
グローサリー
検索×購買データで紐解く新しいカスタマージャーニー
近年、改めて顧客体験やカスタマージャーニー(製品やサービスの体験を顧客の視点で時系列に表現したフローチャート)について注目が集まっています。スマートフォンが普及した昨今、カスタマージャーニーはより複雑化し続けています。クックパッドではPOSデータ×検索データの連携によって、ユーザーの商品購入前後に、どのようなレシピを検索・閲覧しているのかを把握することが可能になりました。これまでよりも精度の高いカスタマージャーニーの分析事例をご紹介します。
複雑化するカスタマージャーニー
近年、顧客体験やカスタマージャーニーについて注目が高まっています。
これまでのマーケティングプロセスはブランドの認知を高め、購買の瞬間に資金や人的リソースを投入すればよいと考えるのが自然でした。
他方で、今日においては、amazonをはじめとしたネット通販などの成長により、顧客はリアル店舗とインターネットの両方を利用するオムニチャネルの購買が増加しています。
また、購買前にブランドの評価や価格をインターネット上でチェックし、購買後にブランドの消費体験や店舗の評価をインターネット上に書き込むなど、以前にもまして複雑な購買行動をするようになっています。
インターネット上でのアクションが増加し、顧客とのタッチポイントが複雑になったことで、企業にとって複雑化する顧客の体験やカスタマージャーニーをマネジメントすることは、重要なテーマになってきているといえるでしょう。
クックパッドがはじめる本当の意味でのOMO
スマートフォンが普及した時代において、消費者が購入にいたるまでの行動を、万人に共通化された一定のマップで描くことは、とても困難であるといえます。
とくに、消費者ひとりひとりの欲求が時間とともにかわり、その行動も常に変化している中で、消費者の行動を一般化することは非常に困難であると考えられます。
消費者の行動を理解し、「カスタマージャーニーマップ」に基づく対応をしていたとしても、想定された消費者行動からはずれた状態になる可能性が高いでしょう。それは、アンケートデータに限らずアクセスデータ(ビッグデータ)を使用した分析・考察によっても”陥りやすいワナ”でもあります。
カスタマージャーニーは顧客が決めるものであり、一貫して顧客のニーズが満たされなければならないと考えるからです。
それに対してクックパッドは、日々の調理行動に紐づくクックパッド上での実行動(ログ)に基づいて仮設立案を繰り返しおこない、生活者が興味・関心を持つ体験をスムーズに提供する仕組みを構築してきました。
クックパッド式カスタマージャーニー
前述のブランド(商品)・メディア間の関係と同様に、ブランド(商品)と店頭にはPOSデータとして購買履歴データが蓄積されています。
このブランド(商品)に関するオフラインデータ(POSデータ)とオンラインデータ(クックパッド上でのアクセスログ)を結合することで、カスタマージャーニーをより精度の高い状態でマッピングすることが可能となりました。
POSデータ×検索データから可視化
商品購入前と後、どんなレシピを見ているのか?
[実際の例(購買前の行動)]
オフラインデータ(POSデータ)とオンラインデータ(クックパッド上でのアクセスログ)を結合した実際の行動例を説明しましょう。
クックパッドのサイトを訪れたユーザー(ショッパー)は、ある店舗に来店し、レシピに対応した食材を購入します。そして、購買後にあらためてレシピを検索・閲覧して夕食の準備をします。
下記の図は、ある日のユーザーAの購買前の検索行動、購入商品、購買後の検索行動を可視化した例です。
データが結合されていることで、購買前に複数のレシピを検索・閲覧し、スーパーAに来店し、11個の食品を購入して、購買後に4つのレシピを再度検索・閲覧していることがわかります。
購買前と購買後に検索した重複レシピは、
①和風明太子スパゲティ(購買6時間前、購買3時間後)
②じゃがいもしゃきしゃきサラダ(購買1時間前、購買3時間後)
③豚バラと大根のオイマヨ炒め(購買6時間前、購買6時間後)
です。
①と②は夕食時に調理し、しばらく経って③の豚バラと大根のオイマヨ炒めを弁当用に調理したと推測されます。
そして、このユーザー(ショッパー)のレシート明細を確認すると、①〜③の料理を作るために「QPあえるパスタソースたらこ」、「QPマヨネーズス450g」、「国産豚肉しゃぶ用(豚ロース)240g」、「新じゃが芋」の食材を購入していることがわかります。
これらのデータから、売り場でのクロスマーチャンダイジング(例えば「豚バラ」「大根」「オイスターソース」「マヨネーズ」)のレコメンデーションをおこなう必要があると考えられます。
あるいは、商品開発の案としてマヨネーズのオイスター味(豚バラのオイマヨ炒め)が新商品のヒントとして浮かび上がります。
また、「豚バラと大根のオイマヨ炒め」のレシピページにマヨネーズのバナー広告を展開するなど、マーケティングに有益なアイディアが得られるでしょう。
最後に
クックパッドに訪れる生活者の多くは、「今夜の夕食はなにつくろう?」という調理課題を持ち、クックパッドは「毎日の料理を楽しみにする」というミッションを掲げ、サービスを展開しています。
そのような中で、生活者の調理課題に対して、日常生活でブランド(商品)が購入される可能性、つまり、どのようなジョブ(※)が発生するのかを理解することは最も重要なことであるといえます。
なぜなら、ジョブを理解することで、生活者のニーズに見合ったブランド(商品)の購買経験や使用体験を設計することが可能となるからです。
それにより、顧客はブランド(商品)に対する必要性を自然と理解することができ、特定のジョブに合致した、真っ先に購買・使用するべきブランドとして認識することができます。
結果として、顧客は自ら進んでそのブランド(商品)を購入するため、安定した購入サイクルへとつながり、柔軟性のあるカスタマージャーニーをマッピングすることが可能となるでしょう。
貴社ブランドがどういったジョブのもとに購入されているか、より精緻なカスタマージャーニーマップを描いてみませんか。
(※)ジョブ理論とは、イノベーション理論の権威であるクレイトン・M・クリステンセン教授が発表した理論。顧客が解決したい用事や仕事を「ジョブ」と表現し、商品はそれを片づけるために「雇用(ハイア)」されるというユニークな視点から、イノベーションを予測可能なものにする「ジョブ理論」を提唱している。

本記事より詳細はOMO事例の背景や、カスタマージャーニーが重視される背景として、コトラーのマーケティング概念を紹介しています。ダウンロードはこちら
問い合わせ:クックパッドトレンド調査ラボ
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著者情報

- Masahiro MURAKAMI
- Data Marketing Department
Manager
Data Business Officer / Lead Data Analyst