家庭料理の復権。食の価値変化で揚げ物シーンにも変化が

家庭料理の復権。食の価値変化で揚げ物シーンにも変化が

新型コロナウイルス感染拡大の対応や、withコロナの暮らしへの再編成を余儀なくされた2020年が終わり、2021年が始まりました。FoodClipでは年始特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は「Joy for Life® 生きるをおいしく、うれしくしたい。」をビジョンとし「AJINOMOTO オリーブオイル」をはじめ、「AJINOMOTO から揚げの日の油」「AJINOMOTO さらさら®キャノーラ油」などを展開する、株式会社J-オイルミルズの古川氏をお迎えし、2020年の動向と今後の見立てをうかがいました。(聞き手:FoodClip編集部)

お話をうかがった方

株式会社J−オイルミルズ
油脂事業本部
油脂事業部長 古川 光有 氏

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2020年振り返り

ー2020年の動向は、いかがでしたか?

2020年度の家庭用食用油市場は、過去最高の1,500億円超えとなる見込みです。揚げ物や炒め物などの加熱調理から生食、調味用途にも広がりをみせ、健康視点からも生活者から注目を集めています。

2020年は外出自粛にはじまり、第1波、第2波、第3波、Go Toキャンペーンの影響など、刻々と変化する状況に現在も目が離せない状況にある中、内食の需要が大きく拡大し、家庭内調理が復権した一年でした。外食需要の落ち込みもあり、弊社の業務用製品も大きな影響を受けましたが、一方で家庭用製品の需要が大幅増。一時は品薄や欠品などでご迷惑をお掛けしましたが、家庭用製品の生産能力を上げるシフトを組むなど、供給責任第一で生産体制を整えました。

また、多くの飲食店などは、苦しい状況に置かれており、お弁当のテイクアウト、デリバリーにトライするお店も増えました。時間が経ってもおいしい食事の提供が課題となったり、業態転換をしてテイクアウト需要が見込める揚げ物店をはじめるお店も増えてきています。我々ができることとして、厳しい状況に直面している外食店様を少しでも支援するため、今まで中食で培ってきたノウハウを用いて、経時劣化しにくく、おいしさが持続する油などの製品を提供しています。


ー家庭用オリーブオイルの売上が伸長しているとお聞きしました。

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オリーブオイルが伸長しているのは、健康軸、特有のフレーバーによる調味軸の2つが要因です。家庭での油の使用状況は、全体としても外出自粛期間から定量、定性的に見ても増えており、家庭用製品の売上も高いベースラインをキープしています。外食が難しい環境や在宅ワークにより、家庭内で昼食をとる機会が増え、夕食を手作りする時間も長くなったことが要因です。

昼食では、時短簡便なパスタなど主食メニューの需要が急増。それに伴って、調味価値をもち、ひと手間でおいしさをアップさせられるオリーブオイルやごま油の売上が伸長しました。外食機会が減ったことにより、一人暮らしで調理をされなかった層でもこれらの油に対する必要性が増し、新規購入いただく方が増えています。夕食では揚げ物を作る家庭が増え、これまでお惣菜や外食を利用する外の需要に流れていたのが、ここにきて大きくシフト。揚げ物がボリューム感も演出できて家族に喜ばれるお役立ちメニューのポジションとして、見直されていると捉えています。


ー家庭内調理の復権によって、生活者の意識が変わったのでしょうか?

パラダイムシフトと言わないまでも、ソリューションの中心が変わってきたと感じていますね。揚げ物の例にあるように、これまで時短、簡便が加速していた潮流から、手作りの楽しさやおいしさにエンターテイメント性を見出す生活者が増えています。より一層、食の体験価値が求められる世の中です。これは生活者の中で「なんのために食事をするのか」という食の価値が再定義され、多様化してきた流れが、新型コロナウイルスによって加速したといえるかもしれません。これからは、食卓のあり方や食の価値の変化に向き合い、製品の機能と付随する情報の提供などで、いかにサービスレベルを上げていけるかが重要だと捉えています。


ー流通などのお得意様とのコミュニケーションも変化しましたか?

コミュニケーションの形が変化したというよりも、オンライン化せざるを得なくなったという表現が正しいでしょうか。従来方式の商談をオンラインに切り替えて、社内外での情報共有もタイムリーにおこなっています。J-オイルミルズだけではないかと思いますが、顕在化したのは、オンラインでコミュニケーションが取れ、業務が進行できるということです。オフラインの商談も戻りつつありますが、相互での感染予防の観点から、オフラインの良さを残しつつ、今後も引き続きオンラインでの業務効率化を推進してまいります。


ーフードテック元年など、食を取り巻く環境が急速に変わってきていますが、今後どういった取り組みをされますか?

2021年は予測しきれない部分が大半かと思いますが、この先も新型コロナウイルスのワクチンなど抜本的な打ち手がない限りは、基本的に2020年の市場変化が継続していくと予測しています。家庭へ向けた情報発信はオンライン化が必須ですし、直近ではオンラインツールを使って、飲食店のシェフと話しをすることも可能になり、toC、toBともにデジタルトランスフォーメーションの重要度が増しています。

今後は、食の価値の再定義を踏まえたうえで、さまざまな企業様にお力添えをいただきながら、ナレッジを含めて情報提供することで、食卓への貢献内容も変わってくると考えています。J-オイルミルズの業務用、家庭用のお客様をそれぞれの需要に応じて、繋いでいく事にも少しずつ取り組んでいきたいですね。

また、食を取り巻く環境として考えると「2025年問題(※)」ともいわれる日本の人口減少、労働力不足は大きな問題です。外食、中食を支える人材も不足することが想定される中、作業軽減などの課題解決に対する取り組みが必要であり、こちらも私どもメーカーと外部の企業とで手をとって進めていければと思います。その意味では、フードテックを要にした繋がりが重要になってくると捉えていますね。


(※)2025年問題:2025年の日本はいわゆる団塊の世代が後期高齢者に達することから、国民の4人に1人が75歳以上になるといわれ、医療や介護をはじめ、あらゆる視点から懸念されています。

2021年は・・・

ー2021年の取り組みについてお聞かせください。

業務用市場に向けた施策としては、需要の大きいフライ油の課題である作業環境改善(例えば油の臭いだったり、廃油や清掃の頻度を減らすなど)をもう一段強化していくことによって、バックヤードで業務に携わる方に貢献できるのではと考えています。

業務用製品では従来から油が長持ちする機能のあるフライ油「長調得徳®」という製品があります。長持ちすることから油を変える頻度が少なくて環境にやさしいだけでなく、油を変える労力が少ないことから、作業負荷が減り、作業環境も良くなる製品です。おいしい揚げ物が提供できることはもちろん、お使いになられる方、環境負荷の低減、中長期的な食資源課題にも、サステナブルに貢献できるプロダクトを主軸として多方良しのビジネスを強化していきます。


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生活者に向けては、従来よりオリーブオイルを広げたいという思いでPRや店頭販促をおこなってきました。新しくオリーブオイルにエントリーされる方が多い中で、小さいサイズの商品にエントリーいただいています。健康にもつながる必需品の調味料となるべく、一層裾野を広げてきたい考えです。

オリーブオイルのみならず、家庭用製品に関しては足元で起こっている変化を常にお客様にお聞きしながら、我々が提供できる価値を強化していく。これに尽きると思います。例えば、「ひと手間」「風味」をキーに食の楽しさを提案するなど、家庭内調理の価値を機能的においしくするだけでなく、情緒的なプロセスを含めた価値を丁寧に作り上げていく必要があります。もちろん、手作りの楽しさ、時短簡便の片方では立ちゆきません。食の環境変化に合わせ、両輪で取り組みを進めていきたいと考えています。



writing support:Akira Fukui





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