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フルーティな味わいが魅力。ルビーチョコレートの秘密
着色料不使用で美しい色合いと特有の風味を持つチョコレート界のニューフェイス「ルビーチョコレート」。2018年に日本に登場して以来、じわじわと人気を集め、さまざまなスイーツにも使われるようになりました。バレンタインも近づき、ますます注目度が増している「ルビーチョコレート」の秘密を探っていきましょう。
チョコレート界の新星ルビーチョコレート
最近、チョコレート界のニューフェイスとして話題を集める「ルビーチョコレート」は、キュートでロマンチックなカラーが特徴ですが、フルーツのフレーバーや着色料などは一切含まれていないそうです。
チョコレートといえば茶色が定番なのに、色付けをせずに、なぜ鮮やかなルビー色になるのでしょうか。また、これまで定番とされていたチョコレートとは何が違うのでしょうか。ルビーチョコレートの謎をひも解いていきます。
そもそもチョコレートの種類とは?
ルビーチョコレートの特異性を考えるうえで、先ずはこれまで定番とされていたチョコレートの種類を確認しましょう。
ダークチョコレート
元来、チョコレートは固形の食べ物ではなく、高価な飲み物のひとつでした。古代メキシコをルーツとし、ヨーロッパへ伝来したことで砂糖を加えた甘い飲み物として広まりました。
1828年に、オランダ人のクンラート・バンホーテンは、苦みの強い飲み物をさらに美味しくするために、カカオ豆に含まれているココアバターを除き、苦みやくどさのないココアパウダーを発明しました。これがきっかけとなり、現在のような固形の食べ物が発明されたのは1847年のこと。イギリス人のジョセフ・フライによって「飲むチョコレート」から、「食べるチョコレート」の原型が作られたのが始まりです。ジョセフ・フライの製法は、ココアパウダーと砂糖にココアバターを加えるというものでした。それまでの製造過程で抽出されてはいたものの、あまり使い道のなかったココアバターが、これ以降チョコレートの原材料として注目されたのです。
ミルクチョコレート
ほろ苦いダークチョコレートをまろやかに食べやすくしたのが、ミルクチョコレートです。1875年にスイス人のダニエル・ピーターが製法を開発しました。ネスレ社と協同開発した濃いミルク(コンデンスミルク状の水分を除いたもの)をダークチョコレートに加えることで、まろやかな味わいにしたのです。
通常、水分の多いミルクは油分の多いチョコレートとは簡単には混ざりません。ミルクの水分を抜くことで、独自の製法を編み出し、現在も広く好まれる定番の味となりました。
ホワイトチョコレート
世間を驚かせたホワイトチョコレートは、1936年にネスレ社によって開発されました。原料であるカカオの色そのままに、茶色が当然とされていたチョコレートが、それまでにはなかった白色で提供されるようになったのがホワイトチョコレートです。通常のチョコレートに含まれるカカオマスそのものは使用せず、ココアバターにミルク、砂糖などを加えて作られます。カカオマスから抽出されるココアバターを原料としていることから、チョコレートの一種として認められました。
上記の3種類は、すでに世界中で広く商品化されており、誰もが知っているチョコレートです。
そのなかでも新しい部類に入るホワイトチョコレートの登場からすでに80年余り。長きにわたり変化のなかったチョコレート界に、新たな特徴を持つチョコレートとして誕生したのが、ルビーチョコレートなのです。
ルビーチョコレートとは
ルビーチョコレートとは、ルビーカカオ豆を原材料とし、天然の色素と香りをそなえたルビー色のチョコレートです。既存のダーク・ミルク・ホワイトの3種類に加えて新たに登場し「第4のチョコレート」とも呼ばれています。
ルビーチョコレートは、2017年9月チューリッヒ(スイス)に本社を置くバリー・カレボー・グループのチョコレートブランド「カレボー」によって開発されました。カレボーは、ベルギーで100年以上チョコレートを作り続けている老舗ブランドです。同社製品の正式名は「ルビーチョコレートRB1」です。
これまでも、ホワイトチョコレートをベースにして色付けした、カラフルな商品は数多く販売されてきましたが、独特の美しい色合いが楽しめるルビーチョコレートの原材料は、ルビーカカオ豆。カカオ豆の中にルビーカカオ豆の特徴をもつ前駆物質があるものを追求した結果、独特の風味が加わりました。同社が10年の時をかけて特定した最適なルビーカカオ豆は、ブラジルやエクアドル、コートジボワールといったカカオ産出国で育成されており、産出国による違いはありません。
「ルビーチョコレートRB1」の詳細は以下のとおりです。
- 原料:砂糖、ココアバター、脱脂粉乳、全粉乳、カカオマス/乳化剤、クエン酸、香料
- 成分:カカオ分47.3%以上 乳固形分26.3%以上 脂肪分35.9%
- 味:コクのあるフルーツ風味・新鮮な酸味
- その他:着色料やフルーツフレーバーは無添加
2018年の日本上陸以来、2年が経過した2020年には、すでに国内での認知度は上がっていました。2020年2月におこなわれたインターネットの意識調査によると、国内のルビーチョコレートの認知度は48.5%でした。2019年の42.1%と比べると、その認知度は6.4ポイントアップと、大きく増加しています。また、ルビーチョコレートを食べたことがあるかという質問に対して、食べたことがあると回答した人は2019年の5%から、2020年には17.1%に急激に増えています。ルビーチョコレートを取り入れるシーンでは、誕生日やバレンタイン・クリスマスといった特別な日に食べたいという意見のほか、日常的に楽しみたいという回答も多くあがりました。すでに既存3種類のチョコレートに並ぶほど、浸透し始めていることがわかります。
これまでにもピンク色のチョコレートはありましたが、主にホワイトチョコレートにベリー系の果実を加えて作られていました。今後は、フルーツや着色料を加えずに鮮やかな色合いとフルーティーな味わいを楽しめるルビーチョコレートが、ピンクチョコレートの代名詞となっていくのではないでしょうか。
国内チョコレート市場は依然として好調
ルビーチョコレートが日常に浸透する速度はめざましく、各メーカーがこぞって関連商品を発売しています。その背景となっているのが、日本におけるチョコレート市場の過当競争にあるでしょう。市場の規模や、レッドオーシャン化する商品開発競争の現状について解説します。
国内のチョコレート市場が拡大する背景のひとつとして、日本人が無類のチョコレート好きであることが挙げられます。じつは、日本は世界第3位のチョコレート消費大国なのです。少子化が進むなかでも、チョコレートの人気は衰えることがありません。
2018年に全日本菓子協会が発表したデータによると、2017年のチョコレート市場は前年比4.6%増の5,500億円となり、7年連続で過去最高を更新しました。当時、チョコレート部門の強さが菓子市場全体で成長の牽引役となっていたのです。
2年後の2020年4月の発表では、生産数量、生産金額、小売り金額の推移は以下のように変化しました。チョコレートの生産数量は前年を下回るものの、生産金額は前年を上回っています。こうした矛盾が生じたのは、生産単価の上昇が要因です。今後は、価格競争ではなく付加価値や高品質な商品を求める消費者が増え、そのニーズに対応する市場変化が推測されます。
資料:全日本菓子協会
チョコレートの市場規模が高い水準を保っているのは、近年の健康志向が追い風になっていることも考えられるでしょう。近年では、チョコレートが持つ成分の健康効果が多く発表されています。
カカオ豆には、抗酸化の働きを持つとされるポリフェノールや、体を温める働きをもつとされるテオブロミンなどが含まれています。こうしたカカオ豆を原料とするチョコレートは、健康管理にお菓子を役立てたいと考える大人世代にも広く浸透し、チョコレート人気を加速させているとも推測できるでしょう。健康志向のニーズに応えて、大人が好みやすい甘さを抑えた商品が増え、機能性食品としてのチョコレートが次々に販売されているのです。大人から子どもまで、多くの人が好むお菓子として、現在も好調な売れ行きを見せています。
ルビーチョコレートの今後の動向は?
2017年に登場したルビーチョコレートは、チョコレート界の新星です。チョコレートは世界中で人気のあるお菓子のひとつですが、既存のダーク・ミルク・ホワイトの3種類はすでに数多くの商品が出まわっています。
毎年多くのチョコレート商品が開発されるものの、新らしさを与えるのが難しい状況でした。そうしたなか、フルーツのフレーバーや着色料を使わずに、自然の状態でのフルーティーさと美しい色彩を持つルビーチョコレートは、ほかのチョコレートよりも希少性が高く、インパクトのある商品といえます。価格帯は若干高めですが、上述したように付加価値があり、消費者の購入意欲も高くなると推測されます。
【価格帯比較】
- ルビーチョコレート(商品No:02102201)645円税込
- ホワイトチョコレート(商品No.01486702):453円税込
- ミルクチョコレート(商品No.01486602):429円税込
ルビーチョコレート商品と購入できる場所
ルビーチョコレートの登場は、まさに一大旋風を巻き起こしています。まだ食べたことのない人には、その新たな味わいをぜひ試していただきたいところ。ルビーチョコレートが入手できる場所をお伝えします。
店頭で購入
■スーパー/コンビニエンスストア/百貨店
森永製菓、不二家、東鳩、カバヤなど、大手菓子メーカーが、比較的安価なルビーチョコレートの商品を販売しています。とくに2020年のバレンタインデー用に数多くの商品が提供されたことで、ルビーチョコレートが一気に話題となりました。
なかでも注目は、昨年2020年のバレンタイン時に、ルビーチョコレート商品を最大13種類も展開したファミリーマートです。チョコレート菓子のほか、洋生菓子、チルド飲料と多彩なラインナップでした。
■成城石井
直輸入品やオリジナル商品などを広く扱うスーパーマーケット「成城石井」では、さまざまなルビーチョコレート商品を扱っています。インターネット通販での取り扱いもあり、店舗がないエリアでも入手可能です。
・成城石井 ナポリタンチョコレートルビー / 100g(約21枚) 690円(税別)
北イタリアの老舗チョコレートメーカーからルビーチョコレートを直輸入し、成城石井で加工したオリジナル商品。薄型のブロックタイプが個包装になっています。
・ルビーチョコレートと2種ベリーのパンナコッタ / 1個 359円(税別)
日経主催「お弁当・お惣菜大賞」のスイーツ部門にて、2年連続最優秀賞を受賞した商品。ルビーチョコレートを使用し、フランボアーズピューレやクランベリーをトッピングにあしらい、見た目も華やかで口溶けのなめらかパンナコッタです。
■その他のブランドの商品
・ヴィタメール パレショコラ(ルビー&フレーズ) / 13枚入り 1,080円(税込)
1910年ベルギーで創業した洋生菓子・チョコレートブランド「ヴィタメール」では、世界2店舗目となる日本の旗艦店があり、バレンタイン前後の期間限定販売でルビーチョコレートを扱っています。インターネット通販でも購入可能ですが、2021年版は2月7日までの注文となっています。
・キットカット ショコラトリーサブリム ルビー / 1本 432円(税込)
サクサクとしたウェハースの食感とチョコレートのコラボレーションで人気のキットカットからも、ルビーチョコレートを使った商品が販売されています。ルビーチョコレートを使用した商品としては世界初とされ、2018年1月18日に販売開始されました。5本入りギフトボックスもあり、ルビーチョコレートを強調したスマートなパッケージにも注目です。
カフェやショップで味わう
■スターバックス
・ルビーチョコレートケーキ / 540円(税抜)
2021年季節のおすすめ商品として、スポンジクラムとクランブルを使ったしっとりとした食感の生地の上に、ルビーチョコレートのガナッシュとムースを重ねたケーキが登場。希少性の高いルビーチョコレートの味わい、特有のフルーツのような爽やかな酸味が楽しめます。
■タリーズ
・ルビーチョコ&苺ロイヤルミルクティー / 470円~(税抜)
季節の新商品としてルビーチョコレートを使ったドリンクが販売されています。ルビーチョコレートを使用したロイヤルミルクティーは、イチゴの果肉入りソースをトッピングし、見た目も鮮やかなドリンクです。ホットとアイスから選べます。
■コールド・ストーン・クリーマリー
・ルビー ベリー チョコレート
・キャラメル ハグズ ブラウニー
・ショコラ オランジュ ランデヴー 各種ワンサイズ 680円(税抜)
アイスクリームショップ「コールド・ストーン・クリーマリー」では、2021年1月より期間限定商品としてルビーチョコレートを使用し、ピンク色に彩られたキュートで愛らしい商品を販売。ワッフルにルビーチョコレートをコーティングした「ルビーチョコワッフルボール」と、ラズベリークランチとアラザンを組み合わせた、店舗で手作りの「ルビーバークチョコ」を組み合わせたアイスクリーム・クリエーションが楽しめます。
新しいスイーツの扉を開くルビーチョコレート
80年ぶりにチョコレート界に新風を吹き込んだルビーチョコレートは、そのままお菓子として楽しむだけでなく、ドリンクとしての展開など、さまざまな可能性を感じさせてくれます。
これからパティシエたちが創造する未来のスイーツにも、ルビーチョコレートが大きく貢献することでしょう。自然のカカオ豆そのものが発する鮮やかな色とさわやかな風味が、チョコレート好き・スイーツ好きをますます楽しませてくれそうです。
著者情報

- FoodClip
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