BtoB企業と協業も。マクドナルドの未来のSDGs

BtoB企業と協業も。マクドナルドの未来のSDGs

2020年は、世界中で気候変動による災害も絶えない年でした。さまざまな危機が訪れる中で、2021年はSDGsにどのように取り組めばよいのでしょうか。FoodClipでは新春特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は、2019年よりフィレオフィッシュに海のエコラベルといわれるMSC認証取得の素材を使用するなど、SDGsの取り組みを積極的におこなう日本マクドナルド株式会社の石黒氏をお迎えし、2020年の動向と今後の見立てをうかがいました。(聞き手:FoodClip編集部)

お話をうかがった方

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日本マクドナルド株式会社
CR&コミュニケーション本部 広報部
石黒 友梨 氏

2020年振り返り

ー2020年は新型コロナウイルスにより、SDGsの取り組みに変更などはありましたか?

企画自体をオンラインに切り替えるなど、変更を余儀なくされましたが、年初からの計画に大きな変更はありませんでした。2020年のマクドナルドは、SDGsにおいて今までよりも生活者の方と距離の近い活動をしたいという意識を持っていました。SDGsは社会課題でありながら、日本ではまだまだ自分ごととして捉えにくいところがあり、それをより身近にするのは、マクドナルドの使命ではないかと考えていたのです。今年の夏におこなったワークショップ「JSL Youth Club withマクドナルド(※)」も、その一端です。

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(※)JSL Youth Club withマクドナルド:2020年の夏に行われた、学生12名とともにサステナビリティについて考え、行動するオンラインワークショップ。一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会と共催で2020年8月より計5回開催。学生たちは専門家のアドバイスを受けながら、サステナブル・ラベルおよびマクドナルドのサステナビリティに関する取り組みを広めるための動画を作成した。


ー「JSL Youth Club withマクドナルド」開催の経緯を教えていただけますか?

はじまりは、2019年に学生とおこなった「サステナビリティ」について考えるワークショップでした。近年は授業や課外活動の一環で、マクドナルドのSDGsの取り組みを学生に向けてお話しする機会が増えていたのもあり、「持続可能な社会・未来につなげるアイデアを“考えよう”」をテーマに議論する場を設けることにしました。

NPO、官公庁、学生、教員、マクドナルドが集まり、フィレオフィッシュセットを食べながら、それぞれの意見を述べる。大変有意義な会になりました。ただ、その場で学生側からは、「なんでマクドナルドはもっとやらないの?」「もっと行動したい」との声が上がりました。今の学生は教育課程でSDGsを学ぶ機会もあり、大人よりも身近に捉えているんですね。将来にわたって地球に住むための必要な取り組みですから、未来を担う彼らの意見を、今のビジネスを担う私たちが聞かないというのは良くないと思いました。そこで議論を成果とするのではなく、学生とリアルにSDGsの取り組みにはどういう壁があって、何が必要なのか、真剣に考えて行動に移していく場を作ることになり、「JSL Youth Club withマクドナルド」が生まれたんです。


ーその取り組みでは、どういった学びがありましたか?

今回のイベントで、NGO、NPO、学生、マクドナルド、官公庁、自治体、それぞれが対等に協働しなければ、良いものは生まれないと実感しました。どうしてもCSRの取り組みは、何かをする側とされる側になりがちで、企業がSDGsへの取り組んでいても、多くの生活者は情報の受け手になってしまう場合も少なくないでしょう。今回のように一緒に視線を合わせて手を取り合うことも、SDGsを身近に感じていただく上で重要だと感じました。

またマクドナルドが何かに取り組むとなると、ハッピーセットのプラスチック製おもちゃの回収プロジェクト「おもちゃリサイクル」のように、全国と連動した大きな施策というのも大切ですが、小さい取り組みでも各自治体や、SDGsに貢献するような技術を持つ企業と積み重ねていきたいという想いも強くなりました。

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ー今後も自治体や企業との取り組みをおこなわれるんでしょうか?

2020年12月には、川崎市、昭和電工株式会社、日本マクドナルド株式会社の3者で、実証事業の取り組みをおこないました。川崎市内にあるマクドナルド8店舗から出た使用済みプラスチックのゴミを回収して、デリバリー用バイクの燃料にケミカルリサイクルするというものです。まだ実証事業の段階なのですが、これが実現したらプラスチックゴミをリサイクルするという課題の大きな前進になると期待しています。今回協業する昭和電工社は、プラスチックを水素にかえる技術を持っており、同社の施設がある川崎市とともに取り組む運びとなりました。これは他社からアプローチがあるというより、一緒に何かできないか地道に議論を重ねた結果です。

今までのマクドナルドでは、BtoB企業と協業することがあまりなかったので、同じように危機感を持った企業と対等に議論して一緒にアクションできることを大変嬉しく思っています。


ーSDGsで生まれた新しい関係性ですね。食品メーカー各社でも自社単独ではアクションするのが難しいという話が挙がります。

自社だけではできませんし、今は自社だけで解決すること自体、求められていないのかもしれませんね。マクドナルドでおこなう施策は、情報のインパクトが大きく、限られたエリアの施策でも「全国で実施してほしい!」とのお声をいただくことが少なくないのですが、各自治体やそのエリアに根ざした方々との地域密着型の取り組みこそが大切だと思っています。


ーSDGsへの取り組みにはマクドナルドらしさが良い形で発揮されていると感じます。施策などは、どのように意思決定されているのでしょうか?

マクドナルドのあらゆる活動において、第一の判断基準はクルーが笑顔でシフトインできることです。そもそもSDGsに関する活動もSDGs達成を目的に考えたというよりも、以前から企業の社会的責任として、働きがいや経済成長などを考慮していたものが、うまくSDGsと合致したという形です。今回の施策もそうですが、根底に流れているマクドナルドの企業文化があり、そこに基づいて意思決定がおこなわれていますね。

加えて、クルーとお客様とのコミュニケーションが欠落した施策は早々に弾かれます。クルーはお客様一人一人にマクドナルドの想いを伝える一番の発信者ですから。また、実行する施策については、最年少である15歳のクルーにも理解してもらえるよう、インターナルコミュニケーションに細心の注意を払います。外向けとは違う言語で各レイヤーに合わせた説明を心がけています。


ーSDGsというと、フードロスや代替肉なども注目されていますが、そちらはいかがでしょう?

フードロスに関しては、2005年に従来の作り置き方式を「メイド・フォー・ユー」に変更しました。注文をいただいてからバーガー類を作ることで食品廃棄を大幅に削減し、できたてをお届けする仕組みです。それぞれの地域で企業や自治体と連携し、例えばコーヒー豆のかすを肥料にしたり、ポテトの揚げかすを鳥の飼料にするなどのフードリサイクルに取り組んでいます。これらも地域密着型のリサイクルです。

代替肉については、海外のマクドナルドでは植物由来の代替肉を使用したハンバーガーが試験的に発売されていますね。ただ、日本のマクドナルドで導入して根本的な課題解決になるのか、日本でやる価値があるのか、そもそもの課題って何だっけ?という部分をクリアにしていかねばなりません。もっとお客様の声を聞いて、検討したいと考えています。

2021年は・・・

ー2021年はどういった取り組みをされる予定ですか?

今後は、日本全国の各店舗で取り組んでいる活動を外からも見えるよう、注目度を上げていきたいと考えています。地域のコミュニティに根ざした私たちの活動から、お客様がSDGsをより身近に感じ、理解していただき、一緒に活動できるようになれば嬉しいですね。

すでに2021年に向けた大小含め様々な施策が進行しており、これからも他社との協業も加速していくでしょう。まずはマクドナルドとして、皆様にわかりやすいSDGsの実践例を示していければと考えています。



writing support:Akira Fukui





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