中国の食品・飲料市場を捉える4つのトレンドとは?

中国の食品・飲料市場を捉える4つのトレンドとは?

2020年の総人口14.1億人、経済成長率は前年比2.3%と加速しつづける中国市場。日本の食品への関心も高く、年々その注目度が高まっています。今回は、中国のマーケットに詳しいポリスター社に最新の中国トレンドについてうかがいました。

中国食品消費動向白書が発表

この度、「2021年中国における食品消費動向白書」(以下、白書)が発表されました。この白書は中国の食品業界の発展における新たな変化を洞察し、消費傾向をまとめることでさまざまな業界の食品・飲料企業への有益な情報を提供する役割を果たしています。

今回、消費者のコアニーズから食品・ドリンク製品の変化の方向性を分析し、その中で4つの大きなトレンド軸が浮かび上がってきました。本記事では昨今の海外渡航が難しい中で、この白書と共にこれらのトレンドを紹介していきます。現地の最新情報を取得しながら、中国食品・飲料市場の情報を掴んでいきましょう。

消費者ニーズの4つのトレンドとは

現在の中国食品・飲料市場では、消費者の間で下記4つのトレンドが巻き起こっています。


1.五感に響く新体験
五感を刺激することは、常に人々の食に対する楽しみの根本的な欲求となっています。「おいしい」「刺激的」「新しい」という感覚はいつの時代も消費者が求めており、今後も新たな刺激を与えてくれる商品が求められています。

2.利便性を極めた商品形態
コロナ禍において家族で過ごすことが多くなり、家族のために食事を作る機会が以前に比べて増えました。そのため、料理をする人にとっては時間がない中で3食を作らなければならないことや、食費も嵩むことでストレスを感じることが同様に増えました。

そのため、「早くておいしい」「簡単に作れて満足度が高い」商品がより多くの人に選ばれるようになっています。このことから、手軽に作れる食品、加熱調理で済む食品、すぐに食べられる惣菜などのカテゴリーは成長が加速しています。

3.感情移入し、共感を覚える
生活が豊かになるにつれ、消費者の食品の付加価値に対する意識変化も起きています。中でも、より多くの消費者が食品やドリンク商品の価値に対して感情移入し、共感を覚えるようになってきています。

4.健康バランスの新コンセプト
新型コロナウイルスの流行により、消費者の食生活に対する考え方はあらゆる面で変化しました。特に、人々の健康への関心は未だかつてないほどの高まりを見せています。


これらのトレンドについて、具体的な例とともに詳しく解説していきます。

それぞれのトレンドの代表的な例


1.五感に響く新体験

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例えば、「冷たい」ことが新たな美味しさへの追求となり、冷蔵ドリンクの消費拡大に拍車がかかっています。

低温物流(コールドチェーン)や冷蔵設備の発展・普及に伴い、冷蔵ジュースや冷蔵コーヒーの新製品が相次いで登場しています。新しい技術の発展に加え、おいしさを追い求める姿勢がドリンク業界の革新に大きく貢献しています。

⇒従来常温や温かいものを愛飲する文化を持つ中国だが、低温物流や冷蔵設備の発展に伴ってより刺激的な感覚を味わえる商品が増えてきている。


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また、技術の成熟化に伴い、家庭用の複合調味料(うま味調味料)の味とレストランの味が段々と近づいてきていることで調味料市場の成長を促しています。

国家統計局のデータによると、2013年には複合調味料が調味料市場の10%弱を占めていましたが、2019年には20.6%となり、現在は調味料業界最大のサブカテゴリーとなっています。

参考出典:野村東方国際証券-調味料業界初回取材報告書
“美食之道,调味为先(食のあり方、調味料第一主義)”より

⇒複合調味料の進化と普及によって家庭でも気軽にレストランの味を再現できるようになり、消費者の美味しさへの追求はますます加速している。


2.利便性を極めた商品形態

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2020年に新型コロナウィルスが流行し、在宅生活を余儀なく求められることになりました。中国国内でも家庭内で食事を取る機会が増え、このことが手軽に作れるインスタント・冷凍食品や家庭で料理する際に使用する複合調味料等の分野において、変革を促すこととなりました。

⇒調理方法が簡単で、手軽に料理ができるインスタント・冷凍食品の分野は飛躍的に上昇しました。

特に冷凍食品の売上は猛烈に上昇しており、2021年の現在でもコロナの成り行きが定かではない中、市場はますます成長していく可能性があるとされています。

Aribabaが運営する大手ECプラットフォーム「Tmall(天猫)」の購買ビックデータによれば、2020年2月から11月の間で、Tmall内の「海鮮団子」「饅頭/パン」「餃子・ワンタン」「餡入り団子類」などの冷凍食品カテゴリーの平均売上高は、前年同期比で400%近く急激に伸びているとのことです。


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⇒お湯を沸かして数分煮る・茹でることで簡単に作れる餃子などは、このコロナ禍で急激に消費者の支持を得ました。

さらに、2020年中のTmallにおいて「快手菜(クワィソーチャイ)」(※パパっと手軽に食べれる食品の意味で新しい組み合わせの単語)のキーワードの検索量は、前年に比べて急激に上昇しています。

2021年3月時点で、商号や事業範囲に「調理済み食品・半調理製品」を含む中国国内企業は1万6,000社以上あり、中でも2018年~2020年に設立された企業が半分近くを占めています。

(データは「白書」と《2021方便速食行业洞察报告》(2021インスタント食品業界インサイト報告)に加え、インターネットに公開された情報を基に弊社で集計したものです。)


3.感情移入し、共感を覚える

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キャラクターを始めとするIP※1)とのコラボレーション、幼い頃に食べた懐かしい思い出を想起させる味、エモーショナル・マーケティング※2)が食品領域で流行を巻き起こし、商品開発やマーケティング手法においても関連のクリエイティブが次々と生み出されています。

例えば、ドリンク類の中心的な消費者層は若年層にあり、彼らは新しいトレンドや社会的な関係性、周囲の人々との関わり合いに非常に高い関心を持っています。これらの関心を持つポイントを掘り下げることで、製品の革新を生む為の重要なヒントを得ることができます。

エンターテインメント性やブラインドボックス(※3)の流行りなどといった若者向けの要素に続き、他者との関わりはターゲット消費者を惹きつけるもう一つの要素になります。

他にも”持ち出しやすさ”が消費者に求められ、近年では200ml以下のミニサイズや携帯用の小型パッケージのドリンク製品が絶えず開発され、さまざまなチャンネルで消費者の注目を集めています。

⇒携行性が高いだけでなく、パッケージに可愛さも感じている。適度な量は健康維持にも繋がるという考えもある。

また、「サークル(同好会)」文化の流行りから仲間意識が生まれる時代背景の中で、趣味のサークルや芸能人ファンクラブと言う場が、若者たちが集まって盛り上がる大事な社交場となっています。こうした文化やその中で生まれる経済を各ブランドは瞬時に察知し、これらを利用して強力なブランディング活動をおこなうべくIPや著名人の起用、時には業界を跨ったコラボレーションなどクリエイティブなマーケティング手法をとっています。


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⇒キャラクターや著名人の起用、他業界とのコラボレーションによって新たな付加価値を生み出し、購買動機を起こさせる方法が続々と生み出されている。

また、これまで男性が主な消費者だったエナジードリンクやスポーツドリンクの分野でも新たな動きを見せております。


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例えば女性特有のニーズに合わせて開発された新製品の数は年々増加し、女性の意見がさらに取り入れられて商品開発や種類もますます増えてきております。加えてテクノロジーの発展により、一部のブランドは「加熱して飲むこと」や「特定の機能性成分を含む」などの要素を売り所として導入し、女性消費者のニーズをさらに満たしています。

⇒女性特有のニーズに合わせて開発された商品も増えてきている。パッケージや味覚といった点はもちろん、”身体の冷えを防ぐ”ことに訴求し、加熱することを推奨した新商品なども開発されている。


※1 IP:デザイン物・作品などの知的財産を指す。
※2 エモーショナル・マーケティング:顧客の感情(エモーション)に訴えかけることにより共感を覚えさせ、購買意欲を刺激するマーケティング手法。
※3 ブラインドボックス:開けるまで中に何が入っているかわからなくなっており、期待感や楽しみ感を得れることから中国の若者の間で流行した商品包装形態。


4.健康バランスの新コンセプト

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健康観念の変化に伴い、ミールリプレイスメント食品(※4)、機能性食品、健康調味料、低アルコール酒などのカテゴリーが成長しています。スナック菓子やおやつは、ますます「健康なお菓子」または「主食としても食べられるもの」へと変化しています。ミールリプレイスメント食品も、単一のシェイクパウダーから「仕事」「家庭」「フィットネス」などの多角的な食用シーンでニーズに応えられるような商品カテゴリーや形態へと進化しつつあります。

⇒単なるお菓子から健康も手に入れられるお菓子や、食事の場面毎に応えられるような種類へと変化していっている。


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さらに、植物性乳飲料も市場に新たな消費機会をもたらしています。Tmallのデータによると、植物性乳飲料のカテゴリーは売上高が前年比で200%以上増加し、商品供給量も毎年150%という驚異的な伸びを示しています。Tmallにおいて2020年には「ナッツミルク」や「シリアルミルク」の商材の検索量が200%近く増加しています。 COFCO(※5)のビッグデータである「社交声量」によれば、2020年に「シリアルミルク」と言うワードは前年比120%の成長を遂げています。

⇒日本でも高まりを見せている植物性のミルクなどは、中国でも大変人気を博している。


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また、砂糖の代替品として人工甘味料を用いられる食品は増えてきており、その背景下で「0卡糖(カロリーゼロ甘味料)」や「赤藓糖醇(エリスリトール)(※6)」などの商品が広く普及しています。Tmallのデータによると、「0糖(砂糖フリー)」「低糖(砂糖少量)」の検索量が前年比で200%近く増加しています。

「社交声量」によれば、2020年に「糖質0ドリンク」と言うワードは、前年比100%の成長を達成したことがわかっています。(このデータは「白書」及びインターネットに公開された情報を基にポリスターが集計したものです。)

そして、健康バランスのトレンドに敏感な消費者はこれらの大人向けの商品以外でも、自らの子供にも健康的なものを与えたいという気持ちに拍車をかけます。中国では、ベビー・子供の健康状態は家庭の中で第一に考えられており、ベビー食品の製品イノベーションにもより多くの革新的な要素が取り入れられています。栄養補助機能だけでなく、多様な育児知識の充実などがベビーフード市場の発展を促しています。

中国の二人っ子政策が完全に自由化されたことで、マタニティ・ベビー・子供食品市場の発展を後押しし、これからさらに新たな機会を生み出す可能性が高いです。


※4 ミールリプレイスメント食品:サプリメントなどを始めとした代替食のことを指す。
※5 COFCO(中糧集団有限公司):農産物·食分野をリードする中国最大の食品会社。
※6 エリスリトール:化合物および糖アルコール(Sugar Alcohol)の一種で、食品添加物や砂糖の代わりに使われる。

目まぐるしく変わる現地トレンドの把握が
マーケティング戦略の鍵

いかがでしたでしょうか。中国の食品・飲料市場において、消費者の間で起こっている4つのトレンドについてご紹介しました。

経済成長著しい中国においては、消費者のマインドをしっかりと掴みながら商品の価値及び付加価値を伝えていくことが重要になります。これらのトレンドも中国市場では目まぐるしいスピードで変わっていくため、現地の情報を踏まえながらマーケティング戦略に活かしていただければと考えています。


<参考>
●《2021中国食品消费趋势白皮书》「2021年中国における食品消費動向白書」
https://new.qq.com/rain/a/20210415A02J3G00
●《2021方便速食行业洞察报告》「2021インスタント食品業界インサイト報告」
https://www.cbndata.com/report/2533/detail?isReading=report&page=1

※なお、記事内の画像掲載に問題があればご連絡ください。



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著者プロフィール

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(株)ポリスター
日中双方のスタッフによる、日本企業様の中国進出のサポートをおこなっています。中国進出の戦略立案からリスク管理、消費者向けのブランディングやプロモーション、販路開拓などのサービスを提供しています。
https://www.polystar.yokohama/