
生鮮
CMだけじゃない?キウイの食卓浸透に向けた戦略と施策
人気キャラクター「キウイブラザーズ」で有名な、ゼスプリのマーケティング部の水谷様にインタビューし、コロナ禍での爆発的なCMヒットの裏で下支えした店頭やSNSで実施した施策について、前後編の2回に渡ってお話をうかがいました。今回は前編をお届けします。
巧みなコミュニケーション施策
アコースティックギターの音とともに「ヘルシーは好きなことを楽しみながら〜」と歌いかけ、イメージキャラクターのキウイブラザーズが健康に向けて奮闘する。「ヘルシーを、やみつきに。」のコピーをもとに作られたゼスプリのCMは、生活者の共感を呼び、2020年度の大ヒットCMとなりました。同年度ゼスプリのキウイの販売量は、過去最高である2900万トレイ超と右肩上がり。キウイブラザーズが誕生する以前の2015年度と比較すると、約1.4倍にのぼるといいます。
お話をうかがった方
ゼスプリインターナショナルジャパン株式会社
コンシューマーマーケティング
ブランドマネージャー
水谷 かやの 様
ーゼスプリのテレビCMや生活者とのコミュニケーションを、いつも興味深く拝見しています。キウイブラザーズはゼスプリの顔としてすっかり定着しているように感じますが、誕生したのはここ数年なんですよね。
テレビCMでは2017年に「選ばれし者のシール」篇、「ゼスプリのシールは」篇で栄養素などの健康面をメインに訴求。2018年には「完熟キウイ」篇、「酸っぱくない」篇で味わいについての認知を図ったのち、2019年に「恋のマイアヒ」の替え歌を使用した「アゲリシャスダンス」篇で、キウイを食べて気分がアガる!と生活者の情緒に訴える方向に展開しました。2020年の「好きなことを楽しみながら」篇は一朝一夕のヒットではなく、これまでの生活者とのコミュニケーションの積み重ねの末に生まれたものだといえます。
ー「好きなことを楽しみながら」篇は、生活者の共感を引き出しながら新しい提案をもたらす「ヘルシーを、やみつきに。」のコピーもカギになったと考えています。こちらはコロナ禍を踏まえて作られたのでしょうか?
新型コロナウイルスが流行する以前より、2020年度は「ヘルシーを、やみつきに。」を軸にしたコミュニケーション戦略を予定していました。2020年度は、ゼスプリロゴのリニューアル含めブランドトーンをグローバルで統一する計画がありました。弊社で“ブランドプロミス”と呼んでいるブランド信念も「Make your healthy irresistible」にリニューアル。これを日本語訳したメッセージが「ヘルシーを、やみつきに。」なのです。
今、世の中の多くの人が、健康を維持するためにはハードな運動や食事制限が必要だと思い込んでいます。健康=大変・退屈というイメージがあり、それぞれの生活者が課題を抱えている状態です。それに対して、健康はもっと楽しい。キウイと一緒ならやみつきでおいしくて楽しくヘルシーが叶えられる!ということを伝えていきたかったんです。
ーコロナ禍以前から「ヘルシーを、やみつきに。」のメッセージはあったんですね。当初のプランから変更した部分はありますか?
弊社の場合、通常であればキウイの旬にあわせて5月からテレビCMがはじまります。2020年はそれを控えて、プロモーション戦略を練っているタイミングで世の中の情勢が変わってきました。その影響を踏まえ、メッセージ自体は大きく変えないまでも、外出自粛などで生活者が抱えている不安や需要などをふまえ、伝え方はかなり議論しました。より優しい歌声のCMソングにしたり、トーンを細かく調整しましたね。結果として、「癒される」「元気がもらえる」といった感想もいただき、メッセージが生活者の皆さんにきちんと届いたことは非常に嬉しく思っています。
ーそれに比例する形で販売量も好調に推移しているとうかがっています。
おかげさまで認知度もアップし、キウイを食卓に取り入れてくださるご家庭も増えました。販売量は、キウイブラザーズのテレビCM放映前の2015年が年間2100万トレイ(1トレイは約3.5キロ)だったのに比べ、2020年度は2900万トレイを超える量で過去最高を記録するなど、右肩上がりに伸長しています。
ー2020年は店頭施策についても大きく変更が必要だったかと思いますが、そちらはいかがでしょうか。
店頭販促は3密を避けるなどかなりの制約がありました。従来であれば、店頭でお客様にご試食いただいたり、店舗巡回で売場を整えるような施策もあるのですが、多くを中止せざるを得ませんでしたね。
一方で、健康に対する意識が高まっている時流において、キウイの栄養価値は皆さんへのメリットだと感じていたので、1個に1日に必要なビタミンC、食物繊維が豊富であることを訴求する店頭POPやパッケージに貼るシールを開発。6月頃から売場で展開していただきました。
感染予防の観点から、スーパーに来店する頻度を減らしているお客様も多かったので、大容量パッケージを積極的に提案いただくよう小売店様にもご協力いただきました。店頭でのコミュニケーションをカバーする施策をチーム一丸となってスピーディに実行に移せたと考えています。
ーすごいです。クックパッドでも、健康の観点から新しい食材を試すユーザーも増えているのですが、早い段階からそういった部分を逃さずに施策を作られていたんですね。情勢に合わせた意思決定ができるような組織体制を作られているのでしょうか。
マーケティングチームは少数精鋭で、迅速に意思決定ができているのだと思います。広告代理店の皆さんと密にやりとりをしてプランニングから実行まで、スピーディーにやりとりできているのも、成果につながっています。
幅広い層へメッセージを届けるため
デジタル施策にも注力
ーTwitterやInstagramなど、SNSでもコミュニケーションもすごくタイムリーですよね。
SNSはキウイブラザーズが大活躍してくれていますね。この1年はおうちで過ごす時間が増えたので、ぬりえやレシピなどおうち時間が充実するような内容が増えました。若年層のフルーツの喫食機会を増やしたいという背景もあり、こうしたデジタル施策にも力を入れています。
ー2018年度からはクックパッドとも一緒にデジタル施策に取り組ませていただいていますね。
主にご一緒しているのは、レシピコンテストや特集ページの制作などの取り組みですね。2020年度の施策は予想を超える反響があり、喫食シーンや料理の幅などCMではお伝えできないことを深く知っていただくコミュニケーションツールとして効果を発揮しました。いただいたレシピ投稿に「ヘルシー」というキーワードが見られたのも、一つの成果だと捉えています。
やはり長くブランド愛していただく意味でも、幅広い層にキウイをぜひ食べていただきたい。そのためにはキウイのことをもっと知っていただいて、メッセージを届けていかねばなりません。CMのみならず、こうしたデジタル施策もあわせて、それぞれの媒体に持たせたい役割をきちんと見定めて、施策を進めていくことが大切ですね。
次回の後編では、クックパッドとのデジタル施策について詳しくうかがいます。
writing support:Akira Fukui
著者情報

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