[蕎麦ワンダーランド]煮え前は恥、蕎麦の茹で方伝授

[蕎麦ワンダーランド]煮え前は恥、蕎麦の茹で方伝授

食や料理への「偏愛」を語ってもらうHolicClip。老舗蕎麦屋の職人さんだった「そば小僧」さんによる連載コラムです。今回は自宅で年越し蕎麦を楽しむ方へ向けて、おいしい茹で方を伝授いただきました。
前回の記事はこちら:https://foodclip.cookpad.com/6124/

いよいよ年末、年越し蕎麦!

「もういくつ寝ると、お正月〜♪」なんて歌を聞くと、「ああ、今年も終わるな…」と思います。こんにちは、そば小僧です。

さて、いよいよ年末。年越し蕎麦の季節になりましたね!
大晦日といえば蕎麦屋が一番盛り上がりをみせる日です。

例年なら行列に次ぐ、行列。小僧の古巣ではオープンから閉店まで人の列が絶えず、店内にはお客さまで溢れかえっておりました。さらに、その様子を伝えようと、ご近所のテレビ局が取材に来られて、まさにお祭り状態!それは賑やかなことでした。

しかし、今年はこれまでと違い、ご自宅で年越し蕎麦を食べる方も多いと思います。昨今の状況では、なかなか行列に並ぶのもためらいますよね…。

そこで、「おいしい年越し蕎麦は食べたいけれど、密は嫌だな…」という方へ、小僧からのご提案です。今年は蕎麦屋への応援も込めて、お店で販売している「生蕎麦」をご自宅で茹でてみてはいかがでしょうか。

ポイントさえ押さえれば、ご自宅でも十分においしい蕎麦を食べることができますよ。また、蕎麦屋によっては蕎麦つゆを付けているところも多くあります。蕎麦の味は、“つゆ”で差がつくのも事実!ぜひご自宅でもおいしい蕎麦を食べて、年越しをゆったりとお迎えください。


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3つのポイントで蕎麦を茹でよう

というわけで、今回は蕎麦の茹で方ポイントをあらためてお伝えしたいと思います。もちろん乾麺にも共通するポイントですので、役立てていただければと思います。

蕎麦の茹で方について、押さえて欲しいポイントは3つです!

  1. 蕎麦を茹でる鍋の大きさ
  2. 蕎麦を茹でる時は対流を意識
  3. 蕎麦の洗い方

当たり前のことかもしれませんが、意外にもこれができていない方が多いのも事実です。
もう一度初心に立ち戻り、今年はよりおいしい蕎麦を食べていただきたいです。


1. 蕎麦を茹でる鍋の大きさ

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先ず、鍋の大きさはとても重要です。大きい鍋にお湯をたっぷり張るのが基本です。
理由としては2つあります。

・蕎麦はくっつきやすい
・均等に火を通すため

蕎麦を茹でて、蕎麦同士がくっついて、ダマになってしまったことはないですか?この大きな要因は、鍋の大きさによるものです。特に蕎麦を鍋に入れ始めた時は、温度も下がりくっつきやすいです。最初に蕎麦をパラパラと入れましょう。


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生蕎麦の場合は、さらにくっつきやすいので特に注意が必要です!
ここで失敗してしまうと残念なので、家にある一番大きい鍋を用意しましょう。


2. 蕎麦を茹でる時は対流を意識

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次に、蕎麦を茹でる際の火加減についてです。これも重要です。ただお湯に入れれば良いわけではなく、蕎麦にとって良い火加減というのは「蕎麦が気持ちよさそうに泳いでるな〜」と思うような状態です。この表現わかりますか? 蕎麦がゆったりとお湯の中を回転している、これがベストな状態の火加減なのです。

そして、この回転しているお湯の状態が対流です。つまり、お湯の流れを作ってあげるのです。こうすることによって芯までしっかりと火が通ります。

火が強すぎると、蕎麦用語では「空煮え」とも言いますが、外側のみ火が通り、中に芯が残る場合があります。蕎麦屋では昔から「煮え前は恥」という言葉があり、芯を残した蕎麦は好まれません。ですので、「空煮え」をするくらいなら、少し茹で過ぎたとしても、よく冷やせば問題ないのです。

では、工程を説明します。まずはお湯を沸騰させます。完全に煮立っているお湯に蕎麦をパラパラと入れましょう。このとき火力は全開です。蕎麦を入れるとお湯の温度が下がるためです。

そして、蕎麦を入れたら優しく箸で八の字を描くように蕎麦を混ぜていきます。この動作は、蕎麦がゆっくりと泳げるように箸で補助してあげるようなイメージです。とにかく、優しく、補助をしてあげましょう。無理に混ぜると蕎麦が切れてしまいますので、要注意です。


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少し経つとまたお湯が沸いてきますので、蕎麦がゆっくり泳げるような火加減に調節しながら茹でましょう。箸は最初の補助のみで、あとは火加減のみで調整ができます。

火力が強い場合には沸騰して鍋からお湯が溢れてしまいます。逆に、火力が弱すぎる場合は、お湯の上に蕎麦が浮かんできてしまうので、対流をしっかり作りながら火加減を見守りましょう。


3. 蕎麦の洗い方

最後に蕎麦の洗い方です。洗う目的は2つあります。

・蕎麦をしっかり冷やすことで、蕎麦にコシがでる
・蕎麦の表面に付着しているぬめりをとる

茹でた直後に冷やさずに食べてみるとわかりますが、しっかり冷やさないと、フニャッとした蕎麦になってしまいます。冷水で冷やすことにより、余熱で火が入るのを止め、蕎麦にコシがでます。

また、蕎麦の成分は水溶性でもあるので、表面にぬめりがついています。この2点を意識して蕎麦を洗うためには、蕎麦の洗いは2回に分けることが重要です!

では工程を見ていきましょう。まずは蕎麦を茹でている間に、冷水の入ったボウルを2つご用意ください。規定通りの時間に茹でたら、蕎麦をお湯からあげます。


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蕎麦をざるにあげ、冷水を張ったボウルに蕎麦を入れてしめます。このボウルの中で、優しく蕎麦を洗いましょう。強く洗うと蕎麦が切れてしまうので、ぬめりを落とすことを意識して優しく洗いましょう。


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次に、もう1つのボウルへ移し、綺麗な冷水で蕎麦を洗います。このお水は「化粧水」とも呼ばれ、蕎麦を洗う最後の工程となります。「化粧水」と呼ばれるのは、最後に蕎麦を綺麗な水で洗うことで、艶やかな見た目にしてあげるという意味があります。同時に最後に付着しているぬめりも取れます。


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少し面倒かもしれませんが、綺麗な水で2回に分けて蕎麦を洗うことで表面も艶やかになり、味も格段においしくなりますよ。

蕎麦湯もぜひ楽しんで

そして最後に、蕎麦を茹でた際の茹で汁「蕎麦湯」を取っておき、蕎麦つゆと割って飲めば最後まで楽しむことができます。蕎麦には多くの水溶性の栄養素が含まれていますので、蕎麦湯を飲むことでより多くの栄養も取れるのです。

最後に

蕎麦のおいしい茹で方を説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

先日、YouTubeで乾麺のレシピ動画を見ていたら、フライパンにお湯を張り、蕎麦を茹でているシーンがありました…。茹で方は人それぞれですので全く問題ないのですが、「蕎麦がくっつかないかな〜、これでは蕎麦が対流にのって全く泳げないよな〜」と心配になってしまいました…。少しでもおいしく、年越し蕎麦を楽しんでいただけたらと思います。

もちろん、感染対策に気をつけながら、例年通り年末営業をする蕎麦屋もたくさんあるはずですので、お店で蕎麦を楽しむのも素敵だと思います。年末は開放的で楽しそうなお客さまが多く、その独特の雰囲気が小僧はとても好きでした。

また、お店ならではの楽しみ方としては、年末にしか提供していない蕎麦などもあると思います。ちなみに小僧の古巣「更科堀井」では、毎年31日限定で「しっぽく蕎麦」を提供していました。(ぜひ調べてみてください)

お店でも、ご自宅でも、皆さん想い想いの年越し蕎麦をおいしく楽しんでくださいね。
ではまた来年!良いお年を。





著者プロフィール

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そば小僧
「江戸三大そば」とも言われる更科堀井で約5年間修行。厨房で料理を作る傍ら、SNS運営、通販サイトの立ち上げと、何でも屋の小僧です。「日本の伝統」がとても好き♪ Twitterも是非ご覧ください。https://twitter.com/sobakozoo