作りおき図解|細分化する調理スタイル

作りおき図解|細分化する調理スタイル

日々の暮らしに定着した「作りおき」。一概に「作りおき」という言葉で括っていますが実は「下味冷凍」や「つけ置き」、「自家製ミールキット」など時代に合わせて細分化が加速しています。今回は調理スタイルのニーズの変化を探ります。

「作りおき」は、
忙しい現代人にマッチした調理スタイル

2014年に社会的ブームとなった「作りおき」。
きっかけは『常備菜』(飛田和緒 主婦の友社)や『作りおきサラダ』(主婦の友社)ではないでしょうか。『常備菜』の本は料理レシピ大賞にも選ばれ、この1冊をきっかけに多種多様な作りおき本が発売されて、今も書店の料理棚を賑わせています。

作りおきが一時的ブームで終わらずに定着した背景には、様々な調理者にフィットしたからではないでしょうか。
毎日の食卓を充実させたいと考えている主婦や、支度に時間をかけられない共働き家庭、一度にたくさん作っても食べきれない単身者やプレシニア世代など‥、全世代において「作りおき」は活躍しているのです。

大きなブームから早6年。一概に「作りおき」と言っても日々進化し細分化が進んでいます。今回は「作りおき」を体系的に把握し、その調理者インサイトを見つめていきたいと思います。

作りおきは「完全調理」と「半調理」で区分。
保存法の「冷蔵」と「冷凍」で分岐していく

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「作りおき」は、まず食べられる状態まで調理している「完全調理」と、解凍後に加熱する「半調理(下ごしらえ)」に分岐します。

2014年頃の作りおき・常備菜」のブームの頃は主に「完全調理×冷蔵」でした。
白い琺瑯容器の中にかぼちゃの煮付けやキャロットラペなどを入れて、真俯瞰で写真を撮ることが流行し、多くの人が「調理済」の一品メニューを冷蔵庫にストックしていましたよね。

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「半調理×冷蔵」は、肉や魚を醤油や酒など漬けダレに保存する「漬けおき」が該当します。調味液に漬け込むことで、肉や魚を柔らかくする効果も期待できる調理法でした。また、朝のうちに野菜を洗って切っておくといった下ごしらえも、この半調理に該当します。

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今のトレンドは「半調理×冷凍保存」。
「下味冷凍」はなぜこれほどまでに高評価なのか?

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2019年頃から話題なのが、下ごしらえ×冷凍のカテゴリの「下味冷」です。2019年食トレンド大賞を受賞するほど急成長している調理法で、調理前の下ごしらえを済ませているため、食べたいときに加熱するだけでおかずが一品完成します。そんな手軽さが支持されて、昨年比488.6%の頻度で検索されました。(「たべみる」より、2019年11月20日時点)

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クックパッドで「下味冷凍」と一緒に組み合わされたキーワードは、1位が「鶏肉」、2位が「豚肉」です。時短・簡便でありながら満足感を得られる主菜のおかずレシピとして、忙しい平日の夕食づくりやお弁当作りにも重宝されていることがうかがえます。(「たべみる」より、2019年11月20日時点)

冷蔵保存の作りおきの場合、早めに食べなくてはならず「作ったけど、今晩はこの作りおきの気分じゃない‥」という気持ちからずるずると食べきれず、「作りおきを廃棄する」という苦い経験も少なくありません。対して下味冷凍は、食べたい!と思った時に解凍するので「無駄にしてしまう」心配がありません。作りおきは冷蔵の時代から、冷凍の時代へ進化したと言えます。

また「下味冷凍」の検索頻度を曜日別にみてみると、日曜日が最も高くなります。
平日は仕事などで忙しいため週末にまとめ買いし、週末のうちに下ごしらえを済ませて冷凍保存しておく、そんなライフスタイルが共働き主婦増加に相関して定着しつつあるのかもしれません。

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「完全調理×冷凍保存」は
「自家製 冷凍食品」として活躍。

最後のカテゴライズである「完全料理×冷凍保存」の「冷凍つくりおき」は、主にお弁当調理者に好評な調理スタイルです。
お弁当用カップに調理済みのおかずを詰めて冷凍し、朝は再加熱して冷ましてから詰めるだけなので、お弁当作りに要する時間が格段に短縮され、朝家事の負担削減に繋がります。

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市販のチルドや冷凍食品も便利ですが、冷蔵庫在庫を使ってお弁当をつくりたいという主婦のニーズも見えてきます。
「自家製 冷凍食品」として、今後レシピバリエーションが増えていくのではないでしょうか。冷凍作りおきのつくれぽコメントを眺めてみると「子どもが喜んでくれた」「朝のお弁当つくりが楽になった」などのコメントが集まっていますね。

▶クックパッドニュース編集部の冷凍作りおき記事はこちら
https://news.cookpad.com/articles/31943

「何を作りたいのか」×「どの時間を空けたいのか」

「美味しさ」「健康」「安全」など、食品に求める価値は変わらない一方、生活者の価値観の多様化に伴って、家庭料理に求めるものや料理にかける時間・時間帯は個々で変わってきています。
クックパッドでは、新しい調理スタイルの兆しを定量データから見つけ出し、そのインサイトをレシピコメントなどの定性データから深掘りすることができます。
今後も新しい調理動向をチェックし、レポートしていきます。





著者情報

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ストラテジックプランナー 澤木麻貴子
コンシューマー製品の営業、チャネルマーケ、製品マーケを経て、趣味の料理とビッグデータ分析の世界に惹かれ2018年クックパッドに入社。企業と生活者を繋げるプランナーとして、戦略からレシピ開発まで、データとリアルを大切にしたコミュニケーションを考える。料理で特に好きな工程は「献立決め」。食べる直前が一番楽しみ。