鍵はエンタメと効率。ESSE編集長が見る新時代ママ像

鍵はエンタメと効率。ESSE編集長が見る新時代ママ像

2020年はコロナ禍により外出自粛が叫ばれる中で、暮らしにスポットがあたった1年でもありました。FoodClipでは新春特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は創刊40周年を迎える、生活者の暮らしと食卓に寄り添うライフスタイル誌「ESSE」の編集長 尾崎真佐子氏から、2020年のトレンドの傾向と2021年の見立てをうかがいました。(聞き手:FoodClip編集部)

お話をうかがった方

ESSE編集長
尾崎 真佐子 氏

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Web媒体編集長を経てクックパッドの広報部長など豊かな経験を携え、なおかつ主婦マーケティングを知り尽くしている。2018年4月に編集長に就任。ライフスタイル雑誌のSNSやイベントなど、新しいチャレンジにも取り組んでいる。

2020年振り返り

ー2020年はいかがでしたか?

2020年は、従来のトレンド予測や前年までのデータが全く参考にならない年でした。出版業界全体では、外出自粛でおうち時間に心を向けた生活者が増えたことで、ESSEなどの生活情報誌をはじめ、児童書・コミック・実用書などの売上が好調に推移しています。

ESSEのコンセプトは、“丁寧に暮らすから毎日がハッピー”。現在の読者層は60〜70%が兼業主婦で、仕事も家事もこなしながら丁寧な暮らしも大切にする”今どき良妻賢母”といった女性たちが大きな割合を占めています。

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新型コロナウイルスが流行し、ESSE読者の皆様がストレスフルな生活を送る中で、ESSEにはどのようなものが求められているのか、誌面構成はかなり考えました。

5月の段階で全国のテレワーク導入率は30%に満たず、「STAY HOME週間」がおこなわれた東京と地方との状況にギャップが大きかったのも、全国向けの雑誌としては悩みどころでした。


ー特に、春先の第一波の時は大変でしたよね。

新型コロナウイルスの第一波真っ只中の頃は、日本にいる全ての人が暮らしの見直しを強いられましたよね。主婦の皆様は幼稚園や小学校が閉鎖、外出自粛などの影響で、毎日3食を用意し一日中子どもの面倒をみて、場合によっては夫や自分もリモートワーク… と暮らしをなんとか回していかなければならない状況になりました。

嵐のような社会情勢の中で、ESSEでは暮らしを立て直したい読者の気持ちに応え「ラクに暮らす」「居心地良い家に」といったメッセージを発信。


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9月号の特集タイトルは「夏は丁寧より楽に暮らす」とし、頑張りすぎない家事にフォーカスしました。

一方でこの頃は、お金に関する特集の需要が予想以上に低かったのも印象的でした。夫の収入減やパート先の閉店など世帯収入の減少を視野に入れていたのですが、テーマの興味関心を問う読者アンケートでは予想に反して下位。不安はあるものの、現状を乗り切るのに精一杯で「お金のことはまだ考えられない」「お金のことまで考えるのはストレス」といった心理が働いていたようです。

自粛ムードが緩和されるにつれ、最近は少しずつお金関係の特集にもニーズが見られ、少し先の見通しを立てたい読者も増えています。


ー食卓まわりの変化として感じたものはありますか?

2020年の食卓は、外食ができず3食作らなければならない課題を解決するレシピやキッチンアイテムがヒットしました。

傾向としては、自宅で外食気分を味わうエンタメ軸と、日々のご飯を負担なく作るための効率軸の2軸に大別できます。エンタメ軸ではホットプレートやホームベーカリーなどのキッチン家電のヒットやベランピングなどが挙げられます。SNSで話題になっていたプラレール回転寿司には驚きましたが、実践している家庭が多く、エンタメ欲求の高まりを表していると感じました。

効率軸としてはESSEで人気企画となっている、藤井惠先生の卵焼き器ひとつで作れるワンパターン弁当がいい例。凝った調理はせずにセットアップでパパッと作るレシピなどが好評でした。これに対して作り置きレシピの注目度がやや下がったことから、読者は土日に頑張って作り置きする生活から、毎日を効率的に回すサイクルに動いたと捉えています。外食機会の減少により、これまで効率的なレシピしか作らなかった人もこの2軸を行き来しているのが特徴です。

暮らしの面では、以前から注目を集めていたミニマリストの傾向が強まりました。昔はたくさんモノを持つのが豊かな象徴で、それらを詰め込むのが収納術でしたが、この10年くらいで、モノを最小限にして最初から散らからない仕組づくりにシフトしています。これには地震や台風などの防災意識の高まりも影響しており、暮らしていく中での不安要素を少しでも取り除きたいと考える人が増えたと考えています。

2021年は・・・

ー2021年の食卓で注目しているものはありますか?

正直にいうと2020年を踏まえても、2021年のトレンド予測は非常に難しいという印象です。ただ、エンタメ軸と効率軸は今後も支持されると見込んでおり、食だけでなく世の中全体のトレンドとしても、この2軸が企画発信の判断材料の一つになると思います。

ロボット掃除機や電気圧力鍋などキッチン家電も引き続き注目していきたいですね。暮らし全体ではミニマリストは継続で、男性の家事参加の定着なども進むと思います。

これからも不安な時代は続くので、2021年も食・お金・防災などに気を使いながら、いかにストレスを溜めずに心地よく生きていくかがテーマになり、暮らしを豊かにする流れの中でトレンドが生まれていくと思います。


ー2021年に40周年を迎えるESSEですが、今後の展望を聞かせてください。

2021年、ESSEは記念すべき40周年を迎えます。今後やっていきたいことは「推しがいる暮らし」の提案です。私の編集方針に「暮らしはエンターテイメント」というのがあり、読者の皆様にもっと毎日の暮らしを楽しく過ごしてもらいたいと思っています。

さまざまなジャンルで応援消費が盛り上がっているのに加えて、テレビ番組と連動した企画をおこなうESSEの強みも活かすことができます。2020年11月号では男性グループとして初めてV6の皆さんに表紙にご登場いただいて、ファンの皆様はもちろん、読者の皆様から熱い支持を得ることができました。

また、ESSEの世界観を雑誌をめくるだけでなく、体験として提供していく予定です。今までよりパワーアップしたESSEと親和性の高いアイテムを付録にしたり、SNSやYouTubeを活用するなど、読者の皆様の暮らしにおける接点を増やして、世界観を立体的に表現していきたいですね。



writing support:Akira Fukui





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FoodClip
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