れない商品を扱い続けるのが厳しく、頻繁に商品の入れ替えをおこなうなど、チャンスロスに敏感になります。これまでのような対面での商談もおこなえないため、小売バイヤー様はご自身の情報収集力でECサイトや購買のランキングを参考に売れているのかを探り、新しい商品を取り入れるようになっているようですね。

そのような小売メーカー様のご要望に対して、食品メーカーとして提案できることは、まだまだたくさんあるように感じています。


ーコロナ禍での伸長率は即席味噌汁をおさえ、生味噌が好調だったとお聞きしました。

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自粛期間中は、即席味噌汁の売れ行きが良かったのですが、その後の伸長率は生味噌が追い抜きました。主力の「料亭の味」も以前までは横ばいでしたが、ぐっと売上が上がってきました。地方で未開拓だったエリアにもフェイスが新規で決まったという報告を受けています。

味噌は基礎調味料ですから、なかなか入れ替わりがなされず、新規獲得は従来であれば数年かかることもあります。それがコロナ禍で売場がだんだん短いサイクルで変化する中、私どもの今まで積み重ねてきた商品戦略が受け入れられ、津々浦々の売場に浸透してきました。「圧倒的に売れているから」「評判がいいから」と商品を扱ってくださるところが増え、徐々に皆様の中でトップブランドとしての認識が形成されてきたと実感しています。

ランキングに食い込んで、何らかの媒体を見てマルコメの商品を選んでいただけるようになったのは、「生活者に驚きと感動、健康を」というビジョンをぶらさず、時代に合わせた新商品を生み、アクションしてきた成果だと捉えています。

例えば新商品発表会では、ヘルスコンシャス、ギルトフリーなど、地道に今何を伝えていきたいかを発信。毎年スーパー様をはじめ、多くの方に反響をいただいています。


ー時代の先をいく革新的な商品を生み出されていますね。2015年に発売されている「大豆のお肉」もそうですよね。

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2015年に発売した「大豆のお肉」は、味噌の主原料である大豆と創業から160年以上向き合ってきた知見を活かそうと生まれた製品です。日本でもインポッシブル・フーズ、ビヨンド・ミートが注目され、話題が広がっていますよね。大豆のお肉も発売当初は植物性原料の肉自体が浸透していませんでしたが、ここ数年で徐々に広がりをみせ、多くの方に選んでいただける製品に育ちました。

現実問題として、世界各地の気候変動をみるにつけ、SDGsなど環境に配慮した食は年々重要度が増しています。2020年にはロサンゼルス工場のあるカリフォルニア州で大規模な山火事が起きるなど、肌で感じているところです。これをたどっていくと、やはりサスティナブルな社会に貢献する意識を持たなければなりませんし、感度の高い層に広まっているような肉を控えるという考え方が進んでいくと考えています。


ー「大豆のお肉」が選ばれる理由は、どういったところにあるのでしょう?

老若男女がわかるネーミングで「大豆のお肉」とつけている通り、他社と発想が違うんです。欧米で流行しているフェイクミートは相応の添加物によって肉に近づけていますが、マルコメの製品は大豆そのままの素材の良さを生かすことをコンセプトにしています。

日本には味噌、醤油と古くから大豆とともに食文化を重ねてきたストーリーがあり、そこへ根ざした製品に共感し、一緒に売場を作ってくださるバイヤーさんもいらっしゃいます。自然のままを生かす考え方は、欧米諸国とも親和性が高く好評をいただいています。ここに加えて、糀甘酒も同じく発酵食品として欧米の企業からアプローチがあります。どの製品も現地化せずに脚色なしで、堂々とビジョンに沿って付加価値を提案していけば、世界にも商品の良さが伝わっていくんですよね。

地球上では色んな人が新しい食を探しています。新型コロナウイルスによって、ますます原点思考で体や環境に良いものを選りすぐり、トライしていこうという思考が広がっていくでしょう。マルコメの製品は日本の食文化から生まれたものだからこそ、食の楽しさやSDGsへの課題解決も含めて、グローバル化しておかしくない流れにあると感じています。

2021年は・・・

ー2021年の取り組みについてお聞かせください。

2021年も今までやってきたことをそのまま愚直に続けていくことが第一です。今、お客様の多くは、社会の混乱の中で不安な精神状態にあります。私たちは健康を軸に、食を通して何かお役立ちできるという姿勢を常に心がけています。お客様にご支持いただくために何ができるか。自分たちの至らない部分を改善しながら、生活者目線で正直にご提案できるか。一気通貫で取り組んでいきたいと考えています。



writing support:Akira Fukui





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