
企業・業界動向
コロナ禍で健康ニーズにも変化?ライザップから見える新動向
FoodClipでは新春特集として、食品業界を担うキーマンの思考を連載形式でたどります。今回は「結果にコミットする」のキャッチフレーズでダイエット市場に革命を起こしたRIZAP株式会社の幕田氏と柳井氏をお迎えし、2020年の取り組みやライザップ式DX戦略についてうかがいました。
(聞き手:FoodClip編集部)
お話をうかがった方
RIZAP株式会社
教育開発部 部長
幕田 純 氏
1986年生まれ。NSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)、ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)。RIZAPのトレーニングや食事、目標達成のメソッドを作成し、トレーナーを育成する教育体制を構築。現在は研究開発や健康経営の促進・トレーナー教育の機能を持つ教育開発部の部長を務めている。
RIZAP株式会社
教育開発部
柳井 美穂 氏
RIZAPの管理栄養士。NR・サプリメントアドバイザー。2015年に入社し店舗にてカウンセラーを経験後、現在は、安全・安心・効果の高いサービスを提供するために、大学や病院との臨床研究に参画し、日々、時代にあわせた、新しいRIZAPメソッドの開発をおこなっている。
コロナ禍の健康ニーズの高まり。
フルオンラインでも”結果を出す”新メソッド
ーパンデミックによって、RIZAPのお客様の意識や行動に「変化」と思われるものはありましたか?
幕田:2020年は、これまでの見た目の美しさや格好良さといった意識だけではなく、健康状態や免疫力を高めるボディメイクを始めようという方が増えた印象です。また、健康的な身体を作るために必要な栄養素を気にされるお客様が増えたところもあります。
あと、いわゆる”客層”にも変化がありました。これまでメインは30~40代でしたが、2020年は50〜60代以上の会員数も伸びています。ライザップでは2019年からプレシニア層へのご提案も積極的におこなっていましたのでその成果と、今回のコロナによる健康意識の高まりが影響したと認識しています。
ー確かに健康を意識した1年でしたが、来店が難しい時期でもありました。どのように解決されたのですか?
幕田:春の緊急事態宣言が収束した頃(4月〜9月)には、来店できないお客様にもトレーニングを実施いただくために、Zoom等を利用しパソコンやスマートフォン越しでもお客様へ伝わるトレーニング法をトレーナーに研修するなど、オンラインで完結するサービスを整備することができました。
「2ヶ月間、週2回ジムで50分間のトレーニング」というのが、ライザップの最もスタンダードなプランですが、1週間を時間にすると168時間で、私達が対面しているのはそのうちの2時間しかありません。残りの166時間をどう一緒に歩んでいくかが重要で、お客様が途中で挫折せずに、いかに結果を出していただくかについては、以前からかなり意識して取り組んでいました。
具体的にお伝えすると、お客様とはアプリを通じて毎回の食事(1日3食×60日間=180回分)や1日の生活習慣の報告をいただいてフィードバックをするコミュニケーションを毎日おこない、普段の心身の状態についても細かくお話を聴いてアドバイスをしています。
コロナによって、入会時のカウンセリングと2時間の対面トレーニング部分がオンラインになりましたが、それ以外の部分についてはコロナ以前のオンラインコミュニケーションと変わりがなかったんです。ですから、これまでのノウハウが活かされて、オンラインサービスを導入後の現在であっても、しっかり結果にコミットできているんです。
結果を出すためには、1日の中でいかに「RIZAP」の存在を思い出していただけるかが重要だと思っています。ボディメイクを生活の優先順位の第一位に上げて、そこにお客様の仕事や自宅でのライフスタイルを合わせてもらうのが、我々のサービスでありコミュニケーションです。その点で、オンラインもうまく活用できているのではないかなと思っています。
自炊×時短の提案へ。
調理意識がポジティブに変化
ー食事提案においても、コロナによる変化はあったのでしょうか?
柳井:コロナによってお客様の食への向き合い方が変わり、アドバイス内容にも変化が生まれたと思います。お客様が理想のボディメイクにコミットするためには、トレーナーから送る日々のメール内容をいかに充実させるかが鍵になります。
コロナ禍では、自炊をする回数が増えて、これまで以上に生野菜を手に取る機会が多くなったというメリットがありました。特に旬の野菜は栄養価も高いので、お客様にはぜひ取り入れてほしいということもあって、トレーナーには月に一度、食材の知識や情報を共有する研修を実施しています。その内容をお客様に活用していただけるように、当社の管理栄養士が野菜の栄養価や情報をまとめた豆知識のメール内容を作るなど、食に関する情報発信を積極的におこなうようになりました。
また、リモートワークが増えたことで、昼食スタイルにも変化があったと思います。これまでの昼休みは「買ってきた物を食べて1時間」でしたが、「調理から食べるまでを含めて1時間」になり、時短でどれだけ多くの品数ができるかもポイントになりました。そのため何を選ぶか、どう食べ合わせるかだけでなく、コンビニのメニューや缶詰などをどうアレンジして簡単に料理するかという調理法などもアドバイスするようにしています。
これまで料理に取り組んでいなかった方も、お送りした情報をもとに取り入れてくださる方がとても多くなりました。毎日のやり取りの中でお客様とトレーナーの信頼関係が成り立っているので、アドバイスをしっかりと聞き入れてくれました。
ライザップの栄養サポートセンターにレシピのご相談や食事についてのお問い合わせも増えていて、料理に対する意識はより高く、そしてポジティブに変わっていったのではないかと感じています。
トレーニングも食事提案もボーダレスに。
RIZAPのDX戦略とは
ー2021年、トレーニング領域ではどんなことを強化されますか?
幕田:今年の早い段階で、コロナ以前のような来店トレーニング×オンラインコミュニケーションに戻ることは現実的ではないと見ています。RIZAPでもこの機会を生かし、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を強化していこうと思っています。
例えば、北海道にお住まいのお客様が沖縄の店舗にいるトレーナーのセッションを受けたり、仕事でやむを得ずトレーニングをキャンセルしなければならなかった方がオンラインで受講できるなど、ボーダーレスになっていることはメリットだと捉えています。
今後も積極的にアプリを使ったり、トレーナーの個性やキャラクターを活かしたトレーニング内容を受講できるようにするなど、お客様が楽しめるサービスのバリエーションを増やしていきたいです。
ー今後の食事提案についてはいかがですか?
柳井:2020年はお客様のモチベーションなど心理的変化が大きい1年だったので、身体の変化だけではなく、心の変化についても寄り添うことを重視していきます。
加えて栄養面からもサポートできたらいいと思っていますね。例えば「忙しくて睡眠時間がずれてしまい疲労が溜まりやすい方には、夜にビタミンCの多いものを摂りましょう」といったアドバイスなど、時期に応じてお客様の不調に寄り添うところまでできればと思っています。
そのためにも、お客様へのメール内容の質をいかに上げていくかというところに力を入れています。現在、結果を出しているトレーナーを抽出して、どういう構成でどんな内容のメールを送っているのかを細かく分析しています。
今後はAIなども活用しながら、近い将来には「身体の状態がこういうときには、この栄養を摂取したほうがいい」といった情報もお伝え出来るようになればいいですね。
幕田:コロナ以前に「人生100年時代」というキーワードが出てきたことで、60~70歳の定年後、100歳までどうやって過ごしていくのかに意識を向ける方が増えてきました。さらに健康寿命と平均寿命のギャップが約10年あるとも言われていますので、より一層年配の方の健康寿命を伸ばしていくためのサービスを提供したいと考えているところです。
こうした変化に伴って、プロモーション戦略も変えていく必要があると考えています。単に見た目のダイエットという点だけでなく、肥満を是正することで持病の良化に繋がるといったような、ボディメイクが健康に寄与できるという点をうまく伝えていきたいです。
柳井:「ライザップはきつい&食べられない」というイメージがあるかもしれませんが、これは誤解なんです(笑)。むしろ、3食しっかり食べることや間食を活用して血糖値が上下する幅を少なくしてもらうという食事法を提案しているので、お肉もお魚も食べられますし、必要に応じて、GI値を気を付けていただきながら主食も食べてもらっています。また、食材も選び方によって結果が大きく変わります。
最近ではとてもおいしい低糖質のラインナップも増えているので、食べることを楽しみながらボディメイクできます。
RIZAPのプログラムを実践すると、2ヶ月間で食の正しい知識が身についてリバウンドしにくい身体が目指せるというところについても、より認知を広めていく1年にしていきたいです。
幕田:私たちの使命は「お客様を”人生最高の体と自信”」へ導くこと、コミットすることです。そのために日々改善してサービス向上を目指してまいります。
writing support:Miyuki Yajima
著者情報

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