
組織戦略・ブランド戦略
ローストビーフ特化のD2C?目指すは食卓体験デザイン
ゴーストレストランやケータリング、出張料理人など、業態も著しく変化する食品業界。FoodClipでは「食×D2C名鑑」という特集を通じ、魅力的な事業を作り出しているD2Cブランドを紹介しています。ブランドストーリーや、立ち上げの苦しみなど、じっくりとお話をうかがいます。
お話をうかがった方
THE ROAST BEEF
プロデューサー
酒井 一輝 氏
ローストビーフ特化のD2C
ブランド誕生の背景とは?
ー2020年11月に、日本初となるローストビーフに特化したD2Cブランドをスタートしていますが、1メニューに絞ったことや、それがなぜローストビーフだったのか教えてください。
「THE ROAST BEEF」を運営する株式会社デクノバース(https://dekunovers.com/)は、元々ブライダル事業をメインで創業しており、結婚式や二次会などのケータリング事業も進めていました。そのケータリングメニューの中で、特にご好評いただいていたのがローストビーフだったんですよね。
そこで、このローストビーフをお届けするサービスを考えるようになりました。
ー実際に食べてみたんですが、確かに自分で作るものやスーパーで買うものとは違いました。
お肉選びにもこだわっていて、国産の黒毛和牛とオーストラリア産のアンガス牛を掛け合わせたWAGYUブランドの内もも肉を使用しています。
当初は、「黒毛和牛100%でないと、美味しいと思ってもらえないのではないか」と思っていて試作してみたところ、肉の甘さや旨味はあるものの、脂っぽさを感じたんですね。
そこで精肉店に提案してもらったのがアンガス牛との掛け合わせだったのですが、適度な脂身とさっぱりした赤身の味わいがとてもバランス良くて。肉を焼いた後、鮮やかな赤い色が綺麗に出たのも決め手になりました。
半年でサービスイン。
既存ショッピングサイトで好評
ー「THE ROAST BEEF」は2019年頃からスタートされたんですね。
立ち上げ当初からケータリングやフードデリバリーを活用していましたが、強化したのは2020年春の新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言下の頃でした。
この頃は月間400件ほど申込いただいていたものが、2件程度になってしまっていて‥オフラインで提供するのが難しくなっていったので、オンラインに舵をきったんです。
5月にショッピングサイトで販売をスタートさせ、母の日などの催事の時に大変よく売れ、想像以上に需要があることを知りました。
ー手応えがあったわけですね。
はい、自信がつきました。ただ一方で、ショッピングサイトという仲介が入ることの課題も見えるようになりました。多くの方は「手数料」を気にされると思いますが、僕たちが時に気になったのは、お客様との距離感です。
ショッピングサイトを使うと、どうしても「ローストビーフをショッピングサイトで購入した」という認識しか残らなくて、ブランドが薄れてしまう危機感を感じたんです。本来は直接お客様に提供していましたし、お客様の表情が見えないことにもモヤモヤしました。
そこで、やはりD2Cのビジネスモデルでチャレンジしようと切り離し、スタートさせることにしたんです。
ローストビーフを買って欲しいではなくて
「THE ROAST BEEF」を体験してほしい
ー春先にD2Cのビジネスモデルに切り替えると決めて、約半年でサービスイン。とてもスピーディでありながら、サービスは細部にまでこだわられていて驚きました。このブランドの在り方はどのようなメンバーと創り上げたのですか?
プロデュース会社ということで、人が集まる場所にサービスを展開することを主としていたので、僕らはほとんどの事業が凍結し、仕事を失いました。
唯一売上を伸ばすことのできたテイクアウト&デリバリー事業に社内の9割近くのメンバーを急遽人事異動した中、何か新しいサービスを作らないと会社が終わる。そんな危機から何か自分たちの得意分野で感動を生み出せないか。世の中をゴキゲンにできないか。
そう考えていた時に代表の平川から、ある日声をかけられ、2人でひそひそD2Cブランドを立ち上げることに。平川がローストビーフの開発にこだわっていた分、ブランド全体のプロデュースを僕が担当。そしてもう1人、トータルコーディネーターの角屋という女性がブランドの世界観の作り込みをおこないました。今までも3人でケータリング事業を支えてきて、どんな逆境も乗り越えてきたからこそ、自信を持って世の中に送り出せる商品を作り上げることができました。
ー食品ではないようなラグジュアリーなボックスを開くと、分厚いローストビーフと説明書、特製ソースがセットアップされて、ギフトカードも同封されていました。開けた瞬間に家族が喜びました。
僕たちの商品は、暮らしの中にある祝福の瞬間だと思うのでローストビーフを通じて、歓喜があがるような食卓体験をしてほしいと思いブランドの提供の在り方を追究しました。僕たちは元々ブライダル事業だったので「おもてなし」にはこだわろうと強く思っていました。
ー特製ソースも本格的な味わいで、とても美味しかったです。
付属のソース以外にも色々な味を楽しみたい方に向けて、現在は6つのソース&スパイスをオリジナルで作っています。中でも人気なのが「エストラゴンソース」で、ハーブの「エストラゴン」をたっぷり使用し、西洋わさびとサワークリームが味の深みを引き出してくれています。
ーローストビーフに使用した後、余ったソースは別の料理(餃子やワカモレ)にも使いました。
それは良いアイデアだと思います!ローストビーフ以外でもお楽しみいただけるソースだと思います。いろいろとお試しいただけると嬉しいです。
大切にしたいのはコミュニケーション
ー2020年11月にサービスが始まり、大切にしているのは「お客様とのコミュニケーション」と聞きました。
お届けしたいのはローストビーフではなくて「最高のローストビーフ体験」なんです。
そのためには購入前や購入後もお客様とコミュニケーションをとって、体験のお手伝いができないかなと思っています。できればお客様というよりは「お友達」のような関係性になれたらと思い、コミュニケーションしています。
ー確かに、Instagramでは、食卓のコーディネイトをはじめ、Thankyou!のタブをタップすると、商品が届いた時の投稿がまとめられていて、なんだかコミュニティのようですね。
僕たちはD2Cビジネス経験者もいませんし、SNS運用も初めてです。でもだからこそ、これまでの経験値とか効率性とか抜きにして、真っ直ぐとお客様のことを考えて動けるような気もしています。ブランドに熱量を投資できている感じがして、毎日が本当に楽しいです。
ー「THE ROAST BEEF」はまだまだ進化していきそうですね!これからも応援しています。
著者情報

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