
食トレンド
カレージャンルが細分化。今、スパイスカレーが熱い
近年、各地でスパイスカレー店が急増しています。カレー業界の新たなジャンルとして台頭しているのがスパイスカレー。老若男女をトリコにするスパイスカレーの魅力とブームの背景をご紹介します。
今年の夏、大注目のスパイスカレー
スパイスカレー業界が2021年、最大の盛り上がりを見せています。夏のカレー商戦に向けて、各地でさまざまなイベントが開催。スパイスカレーのレシピ本はかつてないほどの点数が刊行されており、雑誌も軒並みカレー特集を組んでいます。スーパーやコンビニエンスストアの棚にも名店のレトルトカレーが並び、東京におけるスパイスカレー店は、コロナ禍においても増加しています。
欧風カレーや札幌発のスープカレー、インドカレーや南インドカレー、スリランカカレーなど、一言でカレーと言ってもそのジャンルは細分化されてきています。
数多くあるカレーのジャンルの中でも今、注目を集めているスパイスカレーとは、小麦粉やルゥを使わずに、スパイスからカレーを作り、煮込まず、スパイスの香りを最大限に引き出したもの。また、定番のカレーには本来使うことのない食材や出汁とスパイスを組み合わせたりと、カレーの固定概念の枠にとらわれず自由度が高いのもスパイスカレーの特徴です。
大阪発のスパイスカレーブームが東京に上陸
スパイスカレーのブームは、大阪から始まり独自に発展してきました。1992年創業の大阪の名店「カシミール」を筆頭に、2018年にカレー店としては初めてミシュラン掲載された「コロンビア8」、そして東京に進出して勢力を伸ばす「旧ヤム邸」などは、大阪のみならず全国でその名を知られています。
他にも間借りカレー店やミュージシャンなどが始めたスパイスカレー店など個性あふれる店がここ10年ほどの間に続々と台頭してきました。
東京のスパイスカレーブームを牽引する店
photo:Tetsuya Ito
東京でも大阪のブームに押されるようにスパイスカレー店が急増していますが、その先駆けともいえるのが、新大久保に店を構える「SPICY CURRY 魯珈」です。
「私は南インド料理店の『エリックサウス』で修業し、2016年に独立しました。その当時は、南インドカレーがブームでミールスやビリヤニが流行していましたが、“スパイスカレー”という言葉は東京ではほとんど聞かれませんでした。
もともとカレーが好きで、高校生の時にはカレー屋になることを決めており、全国カレーの食べ歩きをしてきました。大阪のスパイスカレー店はその中でも個性的で、店によって味がまったく異なる多様性がありました。驚いたのは『旧ヤム邸』に訪れた時のことです。豚の軟骨や梅干しが入っているカレーを食べた時に、その食材の組み合わせに驚きました。これを東京でやったら面白いかもしれないと自分の店の方向性を決めました」
そう話すのは店主の齋藤絵理さん。
スパイスカレーの多様化はますます進む
photo:Tetsuya Ito
「東京でも3年ほど前からスパイスカレー店が増え、スパイスカレーの特集がメディアで取り上げられるようになって、浸透していきました。スパイスカレーの最大の魅力は香りです。あくまでも主役はスパイスなので、食材によりそったスパイス使いがポイントです。スパイスのフレッシュな香りと味が嗅覚、味覚を刺激して記憶に残る。それがスパイスカレーの中毒性に繋がります。
スパイスカレーシーンは、これからさらに多様化すると思います。今後のブームになりそうなのが、出汁カレーです。ラーメンのように、カツオや煮干しなどで和出汁を取り、スパイスと掛け合わせた“出汁系カレー”と呼ばれるジャンルが増えてきています。これから10年後には、スパイスカレーの中と一言でくくるのではなく、淡麗系や煮干し系、中華系など細分化されたカテゴリーができるのが普通になっているのではないかと予想します」
おうちでスパイスカレーを作る人も急増
今年6月に初の著書を出版した齋藤さんのレシピ本「魯珈のスパイスカレー本」では、スパイスカレー初心者に向けたカレーの他、お店で週変わりで提供してきた限定カレーのレシピを紹介しています。著書の中から、簡単にスパイスカレーの魅力を体験できるレシピを紹介します。
photo:Tetsuya Ito
「スパイスカレー初心者にとっては、スパイスを手に入れるのが一つのハードルだと思います。まずは、ルゥカレーにスパイスをプラスするところから始めてみてはいかがでしょうか。私のおすすめは、ハウス食品のジャワカレーにクミンをプラスしたカレーです。市販のルゥカレーにスパイスを加えるだけで驚くほど香り高いカレーができあがりますよ」
クミンをプラスして
おうちカレーをワンランクアップ
photo:Tetsuya Ito
クミンのジャワカレー(材料:8人分)
- サラダ油…大さじ3
- クミンシード…小さじ2
- ニンニク+ショウガ(同量すりおろし)…大さじ1
- 玉ネギ…1個
- 鶏肉…500g
- ほうれん草…1束
- ミニトマト…1パック
- ジャワカレー…1箱
- 水…1300ml
(作り方)
- 鍋に油を熱して、クミンシードをテンパリングします。クミンシードからシュワシュワとした気泡が出てきたらニンニク+ショウガを香りが立つまで炒めます。
- みじん切りの玉ネギを加えて、飴色になるまで中火でしっかりと炒めます。
- (分量外の塩を2つまみ足すことで、玉ネギから水分が出て時短になります)
- ひと口大に切った鶏肉を加えて炒めます。鶏肉に火が入ったら、5cm幅ほどに切ったほうれん草を加えて炒めます。
- ほうれん草がしんなりとしてきたら水を加えてひと煮立させます。
- 沸騰したら火を止め、カレールゥを加えて余熱でルゥを溶かします。ルゥが溶けたら再度火をつけて、ふつふつとしてきたらプチトマトを加えてさっとなじませたら完成です。
スパイスブームは、これからまだまだ続く
カレー文化はまだまだこれから多様化していき、スパイスカレーはお店で食べるものという認識から、自宅で作れるものへと生活者の認識も変化している過渡期にあります。スパイスが家庭の食卓に浸透することで、スパイス関連商品や関連レシピについても加速度的に登場してくることでしょう。
writing support:Yasue Chiba
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