![[和菓子タイムトラベル]シュガーロードの旅〜長崎編〜](/files/cache/41fe68ca9ac9e9e95cb0853a5ed34ec4_f2967.jpg)
食の偏愛コラム
[和菓子タイムトラベル]シュガーロードの旅〜長崎編〜
和菓子メディア「せせ日和」を運営している「せせなおこさん」に、和菓子を通じて日本の文化や歴史を教えてもらう新連載!読んで学んで、和菓子をもっと身近に感じてくださいね。
シュガーロードの起点、長崎
前回までは長崎にやってきた南蛮菓子を紹介してきました。長崎、佐賀、福岡を通る長崎街道では砂糖が運ばれ、砂糖の文化が根付いていき、シュガーロードと呼ばれるようになります。
海外の玄関口であった長崎では、砂糖の量を表す際に「長崎に近い」「長崎から遠い」という風に長崎からの距離で示したんだそう。これは長崎では砂糖が比較的手に入りやすかった一方、長崎から距離が遠くなるほど砂糖の価値が上がっていくことを意味します。今回はそんな長崎県に焦点を当てて、今に続いているお菓子文化を見ていきたいと思います。
野菜がモチーフ?「牛蒡餅(ごぼうもち)」
長崎県平戸。実はポルトガルの船が日本で一番最初についた場所なんです。そのため、前回紹介したカスドースなど南蛮菓子と砂糖が伝わり、平戸では独自のお菓子文化が発展していきます。平戸藩主松浦家はお菓子の発展に貢献し、「百菓之図」というお菓子のレシピ集が作られるほどでした。
牛蒡餅は平戸藩の藩主鎮信の独自の流派、茶道鎮信流の茶菓子、そして、街の人々の行事では「お配り菓子」として使われてきたお菓子。茶色の細長いお餅を糸で切った姿が、野菜のごぼうに似ていることから名付けられました。お店によっては実際にごぼうが中に入っている牛蒡餅もあり、お店ごとに特色のあるユニークなお菓子です。
ほど良い甘さが疲れを癒す「かす巻き」
次に紹介するのは、いかにもシュガーロードらしいお菓子、「かす巻き」です。名前の通り、あんこをカステラで巻いたお菓子です。かす巻きが生まれたのは江戸時代。対馬藩のお殿様が参勤交代から帰ってきた際、その疲れを癒そうと、当時まだ珍しかったカステラとあんこを使って作られたのがかす巻きです。
対馬と島原、それぞれの場所の銘菓として知られています。対馬のかす巻きはあんこをカステラで巻いたシンプルなもの。比較的小ぶりなサイズが特徴です。一方島原のかす巻きはあんこをカステラで巻き、その上にたっぷりとザラメがまぶしてあります。
めちゃくちゃ甘そう!と思いきや、その味は意外にもあっさり。さらに、ブラックコーヒーと合わせるととても相性がいいです。ザラメのじゃりっとした食感が楽しく、ついつい癖になってしまいます。
中は空洞?!「一口香(いっこうこう)」
一口香は江戸時代に中国から伝わったお菓子です。一口食べると香ばしいことからその名前がつけられました。一口香の中身はなんと空洞なんです!しかも、焼く前はちゃんとあんこを入れるのに焼きあがると中身がなくなってしまうというとっても不思議なお饅頭です。
外側の皮部分はとてもかたいのが特徴で、あんこが溶けた甘いカラメル状の飴のようなものが生地の内側にくっついています。米飴、小麦粉、砂糖で作る外側の生地で黒糖、白糖、はちみつ、小麦粉などでできる中のあんを包み、片面ずつ焼くことで、皮の糖度とあんこの糖度の差が生まれ、空洞ができる仕組みなのだそう。
佐賀では「逸口香」として浸透していて、さらに、九州だけではなく愛知県にも存在していました。製造していたお店は現在全て閉業してしまい、詳しい経緯はわかっていませんが、九州由来であることは間違いないようです。
縁起のよい「諫早おこし」
長崎、諫早には隠れた銘菓「おこし」があります。おこしが生まれたのはなんと1000年以上前。もともとは中国で余ったお米を使う方法として生まれました。日持ちがするので、お供物として使われたり、「興す」縁起のよいお菓子として用いられてきました。
もともと諫早は佐賀藩の土地でした。藩の財政を立て直すためにお米をはじめ多くの作物が育てられます。そのお米を生かしたお菓子作りとして、このおこしが誕生したわけです。
今までは長崎といえばカステラ!というイメージでしたが、歴史ある和菓子がこんなにたくさんあったのかと驚いています。シュガーロード以外にも「栗饅頭」や白玉を使ったおやつ「寒ざらし」など、長崎にはまだまだ銘菓がたくさんありますが、それはまた別の機会に。
次回は佐賀のお菓子を紹介します。佐賀は南蛮菓子の影響をとても強く受けていて、お菓子の文化が発達した土地。どんなお菓子が登場するのか、次回もお楽しみに!
<参考文献>
●「肥前の菓子」村岡安廣
●「砂糖の通った道」八百啓介
●「TRAVEL UNA No.2」UNA Laboratories
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著者情報

- せせなおこ
- あんこが大好きな和菓子女子。和菓子を好きになったきっかけはおばあちゃんとつくったおはぎ。小さな和菓子に日本の文化や歴史が反映されているのに魅力を感じ、和菓子を発信すべく和菓子メディア「せせ日和」を運営。商品開発や和菓子専用のコーヒーのプロデュースもしています。
せせ日和:http://sesebiyori.com/